エピソード458『役に立たない異能』


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エピソード458『役に立たない異能』

とある日、瑞鶴で

客A
「あの、すみません、この新刊書、入ってます?」
花澄
「少々お待ち下さい。ええと……(『3LDK要塞……』ああ、 あれね)申し訳有りません、こちらのほう、只今切らしているんです」

瑞鶴くらいの規模で、店長のポリシーがはっきりしている店だと、新刊入荷数はどうしても減る。

客A
「あ、そうですか……(がっかり) 丁度今、角田書店見て きたら、売り切れてたんで、どっか穴場に無いかなって……」
花澄
「(角田にないとすると……)ちょっとお待ち下さい」

記憶の中から、ここ二三日の各書店の本棚を引っ張り出す。

花澄
「(結構売れ線だったから、そこそこ出てる筈なんだけ ど……ええと……)」

幾つかの書店にあったことまでは思い出せる。
 そこから先は、少々頼らねばわからない。

花澄
「(口の中で) 悪いけど、どこにあるか調べてくれる?」

と同時に、花澄を中心にして風が起こった。

客A
「あの?」
花澄
「いえ、すみません、多分わかると思うんですけど
にこにこ)」
客A
「あ、はい。(何となく説得されている)」

すぐに風が戻ってくる。

花澄
「(何だ、そんな近くにあるの) ああ、そうだ、お客様、 アニメイト吹利、ご存知ですか? ベーカリー楠の近くの」
客A
「あ、はい知ってます」
花澄
「そこに多分、1、2冊残ってると思います。ちょっと見 つかりにくいところにおいてあると思いますから、店員さんに聞いてみたほうがいいですよ」
客A
「あ、どうも……よくご存知ですね(感心)」
花澄
「この前、見かけたな、と思ったんです。(にこにこ)」
客A
「でも、よかったぁ。やっと読めます」
花澄
「その気持ち、よく分かります」
客A
「有難うございました(深々)」

お辞儀をして出て行く客を見送って。

花澄
「……瑞鶴の売り上げ、一冊分落としたってことかなあ。
思案顔)」



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