吹利大学にも、もちろん単位というものは存在する。
そして、工学部学生であっても、語学の単位は必要なのであった。
しかし。
- SE
- ざあ〜(血の気の引く音)
- 豊中
- 「ど〜した、一」
紙切れ一枚を手に、たたずむ一。場所は教務科の前だった。
- 一
- 「うむ。単位が足りん」
- 豊中
- 「ほ〜。おまえさんの学部も楽じゃ〜ないんだな」
他人事のように言って、豊中は教務科に消えた。
そして五分後。
学食で素ラーメンをすすっている一の前に、豊中が現れた。
- SE
- どよ〜ん
豊中の顔におどろ線。
- 一
- 「ど〜した豊中」
- 豊中
- 「うむ。ドイツ語がな」
- 一
- 「お前さんは語学は得意だろ〜が」
- 豊中
- 「それでも落した。やばい」
- 一
- 「ドイツ語の何を落したんだ?」
説明しよう。ドイツ語と言っても、豊中は本来とっくに語学の単位をとり終えていなければならない3回生(春になったので4回生)である。で、こういう
怠惰な)学生にいいかげん愛想をつかしている大学当局は、単位を落した学生どもにはどの講義をとっても良いから単位を揃えろと言う指示を出しているのであった。
- 豊中
- 「うむ。作文だ」
- 一
- 「そりゃ落ちる」
- 豊中
- 「教官は仏で、レポート提出だけで単位が来るはずだった
んだがなあ……」
- 一
- 「……なぜ落ちる」
- 豊中
- 「さっきと言ってることが逆だぞ一。うむ、あれは我なが
らできのいい文章だったんだが」
- 一
- 「中身は何だ」
- 豊中
- 「おいしいカレーの作り方、だ」
- 一
- 「そりゃ落ちるわぁっっ!」
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