- 狭淵美樹
- ぐうたらな医学生。
- ふみ&琴
- 狭淵美樹の部屋に居候する霊。
- 平瀬美樹
- 狭淵美樹の高校時代の後輩。
やっと冬休みに突入したある土曜日の晩。美樹の部屋。
美樹は炬燵に足を突っ込み、ごろごろと小説を読んだりしている。
二人の霊は、台所方面にて何やら相談事をしている。
- 琴
- 「あのー、美樹さん?」
- 美樹
- 「なんでしょう?」
- ふみ
- 「お米、無くなったみたいですけど」
- 美樹
- 「インスタントラーメンは?」
- 琴
- 「ありません」
- 美樹
- 「冷蔵庫に確か凍らせたパンが」
- ふみ
- 「昨日食べたのが最後です」
- 美樹
- 「それは少々困りましたねぇ」
- 琴
- 「卵も尽きてまーす」
- 美樹
- 「食品は何が残ってます?」
- ふみ
- 「砂糖とか、醤油なら……あ、レトルトのカレーがあります」
- 美樹
- 「そっかぁ」
- ふみ
- 「何か買ってこられた方が……」
- 美樹
- 「そーだねぇ。これ読み終わったら行ってこよっか……。
むぅ。しまった」
- 琴
- 「どうしたんですか?」
- 美樹
- 「いや、銀行からお金おろしてないからね。所持金が6円
しかないんだな、これが」
- ふみ
- 「6円ではあまりなにも買えませんねぇ」
- 琴
- 「一昔前なら大金なのにね」
- 美樹
- 「仕方ありませんね」
- ふみ
- 「どうなさいます?」
- 美樹
- 「気にしないことにしましょう」
- 琴
- 「気にしないって……」
- 美樹
- 「幸い、明日は、吹利に用があります。京阪の定期はまだ
切れてませんし」
- ふみ
- 「研究室はお休みでは?」
- 美樹
- 「一足早いクリスマスプレゼント渡しに行かなくちゃなり
ませんでね」
- 琴
- 「平瀬さん?」
- 美樹
- 「ええ。彼女はもうすぐ帰省しちゃいますからね。さっさ
と渡しとかないと、去年みたいな事になってしまいますからね」
- ふみ
- 「去年はどうなさったんです?」
- 美樹
- 「いえいえ、去年は、段取りが付かなくて、結局クリスマ
スプレゼントを正月明けに渡したんですよ。
さすがに少々間抜けでしたね、あれは。うむ」
- 琴
- 「名目を変えれば良かったのに」
- 美樹
- 「なるほど。でも、それはせっかくのクリスマス用包装が
もったいなかったですしね。面倒でしたし」
- ふみ
- 「何か話がずれておりませんか?」
- 琴
- 「そう、吹利に行くと何かあんの?」
- 美樹
- 「いえ。いつも行くパン屋で試作品のパンを頂こうかと」
- ふみ
- 「それって……」
- 美樹
- 「あ、かなみちゃんへのプレゼントもあったんだった」
- 琴
- 「パン屋の店長さんの連れ子さんね。その店長さんって、
離婚しちゃったの? バツイチ?」
- 美樹
- 「いや、廻りの方の話だと、2、3回はご結婚なさってい
るとかゆー話でしたが。それに、子供さんもまだまだおられるとかいう話ですし。つまり、まめなんですね」
- ふみ
- 「まぁ、そうなんですか?」
- 琴
- 「それってなんか、女の敵っていう感じね」
- 美樹
- 「いい方ですよ。御再婚もおきまりのようですし。娘さん
もいい子ですし」
- ふみ
- 「で、明日はちゃんとお金おろしてきて下さいね」
- 美樹
- 「はいはいはいはい」
こうして京都の夜は更けていく……
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