エピソード437『遭遇、スカロマニア!』


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エピソード437『遭遇、スカロマニア!』

学校帰り、フラナ・佐古田・本宮のいつもの三人組が歩いていた。

火虎左衛門
「ふぅ暇だな、季節柄つい気が緩む。いかんいかん」

偶然、前方にスカロマニアを発見する三人…

フラナ
「あ」
本宮
「…なんだ、ありゃ…」
佐古田
「……」

おもむろに火虎左衛門を指差すフラナ。

フラナ
「もとみーっ!見て見てぇスカロマニアだぁ」
本宮
「しっ!こら聞こえるだろう」
佐古田
「……(スカロマニアを凝視する)」
フラナ
「ねぇねぇほらぁ、かっこいいっ!」
本宮
「だぁ、指差すんじゃない!目ぇあわすな」
フラナ
「えーなんでぇ」
本宮
「いいから、関わるんじゃない。ほら佐古田も」
佐古田
「……(凝視したまま)」
本宮
「おい、佐古田?」
佐古田
「…う…」
本宮
「なんだ?」
佐古田
「…美しい…」
本宮
「………おまえ…正気か?」
フラナ
「あー、いっちゃうよぉ(てててて)まってぇ」
本宮
「こら、追いかけるんじゃないっ」
火虎左衛門
「ん? なんか呼ばれたような気が……
(耳をそばだてる)
 むぅ、着ぐるみは耳がふさがっていかん」
フラナ
「まってぇ、スカロマニアぁ(てててて)」
火虎左衛門
「……やっぱり呼んでるみたいだな」

振り向く火虎左衛門
 すると、目を輝かせて見つめているフラナ、
 無言のまま凝視する佐古田、
 あくまで目を合わそうとせず、
 フラナと佐古田の服の袖を引っ張っている本宮。

火虎左衛門
(誰だ? こいつら?)
フラナ
「ねぇねぇ、スカロマニアだよねぇっ!」
火虎左衛門
「え? あ、ああ、そうだが何か?」
本宮 
「(間髪入れずに)何でもありませんっ!!
 さ、帰るぞフラナ、佐古田」
(二人の袖を引っ張る)
フラナ
「えー、いやだよぅ……
 スカロマニアとお話するのっ」
佐古田
(美しい……
 片側しかない歯といい、左右非対称のボディといい、
 なんとも頼りないフォルムが儚げでまた良い……)

おもむろにギターを取り出し……
 Amusementive Crime(*1)を弾きはじめる。

本宮 
「だぁ、やめろよ、こんな往来の真ン中でぇ」
火虎左衛門
「(本宮に)おい、無理に邪魔してやるなよ」
フラナ
「そうだよ、イヤならもとみーだけで帰ってよぉ」
本宮 
「いーや、3人とも帰るの(袖をぐいぐい引っ張る)」
フラナ
「いやだぁ、たすけてスカロマニアぁ」
火虎左衛門
「分かった、フラナ少年!!
 ってワケで、いくぞ、もとみーとやら!!
 スカロスライダーっ!!」
SE 
(ずざざざざざ……)
本宮 
(垂直ジャンプで躱す)
「あ、危ないじゃないですか!!
 ……って、あれ? いない……」
フラナ
「もとみー、上だよっ!!」
火虎左衛門
(おいおい、どっちの味方なんだ?(苦笑))

ハイジャンプで本宮の真上に跳んだ火虎左衛門。
 そのまま急降下して、本宮の肩をつかんで逆立ちする。

本宮 
「!!!」

その状態から前に倒れかかり、
 本宮の肩をつかんだまま彼の股座をくぐる。
 火虎左衛門の体重の動きに耐えられず前のめりに倒れかかる本宮。
 すでに彼の肩から手を放した火虎左衛門。
 うつぶせに倒れた本宮の真上に躍り出ている。
 そこからたたんだ膝を伸ばし本宮の背中を踏み……

火虎左衛門
(やりやがる、横に転がって踏みつけを躱すか……
 わざわざ足を広げて外してやる必要もないな)
「スカロトカチぇ〜フ!!」

だん!!
 思いっきりアスファルトを踏みつける!!

佐古田
「ジャ〜ンっ!!(おしい!!の音色)」
本宮 
「こ、殺す気かぁっ!?(ぜいぜい)」

よろよろと立ち上がる本宮。

火虎左衛門
「遊びは終わりだ、スカロドリぃ〜ム!!」
フラナ
「そのセリフ悪役みたーい」
本宮 
(もう、怒った!!
 腕を極めてブン投げてやるっ!!)

1発、2発、3発…… と繰り出される攻撃をさばき続ける本宮。
 火虎左衛門の攻めがすべて寸止めであるために
 タイミングが狂ってうまく腕をとることができない。
 4発、5発、6発…… すべてさばき続ける……

本宮 
(ようし、変則的な攻撃もちょっとは慣れてきたぞ……
 次こそつかんでやる)

ラストになる7発目の攻撃…… のところで
 ふいに両腕をクロスさせる火虎左衛門。

本宮 
「???」
火虎左衛門
「ファイナル!!」

クロスされた腕に赤い光が集まる……
 そして爆発音と赤光の暴走!!

本宮 
「うわわわぁ(尻餅をつく)」
フラナ
「わーっ、もとみーーっ!!」
佐古田
「ジャジャカジャ〜ン!!(うおーーーーの音色)」

………………

火虎左衛門
「……驚いたか?」
本宮 
「え?」

爆発も光も、火虎左衛門の操炎術によるもので
 殺傷力ゼロの爆炎を起こしたものだった。

火虎左衛門
「やるなぁ、俺の演武をアドリブで躱すなんてよぅ
 カッコよかったぜ、もとみー
 ……なぁ、フラナ」
フラナ
「うんっ、もとみーってスゴくカッコよかった!!」
佐古田
「ジャカジャカジャ〜ン!!(Excellent!!の音色)」
本宮 
「いやだよ、恥ずかしいマネなんて。
 ほら、帰るぞ二人とも」
火虎左衛門
「ほほう、恥ずいカッコの俺と組み打ちしたのは
 どこのどいつだ?」
本宮 
「うっ!!(汗)」
火虎左衛門
「あきらめな、オマエももう恥ずいヤツらの仲間入り」
本宮 
「うう……(泣)
 (まさか、最初からこうするつもりだったのか?)」
火虎左衛門
「しかし、このカッコもしてみるもんだな。
 面白いヤツらに会えるんだからな(マスクを脱ぐ)」
フラナ
「あ゛〜〜っ!!」
本宮 
「どうした? フラナ」
フラナ
「この人、ベーカリーで見たことあるっ!!」
火虎左衛門
「ん? ベーカリーってベーカリー楠か?」
フラナ
「うん!」
火虎左衛門
「そっか、実は結構会っていたんだな……
 よし! そういうことなら
 オマエらにとってもいいものをやろう!!(がさごそ)」

スカロスーツの上半身の内ポケットから紙切れを3枚取り出す。

火虎左衛門
「再来週の日曜日にあるアクションショーの入場券だ!!」
(本当は環たちに渡すつもりだったんだが受験だからな、
 あいつのためにも邪魔になるよーなマネはできねぇや)
フラナ
「え、いいの? 本当にもらっていいの?」
佐古田
(無言で券を手にとってそれを見詰める)
火虎左衛門
「おう、いいぞ。ただし…… 絶対見に来いよな」
フラナ
「うん、行くっ、ぜったいにいく!!
 ね、もとみー?」
本宮 
「アクションショーなんて久しぶりだなぁ」
フラナ
「どうもありがとう、……えーっと、
 なんて名前だったっけ?」
火虎左衛門
「(ぎくっ!!)い、今は西小山三郎(*2)って言うんだ」
フラナ
「そーじゃなくて、お兄ちゃんの名前」
火虎左衛門
「ああ、炎野って言うんだ」
フラナ
「そっかぁ、ありがとう炎野さんっ!」
火虎左衛門
「お、おう(よ、よかった名字だけですんで)
 じゃ、俺、用事があるんで……またな」

(*1) スカロマニアステージのBGM
 (*2) スカロマニアの正体、うだつの上がらないサラリーマンあっという間に日曜日、アクションショー当日。

フラナ
「るーるるーるるん(ぴょんこぴょんこ)」
本宮
「こら、落ち着けよ」
フラナ
「だぁって楽しみなんだもんっ」
佐古田
「じゃぃぃぃぃん(楽しみだぁぁぁの音色)」
本宮
「はぁぁ(溜め息)…まぁしょうがないか」
  一方、その頃。食休み中のアクションショー出演者達
火虎左衛門
「さぁて、そろそろ気合いれていくぞ」
メンバー1
「う…(うずくまる)」
火虎左衛門
「おい、どうした?」
メンバー1
「っ…は、腹が…てっててて…痛」
火虎左衛門
「大丈夫か?おい、誰か医者呼べ医者!」
メンバー2
「どうしたんですか?炎野さん」
火虎左衛門
「こいつが急に腹痛いって言い出して」
メンバー1
「痛っっっ…」
メンバー2
「しっかり、救急車呼びましょう」
程なく運ばれていく男。残されたメンバー。

火虎左衛門
「大丈夫か、あいつ」
メンバー2
「でも、どうしましょうか…代役たてないと…」
火虎左衛門
「代役立てるしかねぇな」
メンバー2
「代役って、改造怪人の代理…大変ですよ」
火虎左衛門
「ううむ」
メンバー2
「ある程度、アクションがこなせて、タッパがあって、
体力のある人でないと代役はつとまりませんよ
私らだとサイズが合いませんし…どうしましょ」
火虎左衛門
「ううぅ、まずいなぁ」
メンバー2
「困りましたね、子供達待ってるのに…」
火虎左衛門
「参った…誰か適役はおらんか…」
悩む一同。そこへ…

フラナ
「炎野さんっ(ひょいっ)」
火虎左衛門
「おおう、お前はフラナ少年。お前どっから現れた」
フラナ
「へっへーん、ナイショ!おもわず様子見に来ちゃった」
佐古田
「じゃじゃじゃーん(こんにちはぁぁぁの音色)」
火虎左衛門
「フラナ少年、すまんが、少々取り込んでいてな」
本宮
「あ、いたいた…すいません炎野さん。フラナの奴が…」
火虎左衛門
「!もとみー」

はた、と本宮に目を留める炎野。タッパはある…アクションもできる…立証済みだ、体力も…そこそこありそうだ。

火虎左衛門
(こいつはいける!)
本宮
「?どうしたんですか炎野さん」
火虎左衛門
「あー、もとみー。
 ちょぉーっと、こっちに来い(手招き&怪しい笑顔)」
本宮 
「なんか、イヤな予感がするけど…… なんですか?」
火虎左衛門
「オマエを本アクションショーの
 改造怪人役に任命する。喜べ」
本宮 
「はいはい……
(なげやりに)ばんざーい
 ……これでいいですか? って…………
 なんだってぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
火虎左衛門
「聞いての通りだ」
本宮 
「いやですよ」
火虎左衛門
「……」
本宮 
「まっぴらごめんです」
火虎左衛門
「……
 げんまいれいちっ!!」

燃え盛る火球を本宮に放り投げる。
 とはいえ温度は約40度で燃え盛る炎は視覚的なモノなので害はない。

本宮 
「あちちちちちちち」
火虎左衛門
「と、いうわけで今回もとみーは改造怪人役。
 オーケー? フラナ少年??」
フラナ
「いいよ(あっさり)」
佐古田
「じゃじゃかじゃん(フラナに同じの音色)」
火虎左衛門
「よし、決定」
本宮 
「僕自身は了解してないですよぉ!!
 って、あちちちちちちちち」
火虎左衛門
「(炎を消してシリアスな表情になる)
 オマエ、本当の理由が聞きたいのか?」
本宮 
「当たり前ですっ!!」
火虎左衛門
「実は今日その役をするはずだった人が倒れてな……
 だから、その代役を探してたんだ。
 俺の眼ではオマエが一番の適役だったってわけだ」
本宮 
「だからってなんで僕が……」
火虎左衛門
「倒れた人が言ってたぜ……
 子供たちが楽しみに待っているのにこんなことで……
 ってな」
本宮 
「……」
火虎左衛門
「俺も…… いんや俺達も同じだ、こんなことでショーを
 中止にするなんて耐えられねぇ…… この日を
 楽しみにしてきた子供たちにそう言い訳するんだ?」
本宮 
「炎野さん……」
フラナ
「もとみー、やってあげてよぅ」
佐古田
「……(無言で本宮に訴えかける)」
本宮 
「分かりました、やりましょう!!」
火虎左衛門
「へへ、ありがとよ!
 悪ぃが、1時間しかねぇんだ。
 30分ほどで基本叩き込むから覚悟してくれ」



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