エピソード412『恨まれて当然』


目次


エピソード412『恨まれて当然』

東京、とある繁華街の昼下がり。御影は本日、出張中である。

御影
「なんか食おう」
「えっとー、みなさん、はじめましてー!」

ファーストフードの店の向い側、レコードショップの前で、きらびやかな衣装を身に着けた少女がマイクを手にしている。

御影
「ん? ……ああ、新人の営業か。(興味なくして店に入 る)」
「このたびスタジオふゅーりーからデビューすることにな りました、鈴森琴璃(すずもり・ことり)でーす。今日はー、わたしのために、こぉんなに集まってくれて、どうもありがとー!」
見物人
(まばらな拍手)
琴璃
「ありがとー! えーっとぉ、それじゃぁさっそくですけ どー、わたしのデビュー曲、聞いてくださーい!
タイトルはー、『エターナル・エモーション』でーす!」
店員
「いらっしゃいませー。ご注文をどうぞー」
御影
「(ほかに客はおらんのか) んーと、ハンバーガー3つと 大ポテトとオレンジジュース。こっちで食べさせてもらうし」

適当に注文をすませ、カウンター席でかつかつとハンバーガーを平らげはじめる御影。
 と、こぎたない格好のガキどもが背後から10人ほど……

「イナカもんはイナカに帰れよぉっ!(蹴りっ)」
御影
「ぶっ!(ジュース吹き出す)」
ガキ1
「ぎゃははははは。かっちょわり〜!」
阿呆
「たらたら食ってんじゃねーよ!(ポテトぶちまける)」
ガキ2
「(ハンバーガーを床に落として踏みにじる)」
御影
(ナプキンで顔を拭く) 「(そーか、客がおらんのはこのせいか)……食いモンの恨みは恐ろしい、っちゅう言葉、聞いたことあるか?」
ガキ3
「はぁ? なにコイツ? 日本語しゃべってくれなきゃわ かんないじゃん」
御影
「ま、いま聞いたことも三歩あるけば忘れるような安モン の頭しか持っとらんオノレらに、こんなことを期待したわしが悪かったのぉ。
ひとつだけ言うといたる。去ね。……今すぐ去ねや。したら忘れたるわ(にやにや)」
ガキ4
「ざけんじゃねぇぞテメエ!(殴りかかる)」
SE
「ごすっ!」

よけようともせず、御影は顔面で相手の拳をうけとめた。

御影
「(にたーり) 我が法廷へようこそ。くっくっくっく……」

がしっ、と相手の顔面をつかみ、軽々と持ち上げる。

ガキ4
「痛てえええええええっ! 痛てえよおおおおおおお(泣)」
御影
「(楽しそう) 喧嘩売るんやったら相手見てからにせぇや、 ドアホが」
ガキ5
「テメエ、なにすんだこのヤロー!(蹴り!)」
御影
「くふふふふふ。こうする(ぽい)」

とりかこまれて殴る蹴るされるものの、気にしたふうもなく、御影はじたばたもがくガキを文字どおり『投げ飛ばした』。

SE
「ひゅーん。がしゃーん!」

店のウィンドウに激突したガキは、粉々に砕けたガラスの破片といっしょに、向い側のレコードショップに突っこんだ。

琴璃
「きゃあああああああああっ!」
店員
「店長〜、またなんかケンカしてるみたいなんですけど〜」
店長
「いつものことだから知らんぷりしてなさい」
ガキ6
「テメエ、ぶっ殺すぞ!」
御影
(含み笑いがだんだん大きくなり、哄笑へと変わる) 「YAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!」

阿鼻叫喚地獄絵図

ガキ7
「ひぃっ! 来るな……来るなーっ!(ナイフで刺す)」
御影
「(平気) はーっはっはっはっ! I'm Unstopable!」
えりくびを掴んで持ち上げ前後に叩きつけてから投げ飛ばす)
ガキ8
「たっ、助けてくれぇっ! 殺されるーっ!(脱兎)」
御影
「ぬはははははははははははははは! 絶望にうなれィ!」

造りつけのテーブルを引きはがし、逃げようとするガキの背中に投げつける。
 そして、琴璃のデビューも幻と終わる。

琴璃
「あいつのせいだああああああああああっ!(泣) 殺す! ぜーったい殺すっ!」

鈴森琴璃は現在、生まれ故郷の吹利に戻り、市内のカラオケボックスの店員をしている。



連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作のTRPGと創作“語り部”総本部