エピソード453『見舞いの花』


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エピソード453『見舞いの花』

登場人物

蔦枝信子(つたえ・のぶこ)
 テレパシー能力を持つ小柄で童顔な女性
炎野火虎左衛門(えんの・ひこざえもん)
特撮マニアな操炎術師の大学生
大門喬(だいもん・たかし)
 エンパスな会社員
如月尊(きさらぎ・みこと)
 花屋を副業とする兼業退魔師

早朝のFLOWER SHOP Miko

「いらっしゃいませ(こんなに朝早くからお客さんなんて 初めてかしら)

店に入ってきたのは小柄な女性……信子だった。

(中学生かな……店、始めてわかったんだけど女の子って 思った以上に花屋に来ないのよね……)
信子 
「すみません、紋天竺葵ってあります?」
「も、もんてんじくあおい?? ……ああ、ゼラニウムのこ とね」

鉢植えのコーナーにあるゼラニウムをとってくる尊。

「これって結構高いわよ。お見舞いに使うつもりなら、も うちょっと安い花にしたほうがいいと思うけど」
信子 
「……よく、お見舞いって分かったね」
「紋天竺葵の花言葉が『慰安』だからね。
……でも、お見舞いにおいそれと買えるほど安くはないの。あなたのお小遣いなくなっちゃうわよ」

「お小遣い」のところで急に頬を膨らせる信子。

「な、ナニ膨れてるの?」
信子 
「いいのっ、私はコレ買うんだから」
「はいはい、分かったわ(苦笑) 少しくらい安くしてあげ るわね」

てきぱきとラッピングし、支払いを済ませる。

(へぇ……最近の女の子ってお小遣い多いのかな?)

開けられた信子の財布に入っている金額を見てそう思う。
 財布自体も大人の使うようなものだ……

「はい、持ちやすいように袋に入れるわね」
信子 
「うん、ありがと」

花を受け取った信子は店を出て、それをスクーターのカゴに入れて、ハンドルに引っかけてあったヘルメットをかぶり……

「ちょ、ちょっと!!」
信子 
「何?」
「何? じゃないわいよっ!! これ、あなたのスクーター なの?」
信子 
「そうだよ」

信子、免許証を取り出して尊に突きつける。

「昭和……47年生まれぇっ!?(私より年上じゃない!?)
ご、ごめんなさい私てっきり……」
信子 
「ま、いいけどね。もう結構慣れてるし……」
(その割には頬が思いっきり膨れてるけど(汗))

実はまだ気にしているのか、いささか乱暴な運転で走り去る信子

(事故ンなきゃいいけど……)

昼下がりのFLOWER SHOP Miko

「いらっしゃいま……せぇっ!?」

尊が驚くのも無理はない。
 その客は『ベルトの風車に風力を受けて変身したアノ人(以下、略と表記)』の格好をしていたのだから……。
 小脇に抱えているヘルメットも『略』のモノだ……。

(ベーカリーに来てたって言うガイコツ人間もこの人の仕業 なのかしら……って考えすぎね)
火虎左衛門
「見舞い用の花を見繕ってくれねぇかな? できたら真赤 でハデなヤツがいいな」
「え、ええ、分かったわ……で、予算はいくらくらいなの?」
火虎左衛門
「えっと、千五百円くらいだ」
「ふぅん、じゃあそこそこ見栄えのする花が買えるわね、 これと、これ……と、これでどうかしら?」
火虎左衛門
「OK!! センスいいねぇ」
「ありがと(^^;) (怪しい服着た人にセンスいいって言わ れても……)
……で、ちょっと聞きたいんだけど、いつもそんな服着てるワケ?」
火虎左衛門
「いんや、見舞いに行くヤツってのがアクションショーを 演っててな……ちょいとしたシャレってワケだ」
「そ、そうなの(汗)」
火虎左衛門
「いくら俺だって常時こんなカッコしねぇよぉ。
今年はまだコレとスカロマニアしかしてねぇし……」
(2回もやってりゃ十分よっ!!)
火虎左衛門
「それより、いくらになるんだ?」
「千五百円」
火虎左衛門
「うっし、予算どおりだ……じゃあなっ!!(ダッシュ)」
「ああっ!! そんなに走っちゃ花が散るじゃない!!」

ダッシュで店の外に出る火虎左衛門とそれを追いかける尊……

火虎左衛門
「とうっ!!(ジャンプ)」

中型バイクに向かってジャンプする火虎左衛門。
 空中で体を丸めクルっと一回転しそのままバイクにまたがる。

「……」

舞い散る花びらを残し去っていく火虎左衛門を呆然と見送る尊……

(『略』の霊にでも憑かれてるのかしら?)

夕方のFLOWER SHOP Miko

「ふぅ…… ナンっか、ヘンなお客さんが多い日だったわ ねぇ。ああ、今日はもう店閉めて休みたひ……」

昼のアレがよほどキいたのだろう、椅子に腰掛け、背もたれにだらしなくもたれかかる尊。
 そして客が来ないまま閉店時間10分前……。

「さぁて、もうお客さんの来る気配もないし……よしっ、 今日はもう閉店! 決定!!(いそいそ)」

閉店となると急に動きがきびきびとしたものになる。
 外に出している花から中にしまっていく……

SE 
(どだだだだだだだ……(駆け足の音))

慌ただしい足音はFLOWER SHOP Mikoに近づいている……

「何かしら……(外を見る)」

外を見る尊。
 会社帰りなのだろう、スーツ姿のまま走ってくる喬

「す、すみません!(息切れ)」
「え……」
「ちょっとお花をいただきたいんですけど、よろしいです か?」
「え? ああ、いいけど……どんなのが欲しいの?」
「お見舞い用の花を千円ほどで見繕っていただきたいんで すが…… あと、患者は男性ですのであまり華美でないものをお願いします」
「いいけど…… もう少し高くすれば見栄えがよくできる わよ?」
「(苦笑) 申し訳ないのですが、私の所持金に関わらず、 お支払いできるのは千円程度までなんです」
「どういうこと?」
「実は患者というのが会社の課長でして……すでに係長が 千五百円で花を買ってるんですよ」
「そうなの(苦笑)」
「ご理解ありがとうございます(苦笑)」
「じゃ、シックなものを揃えてみるわね」
「ありがとうございます」

てきぱきと小銭をだし、支払いを済ませる喬

「どうも閉店間際にお邪魔致しまして、申し訳ございませ んでした(ふかぶか)」

いそいそと店を出る喬。
 ちなみにまだ(本来の)営業時間内だ……。

「うう…… あんな真摯な態度を取られたら、早く閉めよ うとしたことの罪悪感がひしひしと」

ま、ともあれ、今日の営業時間は完全に終了したわけで……

「ま、いいかぁ、さて、晩御飯のおかずでも買いに行こっ と」

FLOWER SHOP Miko…… CLOSED



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