エピソード382『サンタクロースのおじさんは』


目次


エピソード382『サンタクロースのおじさんは』

弾き語り通信倶楽部の書き込みより

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  ○にいさま、ねえさま、こんばんは。
  12がつ25にちはクリスマスなの! 
  でね、24にちのよるにサンタさんがかなみにプレゼントもってきて
  くれるの。まえのクリスマスのときは、かなみがねてるあいだにかえっ
  ちゃうから、ありがとうっていえなかったの。だからことしはちゃんと
  おきててまってるの! でもね、もしもねちゃったときのために、いまか
  らおてがみかいとくの。
  あのね、かなみはぬいぐるみもらうの! おもちゃやさんにかざってあっ
  たおおきいくまさんの、ほしいっていったらとうさまがサンタさんに
  たのんであげるって。とうさまとサンタさんはおともだちっていってた
  から、きっとくまさんくれるもん!  かなみ がかいたの○
  どーも(苦笑)
  クリスマスまでにはまだ間があるってのに……いまから張り切ってたら
  つかれちゃうよと言っているんですが、なんだかなぁ(笑)
  あ、そうそう。
  皆さんはサンタクロースを信じたことってありますか? 
  私は小学校の6年生くらいまで……かな(苦笑)
  あのときから12年……プレゼントを贈る立場にあるのは嬉しいんです
  けど(笑)、バレやしないかとひやひやしてます(苦笑)
  今年はミかとビィも応援につけるみたいなこと言ってますから……
  どーなりますことやら(笑) HG0052 店長====================================================================================================================================================> 今年はミかとビィも応援につけるみたいなこと言ってますから> どーなりますことやら(笑)> HG0052 店長あーこんちは。店長。サンタクロースか……。昔サンタクロースのバイトで(どんなんだ)サンタに化けた事があったっけ。

じじいサンタ
それなりにうけた
美青年サンタ
一部のたんびーな方におおうけ。
お姉様サンタ
なんか結構勘違いされた。
おやぢサンタ
泥棒扱いされた(^^;
あ、人手が欲しけりゃ手伝うよ。トナカイはちょっち無理だけど(笑)。 HG0077  いたくよき====================================================================================================================================================店長さんにお話が> 皆さんはサンタクロースを信じたことってありますか? > 私は小学校の6年生くらいまで……かな(苦笑)信じるも何もないでしょう。現実に存在してますよー。RIVER==========================================================================

12月中旬・ベーカリー楠にて

もうすぐクリスマス。パン屋さんはクリスマスケーキの準備で大忙し……の……はずなのだが(汗)……ベーカリー楠は相変わらず、のどかである。

夏和流
「もーすぐクリスマスですねぇ……」
観楠
「あ、そだね」
夏和流
「……ふぅぅぅぅ」
観楠
「またため息ついてる。今日も多いね」
夏和流
「『今日も』って、人をそんな悩みの固まりみたいに……
笑)」
観楠
「でも、最近悩んでばっかじゃない」
夏和流
「うーん……。そう言われば確かに……」
観楠
「でしょ。はい、麦茶」
夏和流
「どーも……(ごくごく)。でも、しょうがないじゃない ですか。街はクリスマスに備えて賑やかになっていくけど、彼女いない人間は置いてきぼりですよ。みのるも涼子さんと楽しく過ごすんだろーし」
観楠
「ま、そのうちに君もいいこともあるって」
夏和流
「観楠さんはいーですよねー。過ごし方はなんパターンも あって、みーんな、女性がいそうですし」
観楠
「あのね、またそーいう誤解を招くことを……(苦笑)」
夏和流
「あ、そういえばかなみちゃんはサンタさんを知っている んですか?」
観楠
「ん。まあね。今年は何をお願いするのかまだ聞いてない けれど」
夏和流
「僕のところには来てくれないのかなぁ、サンタさんは。 これでも結構いい子にしているつもりなんですけれど……」
観楠
「ご両親にお願いすれば?(笑)」
夏和流
「……は? なんで、両親が出て来るんです?」
観楠
「え? なんでって……?」
夏和流
「うちの両親はサンタとは知り合いじゃないですよ(真剣)」
観楠
「……? あの、まさか、夏和流くんはサンタの存在を信 じてるの……?」
夏和流
「信じるも信じないも、現実にいるじゃないですか(真顔)」
観楠
「こりゃダメだ……」
美樹
「で、店長はクリスマスは家族+1でパーティーですか?  うらやましいですね」
観楠
「ははは……。美樹さんはどうされるんですか?」
美樹
「いやぁ、金欠でして……夜勤のアルバイトですよ。 つき合ってくれそうな彼女は帰省しちゃってますしね。うちの居候達が何かするかもしれませんけど」
観楠
「居候、ですか?」
美樹
「ええ、なんか二名ほど居着いちゃってんですよ。 あ、コーヒーもう一杯頂けます?」

大輔宅にて

かなみ  
「だいすけ兄様、サンタさんってどこにいるの?」
大輔  
「サンタさんねぇ……」
かなみ
「あのね、おてがみだすの」
大輔
「プレゼントのお願い?」
かなみ
「かなみね、くまさんもらうの。おおきいのっ!!」
ミか
「ミかはお洋服もらうんだよ」
ビィ  
「あぎゃぁ!(手を挙げてなにやら主張)」
大輔  
「うーん……父様には聞いてみた?」
かなみ  
「父様ね、サンタさんとおともだちだけど、どこにすん
でるかしらないっていうの」
大輔
「ははぁ……それでうちに来たというわけですか(笑)」
観楠  
「いや、面目ない(苦笑)」
かなみ
「だいすけ兄様っ」
大輔
「えーと、ちょっと待ってね(笑) 確か……」
観楠
「(小声)サンタの住所なんて、あるんですか?」
大輔  
「(小声)えぇ、カナダかどこかにそういうのを受け付 けてくれるところがあるんですよ」
観楠  
「(小声)エアメールですか……」
大輔  
「(小声)そーですねぇ……あ!」
ミか  
「どしたの?」
大輔  
「文ちゃんに聞くのはどうです?  インターネットで電 子メール送ってもらえば余計な手間かからなくていいんじゃないですか?」
観楠
「あー……なるほど」
大輔
「かなみちゃんの書いた手紙を文ちゃんに送ってもらっ て、返事を待てばいいんですよ(笑)」
観楠
「問題はその手のホームページがあるかどうかってこと ですねぇ」
大輔  
「大丈夫じゃないですか?  とりあえずメール打っとき ますから、文ちゃんが店に行ったときでも」
観楠
「わかりました(笑) かなみちゃん、サンタさんにお手 紙送れるって」
かなみ  
「ほんと?」
大輔  
「ほんとほんと(笑)」
かなみ  
「だいすけ兄様、ありがとっ(kiss!!)」
観楠  
「(げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!! !!)」
  大輔   ;「はい、ありがと(笑)」
観楠
「に、にかいめ……(目の幅血の滝涙)」
ビィ
「……あぎゃ?」
ミか  
「オトナっていろいろ大変なのよ(しみじみ)」

新谷ゼミにて

文雄
「ふむ……サンタクロースにE-MAILか。ディレクトリサー ビスのクリスマス特集を見れば一発だな……うむ、発見。クリック三つで終わりか」
谷原(やはら)
「(奥から出てきて) ど〜も。何を見ているのかな?」
文雄
「Santa Claus home page ですよ。.fiだからフィンランド のはず。ときに、このあたりなんと書いてあるんですかね?」
谷原
「このくらい英語は読めないと辛いんだけど。なになに、 『サンタのアドレスにメールを送ると、電子クリスマスカードを送ってくれます』とあるけど」
文雄
「それであってましたか。どうも英文は読み違えていそう で恐い」
谷原
「ところで、なぜにこんなものを? いまさらサンタに願 いを出す年でもないと思うけど?」
文雄
「(肩をすくめて) 知り合いの子供がサンタに手紙を出し たいんだそうで。(メールを見せる)」
谷原
「せっかくなら、本物を探してみるってのはどうかな? 
あのクラスの伝説的存在だと、存在の重ねあわせ効率を実用的な値まであげられるはずだから、交渉しだいでは本物のサンタに来てもらうのも不可能ではないと思うけど」
文雄
「まあ、理論的にはそうですが……。サンタにつてでもあ るんですか?」
谷原
「うーん、さすがにサンタクロースにはコネはないなぁ。
本物を呼ぶってのはいい案だと思ったんだが……(悩)」
文雄
「では、Unconscious Spider に頼ってみますか(にやり)」
谷原
「なんだ、解決策が分かってたのか。高村くんの修論のネ タだよな、それ」
文雄
「『ネットワーク利用者の無意識場(Unconscious Web)を介 した情報収集エージェントシステム Unconscious Spider』ってやつですな」
谷原
「相変わらず長いタイトルだよな。要するに、誰か知って いる人は居ませんか、って無意識に聞いてまわるわけだ」
文雄
「まあ、ネットワークに繋がっている人間にしか通用しま せんし、私の力不足で情報精度も収集速度もたいしたもんじゃありませんけどね。
とりあえず、一晩はかかるでしょうから、今日はこのへんで帰っておきますわ。走らせたままで。
谷原
「おう、わかった。じゃあお疲れさんです」
文雄
「おさきに失礼します」

大輔宅を訪問した次の日のベーカリー楠。
 いつものように穏やかな昼時。喫茶コーナーには観楠親子と美樹、それに食後のコーヒーを飲みに来た尊の姿があった。
 かなみ、ミか、ビィの三人(?)は、先ほどから神妙な顔付きで何やら書き物をしている。

かなみ
(もくもく……かきかき……もくもく)
ミか
(かきかき……もくもく)
ビィ
(あぎゃぎゃ……あぎゃ……)
観楠
「……と、言う訳で、あれはサンタさん宛ての手紙なんです よ」
「へぇ……それでさっきからみんな一生懸命手紙書いてるん だ(笑)」
かなみ
「んっと、父様っ」
観楠
「ん? なんだい?」
かなみ
「あのねっ、お手紙の一番始めって『ぜんりゃく』って書く のと『はいけい』って書くのと、どっちがいいの?」
観楠
「は? ぜんりゃく? はいけい? ……あぁ、前略と拝啓ね」
かなみ
「かなみ、御行儀のいい、ちゃんとしたお手紙書くのっ (お しゃまな笑顔)」
ミか
「かくのっ」
ビィ
「あぎゃっ」
「わぁ、かなみちゃんえらいねぇ(なでなで) でも、そん な事、誰に教わったの?」
かなみ
「これっ! 美樹兄様がくれたのっ(笑顔)」
観楠
「なになに『正しい手紙の書き方講座〜ラブレター編〜』っ!  美樹さん……(目の幅血の涙)」
美樹
「ああ、御心配なく。かなみちゃんに教えてあげたのは、前 略と拝啓だけですから」
観楠
「じゃぁ、この本は……」
美樹
「かなみちゃんも女の子、いつか役立つ時が来るでしょう」
「そうね、正しい手紙の書き方は、覚えた方がいいかもね、 手紙を出す相手が誰であれ(笑)」
観楠
「あう〜(目の幅血の瀑布涙)」
美樹
「それに、店長にも一読をお勧めしますよ」
観楠
「え?」
美樹
「想いを伝えるために言葉が、言葉を伝えるために文字が生 まれました。手紙は想いの詰まった言葉の揺り篭。胸の想いを文字に託して伝えるのも、また一つの方法かと。あ、コーヒーもう一杯頂けますか、出来れば濃い目で」
観楠
「……(苦笑して頭を掻く)」

観楠コーヒーを入れようとするが、豆が切れているのに気付いて裏に取りに行く。

「言葉の揺り篭……か。あ、そうだ。かなみちゃんちょっと おいで」
かなみ
「なぁに、みこ姉様?」
みこと
「あのね……(内緒話)……ぼそぼそ……でね……ぼそぼそ ……なの。それをね、そおっと枕元へ置いておいてごらん」
かなみ
「うんっ(笑顔)」
ミか
「かなみちゃんだけずる〜い! ミかも内緒話するのっ」
ビィ
「あぎゃぎゃ!」
「はいはい、順番にね(笑顔)」

翌朝、枕元に置かれた、かなみ達の心のこもった手紙に、ミイラ化寸前まで
 「幸福の瀑布涙」を流す観楠の姿があった。
 もっとも、ミかとビィの手紙はどうやっても読めなかったようだが……



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