- 蔦枝信子(つたえ・のぶこ)
- テレパシー能力を持つ小柄で童顔な女性
- 炎野火虎左衛門(えんの・ひこざえもん)
特撮マニアな操炎術師の大学生
- 大門喬(だいもん・たかし)
- エンパスな会社員
- 如月尊(きさらぎ・みこと)
- 花屋を副業とする兼業退魔師
- 尊
- 「いらっしゃいませ(こんなに朝早くからお客さんなんて
初めてかしら)
店に入ってきたのは小柄な女性……信子だった。
- 尊
- (中学生かな……店、始めてわかったんだけど女の子って
思った以上に花屋に来ないのよね……)
- 信子
- 「すみません、紋天竺葵ってあります?」
- 尊
- 「も、もんてんじくあおい?? ……ああ、ゼラニウムのこ
とね」
鉢植えのコーナーにあるゼラニウムをとってくる尊。
- 尊
- 「これって結構高いわよ。お見舞いに使うつもりなら、も
うちょっと安い花にしたほうがいいと思うけど」
- 信子
- 「……よく、お見舞いって分かったね」
- 尊
- 「紋天竺葵の花言葉が『慰安』だからね。
……でも、お見舞いにおいそれと買えるほど安くはないの。あなたのお小遣いなくなっちゃうわよ」
「お小遣い」のところで急に頬を膨らせる信子。
- 尊
- 「な、ナニ膨れてるの?」
- 信子
- 「いいのっ、私はコレ買うんだから」
- 尊
- 「はいはい、分かったわ(苦笑) 少しくらい安くしてあげ
るわね」
てきぱきとラッピングし、支払いを済ませる。
- 尊
- (へぇ……最近の女の子ってお小遣い多いのかな?)
開けられた信子の財布に入っている金額を見てそう思う。
財布自体も大人の使うようなものだ……
- 尊
- 「はい、持ちやすいように袋に入れるわね」
- 信子
- 「うん、ありがと」
花を受け取った信子は店を出て、それをスクーターのカゴに入れて、ハンドルに引っかけてあったヘルメットをかぶり……
- 尊
- 「ちょ、ちょっと!!」
- 信子
- 「何?」
- 尊
- 「何? じゃないわいよっ!! これ、あなたのスクーター
なの?」
- 信子
- 「そうだよ」
信子、免許証を取り出して尊に突きつける。
- 尊
- 「昭和……47年生まれぇっ!?(私より年上じゃない!?)
ご、ごめんなさい私てっきり……」
- 信子
- 「ま、いいけどね。もう結構慣れてるし……」
- 尊
- (その割には頬が思いっきり膨れてるけど(汗))
実はまだ気にしているのか、いささか乱暴な運転で走り去る信子
- 尊
- (事故ンなきゃいいけど……)
- 尊
- 「いらっしゃいま……せぇっ!?」
尊が驚くのも無理はない。
その客は『ベルトの風車に風力を受けて変身したアノ人(以下、略と表記)』の格好をしていたのだから……。
小脇に抱えているヘルメットも『略』のモノだ……。
- 尊
- (ベーカリーに来てたって言うガイコツ人間もこの人の仕業
なのかしら……って考えすぎね)
- 火虎左衛門
- 「見舞い用の花を見繕ってくれねぇかな? できたら真赤
でハデなヤツがいいな」
- 尊
- 「え、ええ、分かったわ……で、予算はいくらくらいなの?」
- 火虎左衛門
- 「えっと、千五百円くらいだ」
- 尊
- 「ふぅん、じゃあそこそこ見栄えのする花が買えるわね、
これと、これ……と、これでどうかしら?」
- 火虎左衛門
- 「OK!! センスいいねぇ」
- 尊
- 「ありがと(^^;) (怪しい服着た人にセンスいいって言わ
れても……)
……で、ちょっと聞きたいんだけど、いつもそんな服着てるワケ?」
- 火虎左衛門
- 「いんや、見舞いに行くヤツってのがアクションショーを
演っててな……ちょいとしたシャレってワケだ」
- 尊
- 「そ、そうなの(汗)」
- 火虎左衛門
- 「いくら俺だって常時こんなカッコしねぇよぉ。
今年はまだコレとスカロマニアしかしてねぇし……」
- 尊
- (2回もやってりゃ十分よっ!!)
- 火虎左衛門
- 「それより、いくらになるんだ?」
- 尊
- 「千五百円」
- 火虎左衛門
- 「うっし、予算どおりだ……じゃあなっ!!(ダッシュ)」
- 尊
- 「ああっ!! そんなに走っちゃ花が散るじゃない!!」
ダッシュで店の外に出る火虎左衛門とそれを追いかける尊……
- 火虎左衛門
- 「とうっ!!(ジャンプ)」
中型バイクに向かってジャンプする火虎左衛門。
空中で体を丸めクルっと一回転しそのままバイクにまたがる。
- 尊
- 「……」
舞い散る花びらを残し去っていく火虎左衛門を呆然と見送る尊……
- 尊
- (『略』の霊にでも憑かれてるのかしら?)
- 尊
- 「ふぅ…… ナンっか、ヘンなお客さんが多い日だったわ
ねぇ。ああ、今日はもう店閉めて休みたひ……」
昼のアレがよほどキいたのだろう、椅子に腰掛け、背もたれにだらしなくもたれかかる尊。
そして客が来ないまま閉店時間10分前……。
- 尊
- 「さぁて、もうお客さんの来る気配もないし……よしっ、
今日はもう閉店! 決定!!(いそいそ)」
閉店となると急に動きがきびきびとしたものになる。
外に出している花から中にしまっていく……
- SE
- (どだだだだだだだ……(駆け足の音))
慌ただしい足音はFLOWER SHOP Mikoに近づいている……
- 尊
- 「何かしら……(外を見る)」
外を見る尊。
会社帰りなのだろう、スーツ姿のまま走ってくる喬
- 喬
- 「す、すみません!(息切れ)」
- 尊
- 「え……」
- 喬
- 「ちょっとお花をいただきたいんですけど、よろしいです
か?」
- 尊
- 「え? ああ、いいけど……どんなのが欲しいの?」
- 喬
- 「お見舞い用の花を千円ほどで見繕っていただきたいんで
すが…… あと、患者は男性ですのであまり華美でないものをお願いします」
- 尊
- 「いいけど…… もう少し高くすれば見栄えがよくできる
わよ?」
- 喬
- 「(苦笑) 申し訳ないのですが、私の所持金に関わらず、
お支払いできるのは千円程度までなんです」
- 尊
- 「どういうこと?」
- 喬
- 「実は患者というのが会社の課長でして……すでに係長が
千五百円で花を買ってるんですよ」
- 尊
- 「そうなの(苦笑)」
- 喬
- 「ご理解ありがとうございます(苦笑)」
- 尊
- 「じゃ、シックなものを揃えてみるわね」
- 喬
- 「ありがとうございます」
てきぱきと小銭をだし、支払いを済ませる喬
- 喬
- 「どうも閉店間際にお邪魔致しまして、申し訳ございませ
んでした(ふかぶか)」
いそいそと店を出る喬。
ちなみにまだ(本来の)営業時間内だ……。
- 尊
- 「うう…… あんな真摯な態度を取られたら、早く閉めよ
うとしたことの罪悪感がひしひしと」
ま、ともあれ、今日の営業時間は完全に終了したわけで……
- 尊
- 「ま、いいかぁ、さて、晩御飯のおかずでも買いに行こっ
と」
FLOWER SHOP Miko…… CLOSED
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