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エピソード『スーパースカロ……』===============================
 登場人物
  炎野火虎左衛門(えんの・ひこざえもん)
  恥ずかしい名前の操炎術師で大学生で特撮ヒーローマニア
  三河夏和流(みかわ・かわる)
  駄洒落と演劇を愛する高校生
  西山みのる(にしやま・みのる)
  駄洒落を嫌う高校生。夏和流の友人
  湊川観楠(みなとがわ・かなみ)
  ベーカリー楠の店長
  水島緑(みずしま・みどり)
  ベーカリー楠でバイトをしている高校生
 春休み始まって間もないベーカリー楠……
 からん、ころん

緑  
「いらっ…… あれ?」
観楠 
「どうしたの? 緑ちゃん」
緑  
「誰かドアを開けたまま、どこか行ったみたいなんです」
観楠 
「いたずらかな? まぁいいや、閉めてくれるかな。
 悪いけどちょっと手が離せないから」
緑  
「はい」

  カウンターを出てドアを閉めに行こうとする緑。

緑  
(……ん?)
夏和流
「あ、締めるよ。僕の方が近いし」
緑  
「あ、でも……」
夏和流
「気にしなくていいって。
 後でパン代まけてくれとか言わないから」
緑  
「ぃぇ…そぅじゃなくて…」
夏和流
「いいからいいから」
緑  
(ドアになにか貼ってあるみたいだけどいいのかな?)
夏和流
「……しかし、誰だろ? こんないたずらみた……」

  席を立ち、扉を閉めようとした夏和流。
   遠くの方で何かが叫びを上げているのを聞いた。

?????
「すぅ〜ぱぁ〜スカロ、スライダぁーっ!!」
SE 
(ずずっしゃあああぁぁぁぁぁ……)
夏和流
「??? なんだろ? ……って、わあぁぁっ!
 骨格標本がこっちに滑ってぇぃぃ!!!」
?????
「おわっ!! 退け、どきやがれぇ!!」

  
   骨格標本男は足を広げ、夏和流の胴を蟹挟みにする。
   スライディングの勢いは大分削がれたもののすぐには止まらない
   そのままベーカリー店内に突っ込む。

緑  
「きゃっ!」
観楠 
「うわわわっ!」
みのる
「……なんだ?」

  幸運なことにカウンターの手前で勢いはおさまった。
   蟹挟みした足を上にしてなければ夏和流は激突していた……
   と、いう程度の本当にわずかな距離だったが。

?????
「おい、降りてくれ。疲れるんだよ」
夏和流
「え? あ…… はい」

  夏和流が降りると、体をひねって跳ね起きる。

?????
「まぁったく、なんってこったよ。
 せっかく衝撃的な登場を決めようと思ったのに」
(マスクを脱ぐ)
夏和流
(頭がクラクラするぅ……)
「炎野さんか…… なんて迷惑な」
火虎左衛門
「迷惑だとぅ!! オマエ、俺の登場シーンを
 ブチ壊したクセに!!」
夏和流
「そんなの知りませんよぉ。
 突然突っ込んで来る方が悪いんじゃないですか」
火虎左衛門
「ほほぉ、ちゃんと扉見たか?
 ちゃんと貼紙貼って予告はしておいたぞ(指さす)」

  (スカロマニア、ベーカリー楠に参上!!

   註
劇的な登場をするため、
      今より30秒間扉に近づかないでください)
火虎左衛門
「な?」
夏和流
「な? と言われても……」
観楠 
「そういう問題じゃないぞ、炎野君」
夏和流
「それに何故スカロマニア?」
火虎左衛門
「うむ、いい質問だ。
 先日やっとスカロドリームファイナルを出せたんで、
 その記念にこのスカロスーツを作ったってわけだ」
夏和流
「よ、よほどヒマなんですね(汗)」
火虎左衛門
「おうよ、もう課題もすべて終わって既に春休みだ、
 それにまだアクションショーもやらねぇしなぁ」
みのる
「で、結局なにしに来たんだ?」
火虎左衛門
「食パン買いに来た」
夏和流
「炎の魔人ですねぇ、炎野さん」
火虎左衛門
「……その程度じゃあ零点だな。笑えねぇわ全然。
 なぁみのる、コイツ燃やしていいか?」
みのる
「臭くなるから外でしろ」
火虎左衛門
「外はまだ寒いからヤだな。やめとく」
夏和流
「って汗かいてますけど?」
火虎左衛門
「着ぐるみして動きゃあ誰だって汗くらいかくって。
 試してみるか?」
夏和流
「遠慮します(きっぱり)」
火虎左衛門
(ちっ! 使えるならアクションショーの戦闘員役でも
 させようかと思ったんだがなぁ)
「そうか。ま、いいけどな……
 さて、買うモン買ってとっとと帰るか」
緑  
「あ、食パンでしたらそちらになります」
火虎左衛門
「おう、
 これ、と…… あとコレ2つな、いくらになる?」
緑  
「420円ですね」
火虎左衛門
「ほいよ、
 で、ちょっと聞きたいんだが、
 4月からパンとか値上げする予定あるか?」
観楠 
「いや……そのつもりはないけど。どうして?」
火虎左衛門
「いや、消費税とかあるだろ?
 値上げするなら買いだめしようかと思ってな」
観楠 
「以外とセコいんだね(^^;)」
火虎左衛門
「まぁな、こーゆー生活してるから」
(指先に火をともす)
夏和流
「???」
みのる
「爪に火を灯す……と言いたいんだろ」
夏和流
(そんな人が着ぐるみ作るのかな?)
観楠 
(そのスーツにいくらかけてるんだろう?)
緑  
(そういうモノ作るからお金がないんじゃないのかな?)
観楠 
「と、とにかく、そういう格好自体にはあまり文句を
 言う気はないけど、いい大人なんだからキケンな
 ことはしちゃあいけないよ。ここに限らずね」
火虎左衛門
「わかったよ。
 ……ちゃんと登場できてればもうちょっとくらい
 カッコがついたと思うんだがな」
夏和流
「そんな恨みがましい目で見ないでくださいよぉ」
火虎左衛門
「じゃ、もう帰るわ(マスクを被る)」
緑  
「え? まさかその格好のままで?」
火虎左衛門
「ああ、そうだけど。何か?」
緑  
(は、恥ずかしい……)
夏和流
(警察に職質されないんだろうか? あのカッコ)
観楠 
(子供に悪影響にならないかな……)
火虎左衛門
「……なんだよ、俺をジロジロ見て……
 ま、いいや。
 町で俺を見たらいつでも声をかけてくれな
 暇だからよ」
夏和流
(いやだ)
観楠 
(絶対にいやだ)
緑  
(見かけたら声かけられる前に逃げよう)
火虎左衛門
「じゃ、またな……
 いくぞ! 八百屋まで!!
 すぅ〜ぱぁ〜 スカロクラッシャーっ!!」

  ぐるぐると錐揉み回転をかけてカッ飛んでいく火虎左衛門を
   呆然と見送る3人と落ちついた様子でパンを食べてるみのる。
   後に八百屋の方から何かが激突する音と八百屋のオヤジの
   怒声が聞こえてくることになることを彼ら四人は確信し……
   しっかりそのとおりになったのだった……



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