それは、春の入学式や、始業式を終えたある日のこと。吹利学院高校のグラウンドの使用権をめぐった戦いが、男女サッカー部の間で起こったのだ!
- 窓香
- 「あたしたちが先にグラウンドにきたのよ、あたしたちに
-
- 使わせてよ」
- 女子達
- 「そうよ、そうよ!」
- 夏和流
- 「そういっても、男子サッカー部はずっと前からここを使
-
- っていたんだ。どちらが先、というのならこっちだって言
-
- えると思うよ」
- 男子達
- 「そうだ、そうだ!」
- 窓香
- 「……先輩達には、女の子をいたわる気持ちとか、ないん
-
- ですか!」
- 祐司
- 「そういう事は、もっと女らしくなってから言ったら?」
- 男子達
- (どっと笑う)
- 女子達
- (怒りの表情)
- 夏和流
- 「おい、ちょっとそれはひどぃ……」
- 窓香
- 「……自分達がモテないからって、八つ当たりはやめても
-
- らえませんか」
- 男子達
- 「なんだと!」
-
- 「喧嘩売ってんのか!」
- 窓香
- 「先に言ってきたのはそっちでしょ」
- 祐司
- 「このやろう(殴りかかる)」
- 窓香
- 「きゃっ(ぎゅっと目をつむる)」
- みのる
- 「(殴ろうとした腕をつかみながら)いいかげんにしろ」
- 祐司
- 「西山先輩……だって、こいつら……」
- みのる
- (じろ)
- 祐司
- 「うっ……」
- 夏和流
- 「……あのさあ、なんにせよ暴力ってのはよくないだろ?
-
- スポーツマンらしく、もちっと健全なことで決めたら?」
- 窓香
- 「……じゃあ、試合で決めましょう」
- 祐司
- 「……いいだろ、うけてたつぜ」
- 男女達
- (激しく火花が散る)
- みのる
- 「……やれやれ。それなら、俺が審判をやる」
- 夏和流
- 「あ、僕も気が乗らないから同じく副審って事で」
- 祐司
- 「そんな、先輩……」
- 夏和流
- 「僕らがいないと、勝てそうにないって?」
- 祐司
- 「(むっ)先輩達がいなくても、絶対に勝ちます!」
- 窓香
- 「ちょっと、ハンデをつけるの」
- 夏和流
- 「(肩をすくめ)べつに。負けたら、君たちの力を過小評
-
- 価した僕らが悪いって事だし、問題ないんじゃない?」
- 窓香
- 「……いいわ。後悔させてあげる(めらめら)」
- みのる
- 「話は済んだか。なら、始めるぞ」
男子サッカー部対女子サッカー部との対決は、こうして始まった!
- 窓香
- 「いまに見てなさいよ」
- 祐司
- 「ふん、あやまってやめんならいまだぜ」
- 窓香
- 「やめないわよっ、負けるもんですか」
- 夏和流
- 「はいはい、二人とも決着はサッカーで」
- みのる
- 「二人とも、始めるぞ」
- 窓香
- 「絶っ対に負けないんだからっ(めらめらめら)」
- 祐司
- 「女に負けてたまるかよ(めらめらめら)」
ピィーッ試合開始のホイッスルが響く。
- 窓香
- 「いくわよっ(ザザッ)」
- 夏和流
- 「おっ…速い」
ドリブルでかけていく窓香。150ほどの小さな体ながら、他の男子部員をものともせずすり抜けて走っていく。
- みのる
- 「(ほう、なかなかやるな)」
- 祐司
- 「このっ、ちょこまかしやがって、俺が止めるっ」
- 窓香
- 「…あんたは結構できそうね…勝負よ!」
- 祐司
- 「いくぞっ!(窓香の前に出る)」
- 窓香
- 「……何てね。パスッ」
- 女子
- 「(ボールを受け取り)オッケー」
- 祐司
- 「なっ?てめえ、きたねえぞ!」
- 窓香
- 「サッカーはチームプレイよ(走って行く)」
- 祐司
- 「……くそっ(後ろに走る)」
- 夏和流
- 「ふーん。状況もきちんと見てるなぁ」
- みのる
- (いいところにパスをだすな)
- 女子
- 「窓香、ラストパス!」
- 窓香
- 「やあっ!(ボレーシュート)」
- キーパー
- 「くそっ(手を伸ばすが届かない)」
- みのる
- 「(ホイッスルを吹き)ゴール!」
- 女子
- 「やったぁ!窓香、ナイッシュウ!」
- 祐司
- 「……くそっ」
- 窓香
- 「もう謝ったって、遅いんだからね」
- 祐司
- 「誰が謝るか!試合はまだ始まったばかりだ!」
- 夏和流
- 「みのる、どう思う?」
- みのる
- 「あのキャプテンはうまいな。他の者はそれほどじゃない
-
- が、あのキャプテンのおかげでうまく使えている」
- 夏和流
- 「みのるとどっちがうまいかな?」
- みのる
- 「……さあな。やってみなければわからないさ」
- 祐司
- 「先輩!試合、再開してください!」
- みのる
- 「わかった(ぴぃぃぃぃ!)」
- 祐司
- 「今度はこっちの番だ」
- 窓香
- 「止めるっ!」
- 祐司
- 「(パスをだし)ふん、これでも止められるのかよ」
- 窓香
- 「絵里!そこの背の高い人マーク!ユメ、その一人の
-
- ひとのところについて!」
- 男子
- 「(くそ、読まれてる!)祐司、戻すぞ!」
- 窓香
- 「カット!」
- 祐司
- 「くそ!」
- 窓香
- 「美恵ちゃん、あがって!三枝さん、後ろの方お願いね!」
- 夏和流
- 「ひゃー、こりゃ本格的にやばいな。あーあーあー、また
-
- センタリング……」
- みのる
- 「(ぴぴぃぃぃぃ!)ゴール!」
- 祐司
- 「……くそ」
- 男子
- 「祐司、どうする?」
- 祐司
- 「……俺があの女をマークする。ボールがわたる前につぶ
-
- せれば、何もできないはずだ」
- 男子
- 「わかった」
- 祐司
- 「見てろよ……反撃開始だ!」
- 男子
- 「いくぜっ祐司!」
- 祐司
- 「まかせとけっ、奴は俺が止めるっ」
- 夏和流
- 「ふぅん、キャプテンの子をマーク、か。まあ、それしか
-
- ないかな」
- 窓香
- 「簡単に止められないわよっ!鈴ちゃん8番マークっ、絵里は
-
- マーク続けて!こいつはあたしがなんとかする!」
- 夏和流
- 「なんか、みんな動きが良くなってきてるな」
- みのる
- (女子全員が活気づいている……あのキャプテンの影響か)
- 女子
- 「あたしたちをなめないでよねっ」
- 男子
- 「くそっ、祐司!頼むぜっ」
- みのる
- 「テクニックもスピードもあの子の方が上だな……祐司は
-
- その分をパワーと体格でカバー、か」
- 窓香
- 「よし、いけるっ」
- 祐司
- 「くそっ、させるかぁっ」
止めようとするが、窓香の動きについていけずバランスを崩す祐司。
- 祐司
- 「うわっ…と」
よろめいた先には窓香が…よけきれない…
- 祐司
- 「しまっ…」
- 夏和流
- 「危ないっ」
- 窓香
- 「きゃああっ」
どさぁっ窓香を下敷きにして倒れこむ祐司。
- みのる
- 「(ピィィィィィッ)」
- 女子
- 「窓香ぁしっかりっ!」
- 男子
- 「祐司っ!大丈夫かっ?」
- 夏和流
- 「二人とも、怪我はっ?」
あわてて駆け寄る、女子達と夏和流、そしてみのる。祐司はどうしていいのか困惑しつつ、ずっとその場で立っていた。
- 女子
- 「窓香、だいじょうぶ?」
- 窓香
- 「い、た……(肩を押さえる)」
- 夏和流
- 「肩が痛むの?(そっと肩に触れる)」
- 窓香
- 「……つっ」
- みのる
- 「どうやら動かすのは無理だな。誰か、事情を話して保健の
-
- 先生を呼んできてくれ。それから、担架も」
- 女子
- 「はい」
- 祐司
- 「(どうしてよいかわからず)先輩……オレ……」
- みのる
- 「……このままの試合続行は無理だな」
- 夏和流
- 「今日は練習も、ちょっと無理だね……」
- 女子
- 「先生、連れてきました!」
- みのる
- 「そっと、運ぶぞ……」
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