エピソード425『恐怖の人事異動』


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エピソード425『恐怖の人事異動』

いつも通りの日之丸クレジット京都営業部

係長
「大門君」
「はい?」

仕事の手を休め、返事をする喬。

係長
「……まだ、決定したことじゃあないんだがなぁ」
「何でしょう? (もったいぶった言い方ってコトは…… ロクでもないことなんだろうな、多分)」
係長
「神戸店のグランドオープンで、いままで大阪とかに応援 に来てた神戸の社員が戻ることになったおかげで人員が足りなくなってな……」
「まさか心斎橋店に異動するんですか?」
係長
「いや、心斎橋は経理課のやつが行くことになってる。得 意先課からは吹利の方へ行くことになる」
「そう……ですか(汗)」
係長
「まぁ、他にも二人ほど候補がいるから、そう気にしなく てもいいと思うけどな。
なにせ大門が行くとウィンドウズが解るやつがいなくなるからな」
「それならいいんですけど……」

そして、その3日後の朝礼……

部長
「えー、来月から日之丸神戸店が新装開店します。それに 伴い他の営業部に応援に来ていた神戸の社員が戻ることになるのですが、その穴をこちらの社員で埋めようということになりました。
心斎橋へは経理課の山崎さんに、吹利へは得意先課の大門くんに行ってもらいます」
「……!!」

はっ、と係長の方を見る喬。
 目が合ったとたんにバツの悪そうな顔をする係長。

部長
「山崎さん、大門くんにはまた新しい事務所でがんばって いただきたいと思います。……では朝礼を終わります」

無言で席につく喬。

同僚
「おい、大門。いま、心の中で『大迷惑』が流れているだ ろ?」
「私にはマイホームとか彼女とかないですけどね」
同僚
「あたりまえだ、俺にだってないんだからな」
「で、そんな哀れな私に慰めの言葉もないんですか?」
同僚
「いや、なんかあんまり落ち込んでないみたいだし」
「ええ、デメリットばかりじゃないってことですよ。 た だ……出勤の時間とかが……ねぇ」
同僚
「え? オマエ何にも調べてないんだな。多少の住宅手当 くらい出るから向こうに借りてしまえよ、部屋くらい」
「はぁ……」
同僚
「一人暮らしが恐いってワケでもないだろうに」
「誰がそんな事を言いました? わかりました、総務に聞 いてみます」

昼休み

同僚
「どうだった?」
「住宅手当2万円はひねりだしてくれるそうです。
あとは部屋探しと引越し作業ですね……残念ながら私は免許持ってませんから業者に頼むことになりそうですが」
同僚
「そんなの気にするなよ、俺のオヤジの軽トラ使えば業者 に頼むこたぁないんだから」
「……」
同僚
「どうしたよ?」
「まさかそこまで協力してくださるなんて」
同僚
「ただですると思ってるか?」
「いえ、まったく。(きっぱり) で、条件はなんです?」
同僚
「今月の俺の残業当番を全部引き受けること」
「了解です(苦笑)」
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