東京、とある繁華街の昼下がり。御影は本日、出張中である。
- 御影
- 「なんか食おう」
- 声
- 「えっとー、みなさん、はじめましてー!」
ファーストフードの店の向い側、レコードショップの前で、きらびやかな衣装を身に着けた少女がマイクを手にしている。
- 御影
- 「ん? ……ああ、新人の営業か。(興味なくして店に入
る)」
- 声
- 「このたびスタジオふゅーりーからデビューすることにな
りました、鈴森琴璃(すずもり・ことり)でーす。今日はー、わたしのために、こぉんなに集まってくれて、どうもありがとー!」
- 見物人
- (まばらな拍手)
- 琴璃
- 「ありがとー! えーっとぉ、それじゃぁさっそくですけ
どー、わたしのデビュー曲、聞いてくださーい!
タイトルはー、『エターナル・エモーション』でーす!」
- 店員
- 「いらっしゃいませー。ご注文をどうぞー」
- 御影
- 「(ほかに客はおらんのか) んーと、ハンバーガー3つと
大ポテトとオレンジジュース。こっちで食べさせてもらうし」
適当に注文をすませ、カウンター席でかつかつとハンバーガーを平らげはじめる御影。
と、こぎたない格好のガキどもが背後から10人ほど……
- 声
- 「イナカもんはイナカに帰れよぉっ!(蹴りっ)」
- 御影
- 「ぶっ!(ジュース吹き出す)」
- ガキ1
- 「ぎゃははははは。かっちょわり〜!」
- 阿呆
- 「たらたら食ってんじゃねーよ!(ポテトぶちまける)」
- ガキ2
- 「(ハンバーガーを床に落として踏みにじる)」
- 御影
- (ナプキンで顔を拭く)
「(そーか、客がおらんのはこのせいか)……食いモンの恨みは恐ろしい、っちゅう言葉、聞いたことあるか?」
- ガキ3
- 「はぁ? なにコイツ? 日本語しゃべってくれなきゃわ
かんないじゃん」
- 御影
- 「ま、いま聞いたことも三歩あるけば忘れるような安モン
の頭しか持っとらんオノレらに、こんなことを期待したわしが悪かったのぉ。
ひとつだけ言うといたる。去ね。……今すぐ去ねや。したら忘れたるわ(にやにや)」
- ガキ4
- 「ざけんじゃねぇぞテメエ!(殴りかかる)」
- SE
- 「ごすっ!」
よけようともせず、御影は顔面で相手の拳をうけとめた。
- 御影
- 「(にたーり) 我が法廷へようこそ。くっくっくっく……」
がしっ、と相手の顔面をつかみ、軽々と持ち上げる。
- ガキ4
- 「痛てえええええええっ! 痛てえよおおおおおおお(泣)」
- 御影
- 「(楽しそう) 喧嘩売るんやったら相手見てからにせぇや、
ドアホが」
- ガキ5
- 「テメエ、なにすんだこのヤロー!(蹴り!)」
- 御影
- 「くふふふふふ。こうする(ぽい)」
とりかこまれて殴る蹴るされるものの、気にしたふうもなく、御影はじたばたもがくガキを文字どおり『投げ飛ばした』。
- SE
- 「ひゅーん。がしゃーん!」
店のウィンドウに激突したガキは、粉々に砕けたガラスの破片といっしょに、向い側のレコードショップに突っこんだ。
- 琴璃
- 「きゃあああああああああっ!」
- 店員
- 「店長〜、またなんかケンカしてるみたいなんですけど〜」
- 店長
- 「いつものことだから知らんぷりしてなさい」
- ガキ6
- 「テメエ、ぶっ殺すぞ!」
- 御影
- (含み笑いがだんだん大きくなり、哄笑へと変わる)
「YAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!」
阿鼻叫喚地獄絵図
- ガキ7
- 「ひぃっ! 来るな……来るなーっ!(ナイフで刺す)」
- 御影
- 「(平気) はーっはっはっはっ! I'm Unstopable!」
えりくびを掴んで持ち上げ前後に叩きつけてから投げ飛ばす)
- ガキ8
- 「たっ、助けてくれぇっ! 殺されるーっ!(脱兎)」
- 御影
- 「ぬはははははははははははははは! 絶望にうなれィ!」
造りつけのテーブルを引きはがし、逃げようとするガキの背中に投げつける。
そして、琴璃のデビューも幻と終わる。
- 琴璃
- 「あいつのせいだああああああああああっ!(泣) 殺す!
ぜーったい殺すっ!」
鈴森琴璃は現在、生まれ故郷の吹利に戻り、市内のカラオケボックスの店員をしている。
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