エピソード436『涼介のアメフト恐怖症!?』


目次


エピソード436『涼介のアメフト恐怖症!?』

1997年度、大学の入学式が今まさに終わったところだ。
 久永涼介と岩沙琢磨呂は、晴れやかな顔をして体育館から出てくる。これから2人の新しい人生が始まるというのだから、無理もない。
 だが、一張羅をぴしっと決め込んだ二人に不吉な影が忍び寄っていることなど、当人達は知る由もなかった。

琢磨呂
「あー、疲れたわ。しかし眠かった」
涼介
「岩沙、おれの横でねてたもんなぁ」
琢磨呂
「爺の話しを聞いて何が楽しい。ま、代表の女の子がしゃ べってるときは、きちっとおきていたぞ」
涼介
「……」
琢磨呂
「それはそうと、この時間どうするよ?」
涼介
「ん?」
琢磨呂
「説明回が始まるまで2時間近くあるぜ」
涼介
「そうだなぁ……食堂でもいく?」
琢磨呂
「NO KANE」
涼介
「あんのねぇ……」
琢磨呂
「わはは、Jokeだ。今日は金がある。食堂はあっちだった か、早速いってみようか」
謎の勧誘員1
「テニス部です! よろしくおねがいします(パンフレット をわたす)」
涼介
「あ、ども(つい受け取ってしまう)」
謎の勧誘員2
「ヨット部です! よろしくおねがいします(涼介の手の上 にあるテニス部のパンフレットの上にパンフレットをかさねる)」
謎の勧誘員3
「XXX部です! よろしくおねがいします(更に重ねる)」
謎の勧誘員4
「XXX部です! よろしくおねがいします(更に更に重ね る)」
謎の勧誘員5
「XXX部です! よろしくおねがいします(更に更に更に 重ねる)」

……
 ……
 ……

謎の勧誘員25
「XXX部です! よろしくおねがいします(パンフレット を重ねる)」
涼介
「はぁはぁはぁ……」
琢磨呂
「わはははははは!」
涼介
「く……1枚めもらったのが運のつきだった」
琢磨呂
「しかし沢山のサークルやらクラブやらがあるもんだな」
涼介
「(ふとパンフレットの山のてっぺんに目をやる) あああ ああ!」
琢磨呂
「あん?」
涼介
「こ……こんなものが……はめられた!」

涼介の手の中にあるのは、ありふれた手書きのサークル勧誘プリントではなく、XX自動車教習場とかかれたパンフレットだった。

琢磨呂
「ううむ……こうやって紛らせておくとわからんものだな。 やるな、教習所のスパイめ!」
涼介
「あ……」
筋肉兄貴1
「ちょっといいかな?(プロテクタを付けたムキムキマッ チョ+長身というすごい迫力で、迫り寄る)」
琢磨呂
「ん……」
涼介
「え?」
筋肉兄貴2
「俺ら、アメフト部やねんけどな(ずいっ)」
琢磨呂
(で、でけーー! ムキムキじゃあああ)
涼介
(き、きんにくだああああああ!)
筋肉兄貴1
「アメフト部どや?」
琢磨呂
「(苦笑しながら) いやぁ、ちょっと運動系はパスなんす よ……あはは」
筋肉兄貴2
「だいじょぉぶや! 練習したらだれかって力つく!」
筋肉兄貴1
「ん、そや。講習会やってるから、来てくれよな」
琢磨呂
「え、そ、そですねー、じゃ、暇があったら行きます、暇 があったら(行きたくなさそーな目線で)」
筋肉兄貴2
「よっしゃ、そしたらここに住所と電話番号と名前かいて くれへんか?」
琢磨呂
「へ?」
筋肉兄貴2
「いやぁ、講習会出れへんかったときの連絡とかやなぁ……」
琢磨呂
「え、あ、いや(電話番号書いたら毎晩電話してきそうやぞ、 こいつら)俺はあんまり……」

琢磨呂、涼介をみる。

涼介
(??)
琢磨呂
(こうなったら……)
琢磨呂
「お兄さん、こいつなんかどーです。俺はちょっと入る気 無いですから」
筋肉兄貴1
「君 "も" 書いてくれるか?」
涼介
「いや、僕もちょっと忙しいですし……」
筋肉兄貴2
「大丈夫や、講習会っていうても、そっちが都合のいい日 にきてくれればいいんや。な、都合のいいとき探して連絡するから電話番号を!(メモ帳をズイッ! っと差し出す)」
涼介
「こんな細い腕でアメフトなんてできませんよぉ(逃げよう とする)」
筋肉兄貴1
(ニヤリ)
涼介
(冷や汗たらり)
筋肉兄貴1
(微笑みながら涼介の腕を「がしっ」と掴む)
筋肉兄貴1
「うちのアメフト部は、いろんな役職が助け合っていきて る。マネージャーって言っても、いろんな仕事があるしやりがいがあるぞ! マネージャーつぅと、雑用がかりってイメージがあるけどな、うちはちゃうで。選手の体調管理とか、練習場所の確保だとか、怪我した選手のリハビリのまねじめんとまでするねんで」
琢磨呂
(それを雑用係というんだ、それを (^^;)
筋肉兄貴2
「俺だって、膝壊したけど、立派に復活してんからな!  こういうのも、マネージャーあってのものだねや。さ、ここに電話番号を……(ずいっ!)」
涼介
「ほ、ほんとに駄目なんです、勘弁してくださいよぉ」
琢磨呂
「友達いたらアメフト部に紹介しますから、ね」
筋肉兄貴2
「よっしゃ、そしたらその時のために電話番号を……」
琢磨呂
「いやー、そう思ったんですがまだ友達できてないんです よ、わははは!」
筋肉兄貴1
「……しゃぁない。ほんなら、またな(兄貴2を従え去っ てゆく)」
琢磨呂
「ご……強引な勧誘だったな」
涼介
「……腕掴まれたら、びびるよ、まじ」
琢磨呂
「あのプロテクター付けてると、自衛隊勧誘の兄ちゃんよ りも迫力あるぜ、まったく」

食堂へと進む琢磨呂と涼介の前方に、アメフト部のプロテクター男が何人かたむろしている。

涼介
「あ、アメフト部だああ! 避けよう、岩沙。アメフト部 恐怖症になっちゃったみたいだ……」
琢磨呂
(いかん……こりゃ相当効いたみたいだな。おそるべしア メフト部!)

背後からがしっ! と肩をつかまれる2人。
 2人組みのさっきとは別のマッチョなお兄さんが、
 真紅のプロテクタをつけてほほえんでいる……。

筋肉兄貴3
「アメフト部やけど……」
琢磨呂
「あ、アメフト部の方ですか! さっき他の方に勧誘され て、もう講習会の予約して電話番号書いたんすけど……」
筋肉兄貴4
「あ……そう? ありがとぉ。ほんならまたなー(去って ゆく)」
琢磨呂
「……危機一髪」
涼介
「アメフト部嫌いアメフト部嫌いアメフト部嫌い……(ぶつ ぶつ)」
琢磨呂
「(涼介を遠目にみながら)……おそるべしアメフト部!」



連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作のTRPGと創作“語り部”総本部