まだ春には遠いある日、ベーカリー楠の前にて。
- 花澄
- 「真っ直ぐだから迷わない、って言われたけど、本当に
-
- 無事着いたなあ………(感動)で、帰る時には出て、
-
- 左に行けばいいのね。よし」
パン屋の入り口で方向確認をする図。中から見ていると相当変である。
- 緑
- 「………どうしたんでしょうか、あの人」
- 観楠
- 「何だろうね」
- 緑
- 「道、間違えたんでしょうか」
からん、ころん。
花澄が入ってくると同時に、扉から暖かい風が吹き込んでくる。
- 緑
- 「(………あれ?)いらっしゃいませ」
- 花澄
- 「(あ、かわいい……ってそうじゃないっ)えっと……
-
- ここ、ベーカリー楠、ですよね?」
- 緑
- 「はい、そうですけど?」
- 花澄
- 「よかったあ(にこにこ)えーと……いわしパンって
-
- ありますか?」
数秒の、間。
- 観楠
- 「…………は?」
- 花澄
- 「(あれ?)あの、いわしパンってあるって、聞いたん
-
- ですけど…………」
- 観楠
- 「………失礼ですけど、誰から聞かれました?」
- 花澄
- 「うちに来て下さるお客さんから………ええと、この前
-
- オーリン・ヘイゲルの本を予約していった………狭淵さ
-
- んという方から、なんです、けど………」
- 観楠
- 「(あの人わ………)いえ、あれはですね、今のところ試
-
- 作品ですから(汗)」
- 花澄
- 「あ、そうなんですか……(少し残念)」
- 観楠
- 「え、えーっと……この次ご来店の際には必ずご用意
-
- させて戴きますんで……申し訳有りません」
- 花澄
- 「あ、じゃ、楽しみにしています。(にこにこ)」
- 緑
- 「はい、合計850円です」
- 花澄
- 「はい。………あ、どうも」
- 緑
- 「ありがとうございました」
からん、ころん。
- 花澄
- 「ここを出て、左………だった………あれ?」
行きと帰りとでは、同じ風景でも見えかたが違うのである。
- 花澄
- 「あれ……でも、こっちでもないし………(焦)」
からん、ころん。
- 花澄
- 「あの、もうしわけありませんが……」
- 観楠
- 「はあ」
- 花澄
- 「瑞鶴へは、どうやって行くんでしょう?」
- 観楠
- 「瑞鶴、ですか?うちからですとそこの大学通りへ出て、後は真っ直ぐですが……本を買いに行かれるんならこの近くにも本屋さん有りますよ」
- 花澄
- 「いえ……その……そういう訳じゃ……無いんです」
- 観楠
- 「?」
- 花澄
- 「その、瑞鶴の……店員……なんです……アルバイトですけど(頬を染めて俯く)」
- 観楠
- 「は?(硬直)」
- 緑
- 「え?(硬直)」
あまりの事に硬直する一同。
暫く後、この事件が原因かどうかは不明だがベーカリー楠の紙袋の裏にベーカリー周辺の略図が印刷される事となったが、それは吹利商店街に新たな看板
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