エピソード397『狭淵美樹の食生活』


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エピソード397『狭淵美樹の食生活』

狭淵美樹
ぐうたらな医学生。
ふみ&琴
狭淵美樹の部屋に居候する霊。
平瀬美樹
狭淵美樹の高校時代の後輩。

やっと冬休みに突入したある土曜日の晩。美樹の部屋。
 美樹は炬燵に足を突っ込み、ごろごろと小説を読んだりしている。
 二人の霊は、台所方面にて何やら相談事をしている。

「あのー、美樹さん?」
美樹
「なんでしょう?」
ふみ
「お米、無くなったみたいですけど」
美樹
「インスタントラーメンは?」
「ありません」
美樹
「冷蔵庫に確か凍らせたパンが」
ふみ
「昨日食べたのが最後です」
美樹
「それは少々困りましたねぇ」
「卵も尽きてまーす」
美樹
「食品は何が残ってます?」
ふみ
「砂糖とか、醤油なら……あ、レトルトのカレーがあります」
美樹
「そっかぁ」
ふみ
「何か買ってこられた方が……」
美樹
「そーだねぇ。これ読み終わったら行ってこよっか……。
むぅ。しまった」
「どうしたんですか?」
美樹
「いや、銀行からお金おろしてないからね。所持金が6円 しかないんだな、これが」
ふみ
「6円ではあまりなにも買えませんねぇ」
「一昔前なら大金なのにね」
美樹
「仕方ありませんね」
ふみ
「どうなさいます?」
美樹
「気にしないことにしましょう」
「気にしないって……」
美樹
「幸い、明日は、吹利に用があります。京阪の定期はまだ 切れてませんし」
ふみ
「研究室はお休みでは?」
美樹
「一足早いクリスマスプレゼント渡しに行かなくちゃなり ませんでね」
「平瀬さん?」
美樹
「ええ。彼女はもうすぐ帰省しちゃいますからね。さっさ と渡しとかないと、去年みたいな事になってしまいますからね」
ふみ
「去年はどうなさったんです?」
美樹
「いえいえ、去年は、段取りが付かなくて、結局クリスマ スプレゼントを正月明けに渡したんですよ。
さすがに少々間抜けでしたね、あれは。うむ」
「名目を変えれば良かったのに」
美樹
「なるほど。でも、それはせっかくのクリスマス用包装が もったいなかったですしね。面倒でしたし」
ふみ
「何か話がずれておりませんか?」
「そう、吹利に行くと何かあんの?」
美樹
「いえ。いつも行くパン屋で試作品のパンを頂こうかと」
ふみ
「それって……」
美樹
「あ、かなみちゃんへのプレゼントもあったんだった」
「パン屋の店長さんの連れ子さんね。その店長さんって、 離婚しちゃったの?  バツイチ?」
美樹
「いや、廻りの方の話だと、2、3回はご結婚なさってい るとかゆー話でしたが。それに、子供さんもまだまだおられるとかいう話ですし。つまり、まめなんですね」
ふみ
「まぁ、そうなんですか?」
「それってなんか、女の敵っていう感じね」
美樹
「いい方ですよ。御再婚もおきまりのようですし。娘さん もいい子ですし」
ふみ
「で、明日はちゃんとお金おろしてきて下さいね」
美樹
「はいはいはいはい」

こうして京都の夜は更けていく……



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