エピソード396『わたしをスキーに連れてって!』


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エピソード396『わたしをスキーに連れてって!』

師走に入り何かと慌ただしい頃。
 何時ものように暖かい、ベーカリー楠の喫茶コーナー。
 先ほどから何やらスキーの話が持ち上がっている。

事の起り

観楠  
「えーと、行くとしたら、かなみちゃんとミかと……素子ちゃんはまだ無理かなぁ」
「いいですねぇ、一緒に行く人がいて」
夏和流
「ふこーへーだぁ〜〜」
観楠
「あー……(照)あの」
「なんでしょう?」
観楠
「……もしよかったら一緒に行きませんか?」
「え?……でも親子水入らずなのに……よろしいんですか?」
かなみ
「父様っ、スキーに連れてってくれるのっ(満面笑顔)」
観楠
「え?(大汗)そ、そうだね、雪が降ったら行こうね」
夏和流
「(きらーん)店長さん」
観楠
「なに? 夏和流君」
夏和流
「僕も行きます」
観楠
「夏和流君……滑れるの?」
夏和流
「滑れるから行きます(すいっちおん)」
録音テープ
「(観楠だけに聞こえるように)……もしよかったら一緒に行きませんか?」
夏和流
「僕もいっしょに連れてってくれますよね(にこにこ)」
観楠
「うっ……しかし、車に……乗れるかな(大汗)」
「あの、せっかく誘っていただいたんで……よろしければあたしも車、出しましょうか? そうすれば他の皆さんも行けると思いますし(にっこり)」
夏和流
「よぉぉぉっし! じゃ、そういうことで、店長さん」
美樹
「で、店長。何処のスキー場へ行くつもりなんです?」
観楠
「うぁぁっ!美樹さん!何時からそこに?(汗)」
美樹
「先ほどからずっと。気付かなかったんですか?」
「スキーか。いいじゃないか」
観楠
「わっ! 正さんまで! い、いつからそこにいたんですか!」
「(聞いてない)亜紀さん、一緒に、いかがかな」
亜紀
「えっ……でも、仕事のスケジュールが……」
観楠
「な、なんで亜紀さんまでいるんですか!」
亜紀
「先生が画材のストックを切らしちゃって……買い出しに
近くまで来たんで、寄ってみたんです(笑顔)」
「で、如何かな?」
亜紀
「行きたいのは山々なんですが……手のかかる作家さんを
抱えてると……(じろっ)……ふぅ」
大輔
「いやぁ世の中には悪い奴もいるんですねぇ、はっはっは」

大輔先生、顔が引きつってる(笑)

夏和流
「(ふーん……正さん、亜紀さんと行きたいのか)」

そっと話の輪から離れ、カウンターの端へ移動する夏和流。
 目を閉じ、意識を集中していく……

夏和流
「(亜紀さん暇になれっ!!)」

ぷるるるるる……(携帯電話の呼び出し音)

亜紀
「(携帯を取り出して)はい、北原です。……ええ、え?
はい、判りました。(ぷつっ)……ふぅ、やれやれ」
観楠
「どうしたんですか?」
亜紀
「私が担当してる他の作家さんですけど、正月に遊びに行
きたいからって原稿、もう上げちゃったらしいんです」
観楠
「へえ、良かったじゃないですか」
亜紀
「ええ、おかげで半日位空き時間が出来ました(笑顔)」
夏和流
「(えぇっ!? そんなぁ……全力でやったのにたった半
日……)」
「あれ夏和流君どうしたの? 汗びっしょりだけど……風
邪?(おでこに手を当て
美樹
「じゃ、予定が立ったら言って下さい。実家に電話入れますから」
観楠
「わかりました。かなみちゃんスキーに行けるよ(笑顔)」
かなみ
「美樹兄様のお家に、お泊まりするの?」
観楠
「そうだよ」
かなみ
「美樹兄様……(小首を傾げて)雪だるま作れる?」
美樹
「雪だるまでも、かまくらでも、なんでも(笑顔)」
かなみ
「? 父様、『かまくら』って……なぁに?」
観楠
「そうか、かなみちゃん、かまくらを見た事無いのか……
えっと……雪で作った小さなお家……みたいなもんかな」
かなみ
「かなみ、かまくらも、ゆきだるまも作るのっ! 父様手
伝ってねっ(笑顔)」
観楠
「はいはい、作ろうね(笑顔)」

次の日

「店長、トレイの整理、終わりました」
観楠
「ありがとう緑ちゃん……そだ、緑ちゃんスキー出来る?」
「え? ええ、少し、ですけど……」
観楠
「みんなで美樹さんの実家へ、スキーに行こうって話が有
るんだけど、一緒にどうかな」
「え、でもお店は」
観楠
「臨時休業(笑)だからお店の事は心配しなくてもいいよ」
「じゃぁ、行きます」
「(パパに頼んでスキー用にバランサーをチューンしても



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