エピソード368『ねこ大好き』


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エピソード368『ねこ大好き』

ある日のこと。
 動物大好きなあきりんは、ペットショップの前で立ち尽くしていた。
 周りには、「や〜ん、かわい〜」などと言って籠の中の動物にちょっかいを出してる人がいっぱい。

竜胆
「……」
子猫
「……」
竜胆
「……」
子猫
「(あくびをして寝る)」
竜胆
「……む〜」

おもむろに携帯を取り出して電話する竜胆。

竜胆
「あ、更ちゃん? あたし〜。あのね〜、猫飼おうと思う んだけど〜」
剽夜(電話)
「マンションはペット禁止だろう。止めておいた方がいい と思うぞ」
竜胆
「ペットじゃないもん。共同生活者だもん」
剽夜(電話)
「ほ〜う。じゃあその猫がご飯作ってくれるのか? 掃除 してくれるのか? 洗濯は?」
竜胆
「無聊を慰めてくれるさ」
剽夜(電話)
「難しい言葉を知ってるな。ともかく、思い付きで行動す るのは避けるんだな。私は実験が忙しいのでこれで」
竜胆
「じゃ、また〜」
竜胆
「(あ〜は言われても……やっぱ飼いたいよぅ……よっし。 通りを往復して、その間に結論を出そう)」

てくてくてくてくてくてく。
 思いつめた顔をして歩く竜胆。
 きっとここに紫擾くんがいたら、「は〜い、My Second Honey。何を悩んでいるんだぃ?」などとのたまってくれたことだろうが。

竜胆
「(そもそも大家に見つからなければ、ペットを飼ってい たという事実は大家にもあたしにも存在しないわけで……然るに、隠し通せれば万事オッケーなわけで、そこんところはあたしの才覚にかかってるわけで……しかし、あたしは根が正直さんだから訊ねられたら素直に答えちゃうだろーし、もしかすると自慢げにだっこして歩いたりしちゃったりするだろーし……む〜。状況から判断すると、飼わない方が安全ではあるものの〜、冒険なくしてなんの人生かって問われると返答に窮するところもあるわけで〜)」
観楠
「あ、竜胆ちゃんだ。お〜い」
竜胆
「(やはり冒険こそ人生の醍醐味なわけで、その辺の事情 を鑑みてとるべき策を考えると、やっぱり猫は飼っとけ……てなことになるな、うんうん)……あ、店長さん。こんちわ」
観楠
「なんか……悩んでるみたいだけど」
竜胆
「ええ……とっても大事な、人生の岐路に今まさに立たん としてるんです」
観楠
「?」
竜胆
「……と一緒に暮らそうと思って……」
観楠
「い、一緒に? く、暮らす? だ、誰と……(汗)」
竜胆
「おっといけねぇ。どこから情報がもれるかわかりません から、それ以上は言えません」
観楠
「ど、同棲するの……?」
竜胆
「同棲だなんて大袈裟ですねぇ(笑) 共同生活ですよ、共 同生活」
観楠
「……がび〜ん(汗)」
竜胆
「これから迎えに行かなくちゃならないんで、失礼します ね。今度連れてきますから☆」
観楠
「え、あ、う、うん。た、楽しみに待ってるよ……(汗)」

さて、「……(ねこ)」を「迎え」に行った竜胆。

竜胆
「うふふふ。子猫ちゃ〜ん……あり? いない……。まさ か……売れちゃったって……ことかぇ? ああ……くよくよ悩んだりしないで即決すればよかった……とほほなの」

とぼとぼと家路につく竜胆。

竜胆
「(うう……運命はかくも無残に二人を引き裂きたまふか)」

いつもの癖でベーカリーに。

観楠
「あ、竜胆ちゃん……ひ、一人?」
竜胆
「……そーです……はぁ……(がっくり)」
観楠
「(これは何かただならぬ雰囲気。キュピーン☆ こーい う時はやさしくしたげないと)そそそ、外、寒かったでしょ。紅茶でいいかな?」
竜胆
「いただきますぅ……はぁ」
観楠
「(う、憂いた横顔ッ! これはもしかして……) は、は い。熱いから気をつけてね……」
竜胆
「気をつけます……はぁ」
観楠
「(間違いない! 振られたんだ……) あ、あのさ、竜胆 ちゃん?」
竜胆
「はい?」
観楠
「(こーいうときなんて言えばいいんだよぅ! 僕でよけ れば聞かせてくれ……駄目だぁ、これじゃ噂好きのおばさんじゃないか)」
竜胆
「……あたし……そんなに魅力ないんでしょうか」
観楠
「(ぐわーっ! やっぱりっ)」
竜胆
「ほんの一足違いだと思うんですけど……別の人がいいっ て……行かれちゃいました」
観楠
「そ、そそそ、そんなことないと思うよ……竜胆ちゃんは じゅーぶんみりょくてきで……」
竜胆
「そーですよねぇ……」
観楠
「(普段ならここでノッてくるのに……ショック重大だぁ)」
竜胆
「は〜あ……せっかくのチャンスだったのに……」
観楠
「……あ、あのさ…… その子だけじゃないんじゃないか なぁ……ほかにもいろいろ、いるんじゃないかなぁ」
竜胆
「……そーですよね! やっぱりこーいうのは、自分で見 つけてナンボの商売ってやつですよね! 
観楠
「(なんだか知らないけど、元気出てきたみたいだぞ)そー だよ、一回こーいうことがあったくらいで、落ち込んでたらきりがないと思うよ」
竜胆
「えへへ……なんか、店長さんと話してたら、元気でてきま した。ありがとうございます」
観楠
「いや、何にもしてないし……照れるじゃないかぁ」
竜胆
「ほんとに照れてるしぃ(笑)」
観楠
「なははは……(笑)」

さて、閉店作業中。

観楠
「……しかし、竜胆ちゃんを振るなんて勇気のあるやつも いたもんだなぁ……」
「……りん姉さん、振られたん……ですか?」
観楠
「げ。聞いてた? う、うん。昼過ぎにね……落ち込んで たから、ほかにも男なんて一山いくらで取り放題だって、言ったら元気出た」
「……一山……そんなもんですか(汗)」
観楠
「うん……まあ、ね(笑)」
「そーいや、りん姉さんって……特定の彼氏いたんですか」
観楠
「ほぇ? そーいや……琢麿呂くんとはいい仲だったけど、 彼にはかわいい彼女いるし……更毬さんとも仲はいいけど、そーいう話を聞いたことないし……紫擾さんともドツキ漫才だけど、彼にも彼女いるし……彼氏、いたのかなぁ?」
「その……更毬さんが彼氏なのでは……普通、そー思えま すけど」
観楠
「でも、なんか別にいるみたいな感じだったけど……今度 連れてきますねとか言ってたし……?」
「……一度、それとなく聞いてみます」
観楠
「あ、お願いできる? ……って、なんでこんなこと話し てるんだろ。あんまり趣味がいいとは言えないな(汗)」

そのころ竜胆は

竜胆
「やっぱりインターネットで探すのが一番よね〜。検索キー は猫っと……」

嗚呼、勘違い観楠。
 その後しばらくこのネタが波紋を呼んだが、またそれは別の機会に。



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