それはこんな一言から始まった……。
- 尊
- 「……たまには美味しいお酒、飲みたいなぁ(ぼそ)」
カウンターでぼんやりと頬杖を突きながら一人ごちる。
- 花澄
- 「どうしたんですか? らしくも無い」
- 尊
- 「え? いえ……別に何も(苦笑)ただ、最近色々あって……
ちょっと美味しいお酒でも飲みたいなって思ったんです」
- 花澄
- 「尊さん、お酒お好きなんですか?(嬉々)」
- 尊
- 「ええ……実は好きなんです(照)」
- 花澄
- 「じゃ、一緒に飲みません? この前久保田の碧寿買った
んですけど一人で飲むのも、勿体無いなって思ってたんです(にこにこ)」
- 尊
- 「あ、美味しそう……いいですね(笑顔)」
二人のやり取りを脇で聞いていた瑞希。
- 瑞希
- 「はい、はーいっ私も混ぜてっ」
- 花澄
- 「あら? えっと、どなたでしょう?」
- フラナ
- 「先に自己紹介してからにしなよぉ、瑞希ねーちゃん」
- 花澄
- 「あらフラナくんのお姉さん?」
- 瑞希
- 「どもっ、姉の斎藤瑞希です(フラナの頭ぐりぐり) よろ
しく」
- 花澄
- 「こちらこそ(あ、綺麗)」
- 尊
- 「よろしく、瑞希さん。ふぅん……(瑞希をまじまじと見
る)ねぇフラナ君、奇麗なお姉さんがいて自慢でしょ(笑)」
- フラナ
- 「もうちょっとお淑やかならっ……ぐえっ」
- 瑞希
- 「何か言った? フラナ(ぎゅうぅ)」
フラナの首に見事に決まるスリーパー・ホールド。
- フラナ
- 「ね、ねーちゃん! チョーク! チョーク!」
- 尊
- 「瑞希さんも結構いける口なんですか?」
- 瑞希
- 「結婚前はしょっちゅう父と晩酌してましたから」
- 尊
- 「お父さんと晩酌、か……いいですねそういうの。まぁ、
たまには女の子だけで飲むのいいか。……あ、でも少し足りないかな、お酒もつまみも」
- 瑞希
- 「3人だとねぇ……」
- 尊
- 「よし! この際です、あたしの取っときを出しましょう!」
- 花澄
- 「とっとき?」
- 尊
- 「期間限定販売『真澄・大吟醸』です(にこ)」
- 花澄
- 「あら、美味しそう……でも良く手に入りましたね」
- 尊
- 「種を明かせばあたしの実家の近所に真澄の蔵元が有るん
です、それで(にこにこ)」
- 花澄
- 「なるほど」
- 瑞希
- 「あとはつまみですね」
- 花澄
- 「じゃ、私作ってきます(嬉々)」
- 瑞希
- 「え、いいんですか?」
- 花澄
- 「こういうの、好きなんですよね。女の人に食べてもらう
と必ず観想言ってくれるから、とても参考になるんです」
- 尊
- 「成程。それじゃ花澄さんお願いしていいですか?」
- 花澄
- 「はい。あ、お二人ともこれは食べられないって言うもの、
あります?」
- 瑞希
- 「私は別にないですね」
- 尊
- 「私も、昔から好き嫌い無いのが自慢ですから(笑)」
- 花澄
- 「じゃ、何か作ってきますね」
- 尊
- 「えっとじゃぁ会場は、あたしの部屋でどうです?」
- 花澄
- 「いいんですか? お邪魔しちゃって」
- 尊
- 「どうせ気楽な一人暮らしだし、2、3人なら泊まれます
から、気兼ねなくどうぞ」
- 瑞希
- 「お泊りで飲み会〜(喜)」
- 尊
- 「それと、つまみも作って運ぶんじゃ大変ですからあたし
の部屋で作りませんか? みんなで(笑)」
- 花澄
- 「じゃぁ……そうしましょうか(にこにこ)」
- 尊
- 「ところで瑞希さん」
- 瑞希
- 「はい?」
- 尊
- 「フラナ君……大丈夫……ですか?(汗)」
- 瑞希
- 「あ……(汗)」
- フラナ
- (きゅ〜)
オチたフラナ、不幸である。
『FLOWER SHOP Miko』二階、尊の部屋----------------------------------
というわけで、尊の部屋。
酒のツマミを作るため台所に立つ三人。
- 尊
- 「えーと、昆布昆布っと……あ、あった」
- 花澄
- 「(じーっと手元を覗き込む)……丁寧ですね、やっぱり」
- 尊
- 「はい?」
- 花澄
- 「だしの取り方。うちだと、そこでかつお節入れっぱなし
で済ませちゃうんですよね」
- 尊
- 「私も、一人だったらここまでやりませんよ(笑)」
- 瑞希
- 「みんなで食べると思うと、ね。やっぱり力が入る」
- 花澄
- 「でも、嬉しいなあ(しみじみ)」
- 瑞希
- 「何ですか、急に(笑)」
- 花澄
- 「もう、この歳になると、友人って結婚して子供がいるん
ですよね。そうすると泊りがけって誘えないでしょ」
- 瑞希
- 「そっかあ。確かに子供がいたらちょっと無理かも」
- 花澄
- 「だから、久しぶりだな、って思って(にこにこ)」
- 瑞希
- 「そうですよね、そう考えると何年かぶりだなぁ女同士の
飲み会って」
- 尊
- 「みんな都合がつかなくなってきちゃうし」
- 花澄
- 「なんか嬉しくなってきちゃいますね(にこにこ) あ、手
伝いますよ」
- 尊
- 「平気ですよ、花澄さん達はお客さんなんだから」
- 瑞希
- 「お泊り飲み会にお客さん扱いははナシ! 私も手伝うっ!」
- 花澄
- 「そうですよ(にこ) ちょっと包丁借りますね(とんとん
とん)」
- 尊
- 「へー、鮮やかですね花澄さん(感心)」
- 瑞希
- 「いいなぁ二人とも、お料理上手で」
- 花澄
- 「そんな(照れ) 瑞希さんも手慣れてますよ」
- 尊
- 「やっぱり手際の良さは負けます、さすがは主婦ですね」
- 瑞希
- 「えへへ、そうかな。でも私の場合、料理はできても、豪
快というか大雑把というか……こういう言い方も変だけど、なんか女らしくない料理だなぁって思うんですよ。料理って性格出るから」
- 尊
- 「あ、いえてる! 性格でますよね」
- 花澄
- 「そうですね(にこ)」
- 瑞希
- 「そうだ、わたし、お部屋の方を準備しときますね、こっ
ちですか?」
トコトコと引き戸に近づき手を掛ける瑞希。
- 尊
- 「えっ? あっ! そっちは!」
がらっ。
- 尊
- 「開けちゃった……(汗)」
- 瑞希
- 「……すっごーい……」
薄いピンクとグレーで統一された部屋の中、周りのコンポやベッドよりも存在感を持ち『でんっ!』と部屋の中央に鎮座ましましているクジラの巨大ヌイグルミ。
他にも棚、ベッドの上とあっちこっちにヌイグルミがいるが、以前花澄から貰ったティディベアはベッドの枕元にいた。
- 尊
- 「そっちは……あたしの……部屋……なんです(赤面)」
- 瑞希
- 「何か迫力のある……クジラさんですね(汗)」
- 花澄
- 「(真剣な面持ちで)……尊さん」
- 尊
- 「は、はい。何でしょうか」
- 花澄
- 「ぬいぐるみ、御好きなんですね」
- 尊
- 「その……見てのとおりです(赤面)」
- 花澄
- 「それなら、また、引き取っていただけますね……ああ助
かった」
- 尊+瑞希
- 「は?」
- 花澄
- 「この前、特大のクマの型紙手に入れたんですけど、作っ
ても置くとこ無いから作れなかったんです。よし、作る!
握り拳)」
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