私立吹利学院高校についた西山みのるの始まりは、まず下駄箱掃除だ。
袋を用意して、そっと開ける。
ばさばさばさっ。
- 夏和流
- 「……今日もいろいろ入っているねぇ」
- みのる
- 「夏和流、落ちたものをとってくれ」
- 夏和流
- 「へいへい。このラブレターが毎日僕らを苦しめているっ
ていうことを、みんな気がついているのかなぁ」
そう、下駄箱からあふれたのはプレゼントやラブレターの山である。
成績優秀、サッカー部のキャプテン、二枚目、クール、家が広い、金持ち。これだけ好条件がそろっていれば、無理もない。
- 夏和流
- 「いっそのこと無視して捨てればいいのに」
- みのる
- 「そういう訳にもいかないだろうが」
- 夏和流
- 「でもさあ、いい加減にむかついてこない?」
- みのる
- 「いいや」
- 夏和流
- 「……。まあ、いいけれど……にしても、断りの返事書い
ているんでしょ?」
- みのる
- 「ああ」
- 夏和流
- 「それで、どうして減らないんだろ?」
- みのる
- 「俺が知ると思うのか?」
- 夏和流
- 「あーあ、僕にも一通ぐらいくれてもいいのに……」
- みのる
- 「二股でもかける気か?」
- 夏和流
- 「……まあ、ふかぁい事情があってねぇ」
- みのる
- 「嘘をつけ」
- 夏和流
- 「……一瞬で否定しなくてもいいじゃないかぁ」
- みのる
- 「ならば、本当に事情があるのか?」
- 夏和流
- 「……いーじゃないかぁ」
- みのる
- 「……好きにしていろ」
教室に移れば、次に机の中の掃除。大体この時くらいから、ストーカーよろしく女の子がみのるの後ろへつきはじめる。
- みのる
- 「夏和流、これも持っていてくれ」
- 夏和流
- 「はいはい。……ねぇ、あの子達まだいるよ?」
- みのる
- 「放っておけば、そのうち教室へ行くだろう」
- 夏和流
- 「そかもね。それにしても……やっぱり納得いかない。ど
うして、みのるばっかりもてるんだっ!」
- みのる
- (無視して片付けを進める)
- 夏和流
- 「可愛い子がいっぱいなのにっ! 僕はラブレターなんて
貰ったことがないぞっ!! どっか世の中おかしいぞっ!!ふこーへーだぁー!! !!」
きーんこーん、かーんこーん。始まりのチャイムだ。
- みのる
- 「とっとと席へ着け」
- 夏和流
- 「うう……みのるが冷たいよぅ」
口では言いながらも、実は夏和流はそんなに欲しいわけでもない。
みのるはそのことをよく知っているので、あえて無視しているのだ。
さて、授業終わって放課後。サッカー部があれば、その時にまた女性との面々がグラウンドにあらわれるのだが、今日は部活は休みである。当然、帰宅するのだが……。
- 夏和流
- 「三人ほどまだいるね」
- みのる
- 「走って、まくぞ」
- 夏和流
- 「あぁあ。本当にストーカーするのは、やめて欲しいなぁ」
一時間ほどあたりを走ったり歩いたり。つけてくる女子をまいて、ようやくみのるは帰宅できる。さすがに、少し疲れてくる。
なのでよく、少し休憩するためにベーカリーによったりもするのだ。
- 夏和流
- 「(からんからん)こんちわー」
- みのる
- 「失礼します」
- 観楠
- 「お二人とも、いらっしゃい(笑顔)」
- 夏和流
- 「はぁ……ほっとする」
こうして、西山みのるの恋愛騒動の日々はすぎてゆく……。
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