エピソード371『他力本願なる彼女探し』


目次


エピソード371『他力本願なる彼女探し』

Case-1 岩沙琢磨呂の場合

ベーカリー楠にて
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観楠  
「それにさ」
夏和流  
「なんです?」
観楠  
「だれかれかまわず声かけてたら、誰にも相手されない
んじゃないかなぁ」
夏和流  
「うっ……(汗)」
観楠  
「えーと、みのる君だっけ? は上手くいったそーじゃない」
夏和流
「あれは何かの間違いなんですっ」
観楠
「ふーん……そっか」
夏和流  
「(溜息)……店長さんはいいですよねぇ〜〜」
観楠  
「なにが?」
夏和流  
「家でも外でも女の子がいっぱいで……」
観楠  
「……か、夏和流君。妙なこと言うんじゃないっ(汗)」
夏和流  
「妙じゃないですよ。だって店長にはかなみちゃんがいて
素子さんがいるじゃないですか」
観楠  
「かなみちゃんは僕の家族だよ。素子ちゃんは……その(照笑)」
夏和流  
「それなのに水島さんとか竜胆さんとも仲良いってのは立派
に不公平だと思いません?」
観楠
「緑ちゃんはただのバイトでちゃんと彼氏いるじゃない(苦笑)
竜胆ちゃんは……確かに仲良いけど、あくまでも友達の : 域を出ないんじゃないかなぁ(笑)」
夏和流  
「なんか希望的観測がはいってませんか?」
観楠  
「まぁまぁ(苦笑) つまり、夏和流君は彼女が欲しいと」
夏和流  
「そのとーりです。誰か紹介してくれません?」
観楠  
「おいおい(苦笑)」
夏和流  
「(ふと思い立ち)あ、やっぱりいいです」
観楠  
「? どうして?」
夏和流  
「観楠さんの知り合いじゃ、イヤな予感がしますし」
琢磨呂
「呼ばれて飛び出て、ワーレン大尉だ」
夏和流
「うわわわわっ!」
琢磨呂
「ふむ……私が素晴らしい彼女を哨戒……もとい、紹介し
てあげよう」
観楠
「琢磨呂君っ!軽々しく……」
琢磨呂
「(店長にウィンク&小声で)任しときなってば」
夏和流
「それで、どんな女の人を紹介してくれるんですか?」
琢磨呂
「ふむ……ショートで、ちょっとボーイッシュだな」
夏和流
「僕は、とある人とかとある人みたいに、髪型は判断基準に
しませんから別にショートでもロングでも……」
琢磨呂
「(顔面ドアップ)バカものぉっ!」
夏和流
「うわぁぁぁっ!な、何ですかいきなり」
琢磨呂
「髪型一つ取ってもだな、自分なりのポリシーを持て、ポリ
シーを!」
観楠
「持ちすぎも考え物だと思うけど……」
琢磨呂
「……で、話しを本題に戻すが」
観楠
「(……む、無視するかい?)」
琢磨呂
「身長は、そんなに高くない。ふつーだ」
夏和流
「僕より高い人でも全然オッケですよ」
琢磨呂
「(顔面ドアップ)ポリッシィーを持たんかぁぁっ!」
夏和流
「……良いじゃないですかべつに」
琢磨呂
「まぁ良い。とにかく、会って見るか?」
夏和流
「幾つぐらいの人ですか?」
琢磨呂
「……女の年齢をきくとは……まぁ良い、18だ」
夏和流
「と、年上のおねーたまですかぁ(ぽワ〜ん)」
琢磨呂
「会う前から惚気るなぁぁぁ (°O °)!!」

次の日、待ち合わせ場所
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夏和流
「確か、赤のシャツに白のズボンって……あ、あの人かな?
琢磨呂さんったら『会う時ぐらい俺ナシで何とかしてみろ!』
だなんて……もしもし、あの、僕三河って言うんですけど」
慎也
「え?」
夏和流
「(お、男!? 確かに女装したら似合いそうだけど……)」
慎也
「あ、君か、琢磨呂が女の子を紹介してあげるって言ってた
のは。実はあの時ね、あいつの彼女に盗聴機を仕込まれて
てね。ベーカリーをでた瞬間に新型のハリセンでぶっ飛ば
されて、監視されてるんだよ(笑) レイちゃんったら『安
全の為の盗聴装置が役に立った』とか言って……(くすくす)。
さすがに夏和流君の約束をすっぽかすのは悪いだろうと思
って、電話したんだけど家に居なかったから、急遽僕がお
んなじ格好をして来る事になったんだよ」
夏和流
「(ああ……僕のらぶらぶ計画が……)」

その頃北緒邱では……
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琢磨呂
「クソぉっ!腕に力が入らん。これでは銃も握れん……」
麗衣子
「最新鋭『スタン・ハリセン』の威力を試す良い機会やっ
たわ。瞬間電流10万Wのパワー、思い知ったか!」
琢磨呂
「誰が浮気をしたと……」
麗衣子
「じゃぁあの台詞は何?」
琢磨呂
「何の台詞じゃあぁぁぁぁ!俺は無実だぁぁぁぁあ!」

後日談
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琢磨呂
「北緒麗衣子。会話は最初から最後まで全部聞こうな」

Case-2 正正正の場合

後日ベーカリー楠にて
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夏和流
「(からんっ)店長さん、聞いて下さいよぅ〜(T_T)」
観楠
「ど、どうしたの? 夏和流君(汗)」
夏和流
「じつは……(格さん、助さん)と言うわけなんです」
観楠
「なるほど(かくかく、しかじか)と言うわけだね。 それにしてもなぁ(笑)」
夏和流
「なぜ僕は女の子にもてないんだぁ〜(T_T)」
「女か。私の妹なんてどうだ?」
音祇
「し、師匠っ! そ、それは余りにも酷い……モゴモゴ」
(余計なことを言うな!)
夏和流
「正さんの妹ってどんな人です?」
「そうだな。顔は世間一般から言われる「美」の定義には
   
 かなっていると思うぞ」
音祇
「顔は美人なんだけど……モゴモゴ」
(これで2度目の忠告だ。余計なことを言うな)
音祇
(は、はい……)
夏和流
「? どうしたんです?」
「いやいや何でもない。で、どうだ会ってみないかね」
夏和流
「正さんの妹ってことは少なくとも、いきなりお婆さんが
出てきて『若い男は久しぶりじゃけんのう』とか言うこと
はないんだな」
音祇
「そっちのほうがまだマシ……モゴモゴ」
(おとしぃ、やけに反抗的じゃないかぁ?)
夏和流
「なんか音祇さん顔色悪いですよ?」
音祇
「な、なんでもありませんよ」
「美晴は……19になったのかな」
夏和流  
「19……三つ年上のおねーさまかぁ……(ぽわーん)」
「今度私の家に着て見たらどうだ?」
夏和流
「じゃあ、今度の土曜日にでも」
「ふっふっふっふ」
夏和流
(不気味な人だなぁ)

正宅にて
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「美晴」
美晴
「何か用?」
「まぁ、用と言えば用なんだがな。今度の土曜に」
美晴
「断わる」
「待て。まだ話はあるんだ」
美晴
「どうせ私に会いたいっていう男でも連れてくるつもりな んでしょう」
「な、なぜ分かった……」
美晴
「だってこれで5回目だもん」
音祇
(やっぱ無理だったんですよ!)
「そんなこと言わずに、少しだけでもいいから会え」
美晴
「で? どんな人? 金は持ってるの」
音祇
「それが高校生で……」
美晴
「高校生なの?」
「ま、まぁ世間一般的にはそう呼ばれているな」
美晴
「やーめた。土曜は誰かに洋服でも買わせようっと」
「しかたないな」
美晴
「ごめんね。あたし『お金のない愛はいらない』がポリシー だから」
音祇
「失敗したじゃないですか!」
「バカが、慌てるな。全てシナリオ通りだ。おまえには分 からないのか? 順風満帆なこの状態が!」
音祇
「そうかなぁ……」
「なんのためにおまえがいると思っているのだ? 音祇」
音祇
「え……もしかして」
「そう。そのもしかしてだ」
音祇
「勘弁して下さいよぉ」

夏和流、正正家に向かう
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  いよいよ約束の土曜日。

夏和流
「えーっと、もらった地図によるとこの辺りなんだけど…… しかしこの辺おもいっきり高級住宅地じゃないか。本当に、この辺りなのかな?」
みのる
「何をやっているんだ?」
夏和流
「やぁ、みのる……って何でおまえがここに!?」
みのる
「通りすがっただけだ。それで、何をそわそわしているん だ?」
夏和流
「べ、別にそわそわなんて……(そわそわ)」
みのる
「まぁ、いい。おまえが探している家はあそこじゃないか?」

 みのる、数ある高級そうな家の中からさらに凄いものを指差す。どのくらい
 凄いのかというと庭にエレベーターがありそうなぐらい凄い家だ。

夏和流
「……え? あれが正さんの家なのか?」
みのる
「なるほど。おまえは正さんの家に行くのか」
夏和流
「あっ、おまえ! カマかけやがったな!」
みのる
「知らんな。まあ、おまえにつきあっている暇はないんで な。さらばだ(立ちさっていく)」
夏和流
「何がさばだ」

さらば、である。

夏和流
「うるさい。ちえ、みのるのやつ。あ、ちゃんと表札に正 正(しょうせい) って書いてある。(ピンポーン)」
インタフォン
『どちらさまでしょうか』
夏和流
「あ、あの僕、夏和流と言いまして正さんから……」
インタフォン
『あ。ということはお兄ちゃんが言っていた人ってあなた のことですね!』
夏和流
「は、はぁ……」
インタフォン
『ちょっと待って下さいね。今開けますから』
夏和流
(あー緊張するなぁ)

夏和流が待つこと数秒、どでかい門の扉が開く。

夏和流
「は、入っていいのかな?(おそるおそる門をくぐる)」
コンピューター
「いらっしゃいませ」
夏和流
「は、はい。ど、どうも。今日はお日柄もよく……って 何やってんだ俺は(汗)」
コンピューター
「お客様のお名前は?」
夏和流
「夏和流です(開けてくれるって言ったんじゃないのかぁ)」
コンピューター
「声紋チェック中……第1次リミッター解除。第2次 リミッター解除。第3次リミッター解除。第4次リミッター解除。わかりました。あなたを三河夏和流本人と判断します」
夏和流
「は、はぁ」
コンピューター
「では、このまま真直ぐいったところに玄関のドアが ありますのでそちらで待機してください」
夏和流
「は、はい」

言われた通りにドアの前で待機する夏和流。やがてドアが開き細身の少女が
 出てくる。

夏和流
(き、綺麗な人だなぁ)
謎の美少女
「あなたが夏和流さん?」
夏和流
「あ、え、ええ。夏和流は僕です」
謎の美少女
「(夏和流を値踏みするような目つき)う〜ん、いいわ。 入って頂戴」
夏和流
「はい」
謎の美少女
「ずいぶんと話と違うのね」
夏和流
「え? 何がですか?」
謎の美少女
「兄貴から聞いた話から想像するともうちょっとルック スが上だと思ったんだけどなぁ。ふぅ。これならショッピングにでも言ってりゃよかったぁ。ま、いいか。兄貴の顔を立てると思って我慢しますか」
夏和流
(思ったことをズバズバ口に出していう人だなぁ。 この人が正さんの妹さんなのかなぁ)
謎の美少女
「そーいえば、まだ名前言ってなかったわね。私は美晴」
夏和流
「僕は……」
美晴
「その部屋の中で待ってて。お茶か何か持ってくるから」
夏和流
「あ、結構ですよぉ……ってもう行っちゃった……な。しかたない 待つか」

待つこと数秒。

美晴
「いらっしゃいませ。あのすいません。奥で料理の用意をし いましたので。今日は夏和流さんのために腕を振るってご馳走作りますね」
夏和流
(あ、あれ? さっきお茶取りに行ったんじゃあ?)
美晴
「こんな狭い部屋じゃなんですので、もうすこしゆったりと できるところにご案内します」
夏和流
「は、はぁ……(どーなってんのぉ?)」
美晴
「では、この部屋でお待ち下さい。すぐに戻りますので」
夏和流
「は、はい」
夏和流
(う、うーむ。一体何が起こったか考えろ、考えるんだ。美 晴さんはお茶を取りに行った。で、それからものの数秒と立たないうちに、美晴さんが来てまるで僕と会っていない感じで……はっ! もしかして!)
美晴
「おまえぇぇぇぇぇぇぇっ!」
夏和流
「ひっ!」
美晴
「部屋に行ってみたらいないんで、どこに行ったかと探した ぞぉぉぉぉっ!」
夏和流
「す、すみませんっ! で、でもですね……」
美晴
「言い訳は後で聞くからこっちこい!」



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