ここは尊の部屋の壁一枚隔てて外側。マスクをかぶった男が一人。
- 琢磨呂
- (ふむ……試作型の盗聴機の性能は上々だな。おねーたま、
その言葉よぉ〜っく聞かせて……)
- 尊
- 「(がらっ)ふぅ……今日も良い天気!」
- 琢磨呂
- (ぬおおおおっ!)
- 尊
- 「あら……(叫び声をあげようと息を吸う)」
- 琢磨呂
- 「(な、なにか言わんとヤバイ!) ま、ま、毎度お騒がせ
しております、電信電話工事局です。こ、このたびは電話線の新規加入どうも。回線の最終チェックの方させて頂いておりますので……」
- 尊
- 「……あーびっくりした! 覗きかと思いましたもの。で
も、そのマスクはどうかと思いますよ」
- 琢磨呂
- 「……えと……えとですね、冬場は肌が乾燥して静電気に
帯電しやすくなりますので、本社の方から義務づけられておりまして……」
- 尊
- 「あら、そうでしたの。(琢磨呂の腿に視線)あら? もし
かしてそれはベレッ……」
- 琢磨呂
- 「そう、これは93R……じゃなくって、ピストルグリップ
の接着剤ですよ。やだなーあはははは(超冷や汗)あ、私は忙しいのでここらで失礼……(ロープを手繰って屋上へ)」
- 尊
- 「最近は色んな人が居るのねー(窓を閉める)」
- 琢磨呂
- (……す、鋭い。これは手強い相手になりそうだ。姉さんの
ときのように一筋縄ではいかんな。それに、さっき窓を開けた瞬間に見えたあれ、俺は見逃さんぞ。655カービンか、XM177だ。どっちにせよM16のカスタムバージョン。
……ふふ。手強いものほど、制圧したときの満足感もひとしおだ!)
所変わって尊の部屋。
散らかった引越荷物を片づけている尊。
- 尊
- 「さて、続きっと……えーと、洋服類も片付いたし、食器
類も出したし、あとは……ぬいぐるみと本かな?」
ふと、部屋の隅に立て掛けてあるM655に目が止まった。
- 尊
- 「あっ! これ、しまっとかなきゃ」
と、銃を持ち上げたが、そのまましまわずにマガジンを外して残弾を確認、更にサイトのズレを確認する。
片手でマガジンを外して再セットする手際などは、なかなかどうして、結構サマになっている。
- 尊
- (でも……ガンラック……無いのよねぇ……)
可愛く小首をかしげて部屋の中を見まわすが、散らかった部屋の中に銃が収まるようなスペースは無い。
- 尊
- 「ん、そだ、ここにしよ。(ごそごそとベッドの下にしまう)
……片づけで汗かいちゃったし、おふろ入ろっと」
- 琢磨呂
- 「(聞いている) ふむ、この距離でも感度は落ちないか……。
我ながら良い出来だ(にやり)」
- 盗聴器
- (ガ……ザザッ……味見、味見っと……ん、上出来)
- 琢磨呂
- 「お、入ったぞ……料理……作ってるのか?」
- 盗聴器
- (準備万端っと。あ、そうだ、そろそろ来る頃かな?)
- 琢磨呂
- 「(なに? 姐さんは引っ越してきたばっかりなのに、も
う誰か尋ねて来るのか?)」
- 盗聴器
- (ピンポーン……はーい、早かったのね)
- 琢磨呂
- 「!?」
- 盗聴器
- (ああ、腹が減ったんでな)
- 琢磨呂
- 「(なにぃぃ! 男の声だとぉぉぉ! しかも声の感じか
らすると結構年配! ダンディーな『おぢさま』かぁ!?)」
- 盗聴器
- (ご飯出来てるわよ、好物の肉じゃがも作ったから)
- 琢磨呂
- 「くそー! うらやましい奴め! 俺も食いたいぞ!」
暫く、大した会話も無く食事が続く。
- 琢磨呂
- 「(しかし、姐さんがこんなに親しげにしてるって事はやっ
ぱりただの友達って事は無いよな……年も離れすぎてるし。とすれば、導かれる結論は一つ……ん?)」
- 盗聴器
- (じゃ、あたし先にお風呂入るから)
- 盗聴器
- (ああ、ゆっくり入っとい……ガガッ……ザッ……)
- 琢磨呂
- 「しまった! ノイズかっ!」
受信機を懸命に操作する琢磨呂。
十分ほどして。
- 盗聴器
- (ガッ……ザッ……)
- 琢磨呂
- 「よし、戻ったか」
- 盗聴器
- (……ん、だめ。そんなとこ触っちゃ……やん)
- 琢磨呂
- 「○×△%#!? んなぁぁにぃぃぃぃぃぃぃ!?」
- 盗聴器
- (ふふっ、ダメだったらぁ)
- 琢磨呂
- 「あ……う……え……(あまりの状況に思考停止状態)」
- 盗聴器
- ((がちゃ)……良いお湯だった……ちょ、ちょっと!! 何
見てるのよっ!!)
- 琢磨呂
- 「(思考停止から覚醒)は?」
- 盗聴器
- (見ての通りだ)
- 盗聴器
- (信じらんない!! 女の子の部屋でそんな『ビデオ』見る
なんて!! どっから借りてきたのよ!?)
- 琢磨呂
- 「へ?」
そう、いつもの冷静な琢磨呂なら気付いた筈だった。
声の主がいつのまにか違っていたのに(笑)。
- 盗聴器
- (仕方ないだろう、ビデオデッキはおまえの部屋にしか無
いんだから)
- 盗聴器
- (だからって私の部屋で見る事無いでしょ!! もう、帰っ
て! 『お爺ちゃん』!)
- 琢磨呂
- 「え? ……(再び思考停止)」
この後、琢磨呂がダメージから回復し「勘違い」に気付くまで優に3時間を要したという。
合掌。
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