エピソード469『君を護るよ』


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エピソード469『君を護るよ』

某月某日。夏和流は、彩と一緒に買い物にでていた。
 ……荷物持ちとして。
 結局男なんてものは、立場が弱いのだ。

夏和流
「彩さん……もうへとへとだよぅ」
「もう、だらしないんだから! まだ、あと三軒はまわる わよ!」
夏和流
「まだまわるの! 死ぬ〜、もう帰る〜」
「可愛い彼女が、もっと綺麗になるのよ。協力しなさい」
夏和流
「うう、僕がやつれるのはいいのかよぅ」
「もちろん、いいのよ」
夏和流
「うるうるうるうる……(T_T))

泣ながらも、荷物持ちにまわる夏和流。

「えーっと、次はどこに行こうかしら……」
夏和流
「ベーカリーにでもよって、帰ろうよ〜」
不良1
「ああ、お前だけ帰ったらどうだ?」
二人
「?」

二人がふとまわりを見渡せば、五人ほどのガラの悪そうな奴等に囲まれていた。ちなみに、あたりに人影がないときだ。

夏和流
「……だからいったんだよ。早く帰ろうって」
「ちょっと……落ち着いていないで、何とかしてよ!」
夏和流
「……五人も相手に、勝てっていうの?」
不良1
「別に逃げてもいいぜ」
不良2
「ねーちゃんの相手は、俺達がしてやるからな」

言って、ばか笑いする五人組。

夏和流
(そうだ。彩さんを、恐がらせちゃお)
不良5
「どーすんだよ? おい」
夏和流
「(荷物をおく) じゃあ、彩さんの荷物も持ってくれたり、 してくれる?」
不良3
「(何言っていやがるんだ?) ああ、だから帰んな」
「ちょっと!」
夏和流
「まあ、このあたりは人がときどき通るから……あっちの 方がいいんじゃない?」
不良4
「なぁに、言われなくても、そうさせてもらうぜ」
不良5
「へっへっへ……(彩に近付く)」
「あ……や……いやぁぁぁぁぁ」
夏和流
「いやなら、やめよう」

言って、突然不良達に殴りかかる夏和流。
 一人目の腹に前蹴りを喰らわせ、二人目の顎を拳で殴る。
 あっと言う間に、二人をしばらく動けなくする。

不良3
「てってめえ!(夏和流につかみかかる)」
夏和流
『こける』

言葉通り、3人目はその場に転んだ。なぜかバナナの皮が落ちていたのだ。

夏和流
「四人目!」

四人目の懐に入り、襟首をつかむ。そしてそのまま、柔道の大外刈りの要領で相手を地面に転がす。
 そして、転んだところで顔を蹴る。

不良5
「うっ……」
夏和流
「(睨み付けて) まだやるつもりかよ? 次は、俺も本気 を出すぞ」
不良5
「くっ……くそ!」
不良5&夏和流
『覚えてやがれ!』
夏和流
「ワンパターンなセリフはいいから、とっとといきな」

不良5が逃げるのをきっかけに、その他のものたちも逃げ出した。

夏和流
「……ふう。はったりでびびってくれて、よかった。日頃 の演技力がものを言うってもんだね。
いや、演技力が喋るんじゃないけれど……」
「ちょ……ちょっと! 一人でぶつぶつ呟いていないでよ!」
夏和流
「あ、彩さん。怪我、ないよね?」
「……!(ぱぁん)」
夏和流
「いて……」
「……恐かったんだから……(泣き出す)」
夏和流
「(げっ! ちょっと、驚かそうとしただけなのに……)
ご、ごめん! 不意をつくのに、ああしなければ……っていう訳じゃないけれど……でも、その……」
(まだ泣いている)
夏和流
「(うつむいて) ……本当にゴメン。これからは、君のこ と、絶対護るから……」
「……本当?」
夏和流
「うん。何か言うとしても、それは全部はったりだから。 僕を、信じて」
「護って、くれるのね?」
夏和流
「うん」
「(泣き止んで) それじゃあ、罰としてこの荷物も持って ね」
夏和流
「……へ?(間抜けな顔)」
「早くしてよ。日が暮れちゃう」
夏和流
「(……はっ!) ずるい! 僕を騙したね!!」
「お互い様でしょ」
夏和流
「〜〜〜〜〜!」
「さ、いきましょ」

結局男なんてものは、立場が弱いのだ。



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