それはある日の体育の授業。バスケットをやっているとき。
- みのる
- 「夏和流っ! パスッ」
- 夏和流
- 「え、あーあーあー」
バキッ!
ボールは高速で夏和流の頭へ。
- 夏和流
- 「あうぅぅぅ」
- みのる
- 「……なぜ正面からのパスをとり損ねる」
- 夏和流
- 「あんなに速くちゃとれないよぉ」
- みのる
- 「目が悪いのも程があるな」
- 夏和流
- 「それは言わないでくれよ……あ、メガネぇ」
床に転がっているのは、見事にフレームの曲がったメガネ……。
- 夏和流
- 「……壊れちゃったなぁ」
- みのる
- 「……すまん」
- 夏和流
- 「いいよ、どうせ度があっていなくて、買い換えるつもり
だったから。メガネつけて体育しちゃった僕も悪いし」
- みのる
- 「……そうか」
- 夏和流
- 「(いじわるそうに)あ、やっぱり弁償して。せっかくだ」
すらり。どこからともなく現れる短い剣。無論、他の人間からは死角になっている。
- みのる
- 「……誰が悪いのだったか?」
- 夏和流
- 「(汗)……や、やだなぁ、冗談だよ、冗談」
- 先生
- 「おまえら、漫才やっていないで。さっさと戻れよ」
- 夏和流
- 「(天の助けだ)はぁーい(たったった)」
- みのる
- 「逃したか」
その日の授業も終わって。夏和流はさっそく近所の眼鏡屋へ出かけた。
- 夏和流
- 「すいません、メガネ新しく欲しいんですけれど……」
- 店員
- 「視力の書いてあるカードはお持ちですか?」
- 夏和流
- 「えーと、これですよね。でも、昔の物ですから……」
- 店員
- 「測りなおしますか?」
- 夏和流
- 「お願いします」
ちょっと大きな機械で、目の焦点の位置をしばらく調べる。
- 店員
- 「ひょっとして、そのメガネかなり見えないんじゃありま
せんか?」
- 夏和流
- 「いやぁ、もう三年くらい前の物ですし……」
- 店員
- 「ここまで度が進むと、メガネよりコンタクトの方がいい
んじゃありませんか?」
- 夏和流
- 「そうなんですか?」
- 店員
- 「メガネだと、視界がかなり歪みますから」
- 夏和流
- 「うーん……試しに、メガネだとどうなるのか教えてもら
えませんか?」
そういって大体の度であわせてもらい、メガネを覗いてみる。
……確かに、遠近感がうまくつかめないし、外見もレンズはとても厚くなる。
- 夏和流
- 「コンタクトだと、どうなるんでしょう」
- 店員
- 「少々お待ちください」
- 夏和流
- 「はあ……」
しばしの時が過ぎる。夏和流の目に大体あうコンタクトを探しているらしい。
- 店員
- 「こちらへ」
- 夏和流
- 「はい(てくてく)」
- 店員
- 「……それでは、つけてみますね」
- 夏和流
- 「はい」
流石に経験がないとそう簡単につけられるわけがないので、店員のお姉さんがコンタクトをつけてくれる。が……。
- 店員
- 「すいません、まばたきを我慢してもらえませんか」
- 夏和流
- 「す、すいません……(だって、恐いよぉ)」
- 店員
- 「くっ……(位置を動くかす)」
- 夏和流
- 「(おねーさん、その位置だと耳に息が……はふぅ!)
あはは、すいません、まばたきしちゃって(笑ってごまかしちゃえ)」
悪戦苦闘すること三十分。
- 店員
- 「(やっとコンタクトが入り)……どうですか?」
- 夏和流
- 「……目が痛いです」
ずっと指で目を開け続けていたのだから、痛くもなろうもの。
- 店員
- 「しばらくしたら慣れますから、それまであちらでお待ち
ください」
- 夏和流
- 「はい(てくてくと歩く)
……コンタクトかぁ。さすがにあのメガネはつけられないよなぁ。でも……うーん、しょうがないかなぁ……」
- 店員
- 「どうですか?」
- 夏和流
- 「あー、はい。コンタクト、いただきます」
- 店員
- 「毎度ありがとうございます」
それから数日して、コンタクトができたのでつけて街を歩く。
- 夏和流
- 「……みのる」
- みのる
- 「何だ?」
- 夏和流
- 「おまえって、こういう顔していたのか……(しみじみ)」
- みのる
- 「……何を今さらいっているんだ?(不審)」
- 夏和流
- 「おおー、街ってこういう風だったのか……よく見える……」
- みのる
- 「……それはよかったな」
- 夏和流
- 「おおー、見える……」
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