某日、瑞鶴 開店前。
- 店長
- 「花澄、家から手紙が来たけど、親父から伝言があって」
- 花澄
- 「はい?」
- 店長
- 「年金は、こちらでは何の手続きもしとらんから、そちら
で適当に払っとくように、だと」
- 花澄
- 「……年金?」
- 店長
- 「年金」
- 花澄
- 「何で年金?」
- 店長
- 「何でって、20才以上強制加入のやつがあるだろうが」
- 花澄
- 「でも、入ってない、と思うけど……」
- 店長
- 「……(呆)。昭和63年時、お前何やってた?」
- 花澄
- 「学生。……ああ、そう言えばあの時、みんなで年金に加
入するだのなんだのって話したっけ」
- 店長
- 「で?」
- 花澄
- 「入れるわけ無かったもの。先立つものは無かったし、あ
の時はまだ強制加入じゃなかったし」
- 店長
- 「その後、強制加入になった時には手続きせんかったのか?」
- 花澄
- 「……遠いお空の下にいたから」
- 店長
- 「成程(留学しとったな、そういや) ……と、いうことは」
- 花澄
- 「(何かやな予感)」
- 店長
- 「わかった。今日はバイト休みにしてやるから、今すぐ役
所行って加入してこい」
- 花澄
- 「役所って……どこ?」
- 店長
- 「……(苛) ……自分で調べて、行ってこんか」
- 花澄
- 「う……(道には自信無いし、窓口って苦手だし)」
- 店長
- 「はよせいっ!!」
- 花澄
- 「はいっ!」
ぱたぱたと、出て行きかける花澄の背中に向かって
- 店長
- 「長期計画で、一人暮らしやるって、言ってたよなあ(しみ
じみ)」
- 花澄
- 「う……」
- 店長
- 「楽な道選ぶんなら、それにくっついてくる義務ぐらい覚
悟の上だよなあ」
- 花澄
- 「義務?」
- 店長
- 「年金受け取りの条件は、最低25年間払い込みだ。しっか
り稼げ」
- 花澄
- 「……いってきまあす」
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