エピソード462『あふれんばかりのラブレター』


目次


エピソード462『あふれんばかりのラブレター』

私立吹利学院高校についた西山みのるの始まりは、まず下駄箱掃除だ。
 袋を用意して、そっと開ける。
 ばさばさばさっ。

夏和流
「……今日もいろいろ入っているねぇ」
みのる
「夏和流、落ちたものをとってくれ」
夏和流
「へいへい。このラブレターが毎日僕らを苦しめているっ ていうことを、みんな気がついているのかなぁ」

そう、下駄箱からあふれたのはプレゼントやラブレターの山である。
 成績優秀、サッカー部のキャプテン、二枚目、クール、家が広い、金持ち。これだけ好条件がそろっていれば、無理もない。

夏和流
「いっそのこと無視して捨てればいいのに」
みのる
「そういう訳にもいかないだろうが」
夏和流
「でもさあ、いい加減にむかついてこない?」
みのる
「いいや」
夏和流
「……。まあ、いいけれど……にしても、断りの返事書い ているんでしょ?」
みのる
「ああ」
夏和流
「それで、どうして減らないんだろ?」
みのる
「俺が知ると思うのか?」
夏和流
「あーあ、僕にも一通ぐらいくれてもいいのに……」
みのる
「二股でもかける気か?」
夏和流
「……まあ、ふかぁい事情があってねぇ」
みのる
「嘘をつけ」
夏和流
「……一瞬で否定しなくてもいいじゃないかぁ」
みのる
「ならば、本当に事情があるのか?」
夏和流
「……いーじゃないかぁ」
みのる
「……好きにしていろ」

教室に移れば、次に机の中の掃除。大体この時くらいから、ストーカーよろしく女の子がみのるの後ろへつきはじめる。

みのる
「夏和流、これも持っていてくれ」
夏和流
「はいはい。……ねぇ、あの子達まだいるよ?」
みのる
「放っておけば、そのうち教室へ行くだろう」
夏和流
「そかもね。それにしても……やっぱり納得いかない。ど うして、みのるばっかりもてるんだっ!」
みのる
(無視して片付けを進める)
夏和流
「可愛い子がいっぱいなのにっ! 僕はラブレターなんて 貰ったことがないぞっ!! どっか世の中おかしいぞっ!!ふこーへーだぁー!! !!」

きーんこーん、かーんこーん。始まりのチャイムだ。

みのる
「とっとと席へ着け」
夏和流
「うう……みのるが冷たいよぅ」

口では言いながらも、実は夏和流はそんなに欲しいわけでもない。
 みのるはそのことをよく知っているので、あえて無視しているのだ。
 さて、授業終わって放課後。サッカー部があれば、その時にまた女性との面々がグラウンドにあらわれるのだが、今日は部活は休みである。当然、帰宅するのだが……。

夏和流
「三人ほどまだいるね」
みのる
「走って、まくぞ」
夏和流
「あぁあ。本当にストーカーするのは、やめて欲しいなぁ」

一時間ほどあたりを走ったり歩いたり。つけてくる女子をまいて、ようやくみのるは帰宅できる。さすがに、少し疲れてくる。
 なのでよく、少し休憩するためにベーカリーによったりもするのだ。

夏和流
「(からんからん)こんちわー」
みのる
「失礼します」
観楠
「お二人とも、いらっしゃい(笑顔)」
夏和流
「はぁ……ほっとする」

こうして、西山みのるの恋愛騒動の日々はすぎてゆく……。



連絡先 / ディレクトリルートに戻る / TRPGと創作のTRPGと創作“語り部”総本部