エピソード450『華やかなる呑み会』


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エピソード450『華やかなる呑み会』

ある日のベーカリー楠

それはこんな一言から始まった……。

「……たまには美味しいお酒、飲みたいなぁ(ぼそ)」

カウンターでぼんやりと頬杖を突きながら一人ごちる。

花澄
「どうしたんですか? らしくも無い」
「え? いえ……別に何も(苦笑)ただ、最近色々あって…… ちょっと美味しいお酒でも飲みたいなって思ったんです」
花澄
「尊さん、お酒お好きなんですか?(嬉々)」
「ええ……実は好きなんです(照)」
花澄
「じゃ、一緒に飲みません? この前久保田の碧寿買った んですけど一人で飲むのも、勿体無いなって思ってたんです(にこにこ)」
「あ、美味しそう……いいですね(笑顔)」

二人のやり取りを脇で聞いていた瑞希。

瑞希
「はい、はーいっ私も混ぜてっ」
花澄
「あら? えっと、どなたでしょう?」
フラナ
「先に自己紹介してからにしなよぉ、瑞希ねーちゃん」
花澄
「あらフラナくんのお姉さん?」
瑞希
「どもっ、姉の斎藤瑞希です(フラナの頭ぐりぐり) よろ しく」
花澄
「こちらこそ(あ、綺麗)」
「よろしく、瑞希さん。ふぅん……(瑞希をまじまじと見 る)ねぇフラナ君、奇麗なお姉さんがいて自慢でしょ(笑)」
フラナ
「もうちょっとお淑やかならっ……ぐえっ」
瑞希
「何か言った? フラナ(ぎゅうぅ)」

フラナの首に見事に決まるスリーパー・ホールド。

フラナ
「ね、ねーちゃん! チョーク! チョーク!」
「瑞希さんも結構いける口なんですか?」
瑞希
「結婚前はしょっちゅう父と晩酌してましたから」
「お父さんと晩酌、か……いいですねそういうの。まぁ、 たまには女の子だけで飲むのいいか。……あ、でも少し足りないかな、お酒もつまみも」
瑞希
「3人だとねぇ……」
「よし! この際です、あたしの取っときを出しましょう!」
花澄
「とっとき?」
「期間限定販売『真澄・大吟醸』です(にこ)」
花澄
「あら、美味しそう……でも良く手に入りましたね」
「種を明かせばあたしの実家の近所に真澄の蔵元が有るん です、それで(にこにこ)」
花澄
「なるほど」
瑞希
「あとはつまみですね」
花澄
「じゃ、私作ってきます(嬉々)」
瑞希
「え、いいんですか?」
花澄
「こういうの、好きなんですよね。女の人に食べてもらう と必ず観想言ってくれるから、とても参考になるんです」
「成程。それじゃ花澄さんお願いしていいですか?」
花澄
「はい。あ、お二人ともこれは食べられないって言うもの、 あります?」
瑞希
「私は別にないですね」
「私も、昔から好き嫌い無いのが自慢ですから(笑)」
花澄
「じゃ、何か作ってきますね」
「えっとじゃぁ会場は、あたしの部屋でどうです?」
花澄
「いいんですか? お邪魔しちゃって」
「どうせ気楽な一人暮らしだし、2、3人なら泊まれます から、気兼ねなくどうぞ」
瑞希
「お泊りで飲み会〜(喜)」
「それと、つまみも作って運ぶんじゃ大変ですからあたし の部屋で作りませんか? みんなで(笑)」
花澄
「じゃぁ……そうしましょうか(にこにこ)」
「ところで瑞希さん」
瑞希
「はい?」
「フラナ君……大丈夫……ですか?(汗)」
瑞希
「あ……(汗)」
フラナ
(きゅ〜)

オチたフラナ、不幸である。
 『FLOWER SHOP Miko』二階、尊の部屋----------------------------------
 というわけで、尊の部屋。
 酒のツマミを作るため台所に立つ三人。

「えーと、昆布昆布っと……あ、あった」
花澄
「(じーっと手元を覗き込む)……丁寧ですね、やっぱり」
「はい?」
花澄
「だしの取り方。うちだと、そこでかつお節入れっぱなし で済ませちゃうんですよね」
「私も、一人だったらここまでやりませんよ(笑)」
瑞希
「みんなで食べると思うと、ね。やっぱり力が入る」
花澄
「でも、嬉しいなあ(しみじみ)」
瑞希
「何ですか、急に(笑)」
花澄
「もう、この歳になると、友人って結婚して子供がいるん ですよね。そうすると泊りがけって誘えないでしょ」
瑞希
「そっかあ。確かに子供がいたらちょっと無理かも」
花澄
「だから、久しぶりだな、って思って(にこにこ)」
瑞希
「そうですよね、そう考えると何年かぶりだなぁ女同士の 飲み会って」
「みんな都合がつかなくなってきちゃうし」
花澄
「なんか嬉しくなってきちゃいますね(にこにこ) あ、手 伝いますよ」
「平気ですよ、花澄さん達はお客さんなんだから」
瑞希
「お泊り飲み会にお客さん扱いははナシ! 私も手伝うっ!」
花澄
「そうですよ(にこ) ちょっと包丁借りますね(とんとん とん)」
「へー、鮮やかですね花澄さん(感心)」
瑞希
「いいなぁ二人とも、お料理上手で」
花澄
「そんな(照れ) 瑞希さんも手慣れてますよ」
「やっぱり手際の良さは負けます、さすがは主婦ですね」
瑞希
「えへへ、そうかな。でも私の場合、料理はできても、豪 快というか大雑把というか……こういう言い方も変だけど、なんか女らしくない料理だなぁって思うんですよ。料理って性格出るから」
「あ、いえてる! 性格でますよね」
花澄
「そうですね(にこ)」
瑞希
「そうだ、わたし、お部屋の方を準備しときますね、こっ ちですか?」

トコトコと引き戸に近づき手を掛ける瑞希。

「えっ? あっ! そっちは!」

がらっ。

「開けちゃった……(汗)」
瑞希
「……すっごーい……」

薄いピンクとグレーで統一された部屋の中、周りのコンポやベッドよりも存在感を持ち『でんっ!』と部屋の中央に鎮座ましましているクジラの巨大ヌイグルミ。
 他にも棚、ベッドの上とあっちこっちにヌイグルミがいるが、以前花澄から貰ったティディベアはベッドの枕元にいた。

「そっちは……あたしの……部屋……なんです(赤面)」
瑞希
「何か迫力のある……クジラさんですね(汗)」
花澄
「(真剣な面持ちで)……尊さん」
「は、はい。何でしょうか」
花澄
「ぬいぐるみ、御好きなんですね」
「その……見てのとおりです(赤面)」
花澄
「それなら、また、引き取っていただけますね……ああ助 かった」
尊+瑞希
「は?」
花澄
「この前、特大のクマの型紙手に入れたんですけど、作っ ても置くとこ無いから作れなかったんです。よし、作る!
握り拳)」



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