エピソード429『電車ごとごと』


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エピソード429『電車ごとごと』

電車は春休みなのか、なんやかんやで満員状態だった。

直紀
「(うぅ! ぎづい……ラッシュに乗りたくないがために 通勤時間15分の所に越してきた意味がないじゃないよぉ)」

たぶん前の電車が詰まってるんだろう、なんか遅い。
 ぱしゅーとドアが開いてまた人が入ってくる。もーこれ以上入らんぞってなくらいだ。

直紀
「(ま、まだはいるかぁっ。駅まで……まだ8駅もある〜(泣) あうあう)」

ヒマなのできょろきょろと辺りを見ると中吊り公告に頭が被ってる黒ずくめの男がいる。背もそうだが風貌からしてかなり……目立つ。

直紀
「(ふわぁ〜、背ぇ高いヒト。190くらいあるよね)」

じぃっと見てると次の駅で乗り込んで来た人に押され背中がどんどん近くなる。どんどん……

直紀
「(うっ、凄い圧迫感……)」
時雨
「相変わらずこの線は凄いねえ、あきりん」
竜胆
「時雨君がこっちのほーまで買い出しに付き合わせたから でしょ」
時雨
「嫌だなあ、それは言わない約束じゃないか」

ききぃっと急停車。あちこちでバランスを崩した人たちが手すりや吊革にしがみ付く 。

直紀
「きゃあっ(時雨にしがみつく)」
時雨
「と、とと。大丈夫かい、あきりん」
竜胆
「まあね。もう凄い混みよう(ぎゅううう)」
時雨
「……あきりん。相変わらず可愛いむ……」
竜胆
「(時雨のセリフが終わる前に)りんどうちゃんパーンチ!
小声)」
時雨
「はうわっ!! な、ないすパンチ(ぐっ)」
竜胆
「鼻血出とるぞ……」

あいも変わらず電車は満員状態である。

直紀
「(う、動けないぃぃ(泣)これじゃ壁だよぉ)」
時雨
「……」
竜胆
「どーしたの、時雨君」
時雨
「(小声) 後ろの子さっきからずーっとしがみ付いてるん だけど……はっ、まさか一目惚れ? 私にはめぐみという者が(ドキドキ)」
竜胆
「(呆)……馬鹿なこと言ってるし。第一女の子じゃないか もしれないじゃない」
時雨
「いやっ! 後ろからソコハカとなく漂う女の子のかほり!」
竜胆
「あほかぁっ!!(こむぼHIT)」
時雨
「うう……愛が痛いよ」

前で行なわれている漫才にも気づかず、

直紀
「(あうー、なんか『ここを開けろー!!』ってガズガズ叩 きたい気分だ……いやっ、馬鹿なこと言ってる場合じゃない! 気道確保、気道確保)すーはーすーはー」
竜胆
「(小声)どっちかっつーと痴漢にあってるの方が確立高い わよ」
時雨
「そうかなぁ……一目惚れの線は?」
竜胆
「きっとそうよ!  今そこにある危機に対しては時雨君 だって救いの人なのよっ! でも安心して、この美少女転生戦士豊秋竜胆ちゃんが鉄拳制裁食らわしてやるわっ!」
時雨
「一目惚れの線……」
直紀
「(なんか酸欠かぁ? 頭……ぐらぐらしてきたぞ。この まま『満員電車で圧死』とか地方版の三面に載ったらやだなぁ)」
竜胆
「時雨君、どいてっ! ちょっと、そこの奴(直紀の後ろ にいた男を指す)満員電車にかこつけて痴漢とはいい度胸ね、この女の敵っ!」
直紀
「ぷはぁっ!!(ぜーぜー)」
時雨
「大丈夫?」
直紀
「(ぜーぜー)は、はい。あー、苦しかったぁ」
時雨
「え……」
竜胆
「この豊秋竜胆が制裁を食らわしてやるから、そう思えぇ!」
直紀
「後ろの人と貴方に挟まれちゃって、身動き取れなかった んです。気を失う前になんとかなって良かったぁ(笑)」
時雨
「えぇっ!!」
直紀
「……あの?」
時雨
「あきりん、ちょっと……!」
「(あせっ)ちょっ! 人違い……!!」
竜胆
「問答無用っ! りんどうちゃんぱぁぁぁんんちぃぃ!!」



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