エピソード443『金魚鉢ぱふぇツアー』


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エピソード443『金魚鉢ぱふぇツアー』

それは、尊の失言から始まった。

「ジャンボパフェ、っていうメニューがどこかにあったんで
すよね」
居眠りをしていた夏和流が、ぴくりと身動きした。

夏和流
「ぱふぇ?」
スナフキン同好会の面々も、興味を持ったようだった。

フラナ
「ぱふぇ(喜)」
本宮
「パフェねぇ…」
佐古田
「じゃじゃん(ぱふぇ〜)」
豊中
「聞いたことあるな。大学のサークルの連中が食べに行った
とか言っていたが………」
居候
『蔵王とか言う店だぞ、お若いの。若いくせに記憶力がスカ
になっとるな』
豊中
『くそやかましい』
フラナ
「行ってみたいなぁ」
夏和流
「僕も行きたいです」
居候
『わしも行きたいぞ』
豊中
『マジかよ………(汗)』
「いいですね、行きましょうか(笑)どうです?」
豊中は、考えた。居候は、考えなかった。

居候
『行くしかないぞ、お若いの。美人さんも一緒だしな』
豊中
「それしか考えられんのかおまいわ………」
「もう一人と意見が違うみたいね(笑)」
豊中
「ま〜ね………食うのは俺なんだがなあ(ため息)」
居候
『行くというまで騒ぐぞ』
スナフキン同好会の3人も、乗り気のようだった。

豊中
「わかった、行こう。場所は俺が確認してくるよ。で、
いつ行く?」
夏和流
「春の講習があるから、その後がいいな」
「四月の始めはどう?」
本宮
「そのころなら」
話はその場で決定したが、誰かこのほかに犠牲者が欲しい豊中だった。そして、思いついた。例の風水屋。電話番号は、控えてあった。

豊中
「お〜い、十、生きてるか」
十 
『生きとるわい。何の用だ?』
豊中
「うむ。実はかくかくしかじか」
『あのな、妙な説明はせんでくれ。で、なんだ』
豊中
「ジャンボパフェツアーをする。どうだこないか」
十は、考えているようだった。

十  
「(パフェかぁ。甘いものここ最近御無沙汰だなぁ。幸い珍
しく金はあるんだよな。けどなぁ、大の男が外でニコニコ笑
って幸せそーに甘いものなんて食えんしな)」

十は比較的旧幣な師匠と父親に育てられた。
  思えばふびんな少年時代であった。年に一二回食べる甘いものはお供えの固くなりかけたおはぎやらくがんであり、遠足の時は周りの目を気にして、本当は小枝のチョコレートを食べたかったのを我慢してカンパンをかじっていた。
  山をおりてはじめてシュークリームを食べた時、どんな辛い修行の時にも流れなかった涙が流れるのを感じた。
 

十  
「食べたいなぁ(しみじみ)」
豊中 
「一応、一ヶ月先を予定しているんだが」

だが、

十  
「(だ、駄目だ。男としてこの世に生を受け、敷居をまたげ
ば常に外に七人の敵を持つ男児たるものが、パフェ何かを食
べて甘くて幸せな気持ちになんぞなってはならんのだ。そう
だ、十。お前は男だ、質実剛健なる魂のためには己を甘やか
してはならん、そう、チョコレートパフェや、ミルフィーユ
や、季節の果物のタルトや、ダークチェリーのペストリーな
んぞは婦女子の食べるもの、男は黙って干し葡萄と氷砂糖で
我慢だ!)す、済まん豊中。お、俺はその日生涯の宿敵と戦
わねばならない、いけそうもない」
豊中
「生涯の宿敵ぃ〜?おまえのことだど〜せまたこないだ食い
負けた食べ放題ピザの食いくらべかなんかだろ〜が」
「………いや、断じてそんなことはないぞ」
豊中
「そ〜かそ〜か、じゃあだれかのうちでセーラーソイルのビ
デオでも見るのか」
「違〜う!」
豊中
「ほ〜ほ〜う、そいつは残念、こないだのケーキ食べ放題も
来んかったな。いや残念だ、あのカスタードクリームは旨か
った。生クリームはスカ以下だったが、程良い甘さのクリー
ムと程良い焼き加減のパイが紅茶に実に良くあっていたのだ
が、そうかそうかまた甘いものを食いに行っている暇がない
のか残念だ」
十は垂れそうになっているよだれをこっそり拭った。

「(いやいや、だまされてはいかん。カスタードクリーム入
りのパイなど軟弱男以外は食べてはいかんのだ。真の男子た
るもの…)」
豊中
「また、暑っ苦しいこと考えてるだろ」
「なんでわかった……じゃない、そんなことは断じて考えて
いないぞ」
豊中
「(エンパス相手にそ〜ゆ〜下手な嘘をつくか?)……わか
った、頑張って戦ってこい」
電話が切れた後、豊中はにやにや笑っていた。しばらくの間、からかうネタに苦労しないで済みそうだった。電話をしたかいがあったというものだった。
  十は電話をおきしばらく天を仰ぎ泣いた。
  と、その時彼の頭に現状を打破する天啓が宿った。
  後日、喫茶店「蔵王」の前の集合場所に、豊中たちは十二、三歳の男女二人をつれた十を発見することになる。

「いやあ、親戚の子ども預っちゃってさ、生涯の宿敵も後で
いいって言うし、来ちゃった」
少しつり目の男の子が、傍らの女の子に耳打ちする。

キノト
「パフェのために式神だしにするかな、普通」
キノエ
「いろいろ複雑なのよ、ご主人は」
夏和流の場合、どうせならみのるも連れていこうと思った。いつも学校であっているので問題ない。

夏和流
「ねぇねぇ、みのるもいかない?」
みのる
「どこへだ?」
夏和流
「でっかいぱふぇが食べられるんだって」
みのる
「パフェ?」
夏和流
「そうそう。金魚鉢サイズなんだって」
みのる
「俺はいかない」
夏和流
「えー。どうしてぇ?」
みのる
「金の無駄だ」
夏和流
「一緒にいこうよぅ。いこうよいこうよー」
みのる
「絶対ダメだ」
夏和流
「……ぶー。いいもん、食べなかったことを、後悔させる
ようなお土産話しちゃうもーん」
みのる
「……好きにしろ」
こうして、参加者は増えなかった(^^;富良名宅にて相談中。

本宮
「パフェかぁ…俺はあんまり食べれんぞ」
佐古田
「…パフェより酒(キッパリ)」
フラナ
「えー、ぱふぇツアーいかないのぉ」
三人だべってるところにひょっこり瑞希ねえちゃん登場。

瑞希
「パフェですって?」
フラナ
「うわわわわわぅ、み、瑞希ねえちゃぁん(わたくた)」
本宮
「あ、み、みっ瑞希さん。あ、お邪魔してます(おたおた)」
佐古田
「じゃじゃん(…こっこっこんにちは瑞希さんっの音色)」
瑞希
「ねぇねぇパフェツアーってどういうことよぉ?」
本宮
「いや、あの、俺達は別にっ(ひきつった表情)」
フラナ
「えっえっえっとベーカリーの人に誘われて、えっと
(かくかくしかじか)」
話を聞きいて、じーっと三人組みを見つめる瑞希。

一同
(出るぞ…必殺おねだり攻撃が…)
瑞希
「私もパフェ食べたいっ!たべたい!、私も連れてってよぉ」
本宮
「あっあの、そのあの瑞希さん落ち着いてっ」
瑞希
「ぱふぇつあー、私も行きたい、いきたい、いきたいっ。
ずるいわよ私をのけ者にして」
本宮
「いっいえ、違いますっ、そんなつもりは断じてないですっ
(焦り)」
瑞希
「じゃっ、私も行っていいのね(にこ)」
一同
「うっ…」
こうして参加者が一人増えた(笑)そして、ベーカリー楠。ロングヘアに長身、ラフな格好のおねーさんが入っていく。

瑞希
「こっんにっちはっ、えー如月さんっていますかぁ」
「え?はい、私です。あの、あなたは」
瑞希
「斎藤瑞希でぇす。どーもよろしく」
「斎藤さん?」
フラナ
「こんにちはぁ尊さん。えー、僕の姉ちゃんなんです」
瑞希
「結婚して名字違うんです。どうも、いつも弟がお世話にな
ってます」
「フラナ君のお姉さんですか、よろしく斎藤さん」
瑞希
「瑞希でいいですよ。所で、私も例のパフェツアー参加して
もいいですか」
「もちろんですよ。大勢の方が楽しめるし。あと私も尊でい
いですよ」
瑞希
「じゃ遠慮なく、尊さん。お店の場所とか聞きたいなっ」
わきあいあい、と談笑する二人。

本宮
「あの、尊さん」
「何?」
本宮
「俺達、ちょっと忙しくなりそうなんで、今回のツアーは見
送ります」
佐古田
「じゃじゃじゃん(右に同じの音色)」
フラナ
「僕も」
「そう、残念ね」
瑞希
「なんだ、あんた達こないの?つまんないな」
本宮
「はい、あの、又の機会に」
こうしてスナフキン愛好会は逃げた(笑)

夏和流
「へーフラナのお姉さん、けっこーきれいな人だな、
ちょっとラッキーかも」
こうして瑞希のツッコミ犠牲者は決定した(爆)そして、役者はそろった。

夏和流
「それじゃあ、いきましょうか」
豊中
「蔵王へは少々歩くぞ」
「え〜歩くんですかぁ?」
夏和流
「歩くのがいやなら、空を飛ぶとか……」
一同
「できないって」
夏和流
「冗談です(^^;」
瑞希
「おもしろくないっ(げしっ)」
夏和流
「い……痛い……(涙目)」
キノト
「兄ちゃん、大丈夫?」
キノエ
「痛いの?」
夏和流
「ご心配ありがとう……大丈夫じゃないかも(ふらっ)」
瑞希
「男の子がそんなんじゃダメでしょう(ぐりぐり)」
夏和流
「あうーっ(泣)」



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