某月某日。夏和流は、彩と一緒に買い物にでていた。
……荷物持ちとして。
結局男なんてものは、立場が弱いのだ。
- 夏和流
- 「彩さん……もうへとへとだよぅ」
- 彩
- 「もう、だらしないんだから! まだ、あと三軒はまわる
わよ!」
- 夏和流
- 「まだまわるの! 死ぬ〜、もう帰る〜」
- 彩
- 「可愛い彼女が、もっと綺麗になるのよ。協力しなさい」
- 夏和流
- 「うう、僕がやつれるのはいいのかよぅ」
- 彩
- 「もちろん、いいのよ」
- 夏和流
- 「うるうるうるうる……(T_T))
泣ながらも、荷物持ちにまわる夏和流。
- 彩
- 「えーっと、次はどこに行こうかしら……」
- 夏和流
- 「ベーカリーにでもよって、帰ろうよ〜」
- 不良1
- 「ああ、お前だけ帰ったらどうだ?」
- 二人
- 「?」
二人がふとまわりを見渡せば、五人ほどのガラの悪そうな奴等に囲まれていた。ちなみに、あたりに人影がないときだ。
- 夏和流
- 「……だからいったんだよ。早く帰ろうって」
- 彩
- 「ちょっと……落ち着いていないで、何とかしてよ!」
- 夏和流
- 「……五人も相手に、勝てっていうの?」
- 不良1
- 「別に逃げてもいいぜ」
- 不良2
- 「ねーちゃんの相手は、俺達がしてやるからな」
言って、ばか笑いする五人組。
- 夏和流
- (そうだ。彩さんを、恐がらせちゃお)
- 不良5
- 「どーすんだよ? おい」
- 夏和流
- 「(荷物をおく) じゃあ、彩さんの荷物も持ってくれたり、
してくれる?」
- 不良3
- 「(何言っていやがるんだ?) ああ、だから帰んな」
- 彩
- 「ちょっと!」
- 夏和流
- 「まあ、このあたりは人がときどき通るから……あっちの
方がいいんじゃない?」
- 不良4
- 「なぁに、言われなくても、そうさせてもらうぜ」
- 不良5
- 「へっへっへ……(彩に近付く)」
- 彩
- 「あ……や……いやぁぁぁぁぁ」
- 夏和流
- 「いやなら、やめよう」
言って、突然不良達に殴りかかる夏和流。
一人目の腹に前蹴りを喰らわせ、二人目の顎を拳で殴る。
あっと言う間に、二人をしばらく動けなくする。
- 不良3
- 「てってめえ!(夏和流につかみかかる)」
- 夏和流
- 『こける』
言葉通り、3人目はその場に転んだ。なぜかバナナの皮が落ちていたのだ。
- 夏和流
- 「四人目!」
四人目の懐に入り、襟首をつかむ。そしてそのまま、柔道の大外刈りの要領で相手を地面に転がす。
そして、転んだところで顔を蹴る。
- 不良5
- 「うっ……」
- 夏和流
- 「(睨み付けて) まだやるつもりかよ? 次は、俺も本気
を出すぞ」
- 不良5
- 「くっ……くそ!」
- 不良5&夏和流
- 『覚えてやがれ!』
- 夏和流
- 「ワンパターンなセリフはいいから、とっとといきな」
不良5が逃げるのをきっかけに、その他のものたちも逃げ出した。
- 夏和流
- 「……ふう。はったりでびびってくれて、よかった。日頃
の演技力がものを言うってもんだね。
いや、演技力が喋るんじゃないけれど……」
- 彩
- 「ちょ……ちょっと! 一人でぶつぶつ呟いていないでよ!」
- 夏和流
- 「あ、彩さん。怪我、ないよね?」
- 彩
- 「……!(ぱぁん)」
- 夏和流
- 「いて……」
- 彩
- 「……恐かったんだから……(泣き出す)」
- 夏和流
- 「(げっ! ちょっと、驚かそうとしただけなのに……)
ご、ごめん! 不意をつくのに、ああしなければ……っていう訳じゃないけれど……でも、その……」
- 彩
- (まだ泣いている)
- 夏和流
- 「(うつむいて) ……本当にゴメン。これからは、君のこ
と、絶対護るから……」
- 彩
- 「……本当?」
- 夏和流
- 「うん。何か言うとしても、それは全部はったりだから。
僕を、信じて」
- 彩
- 「護って、くれるのね?」
- 夏和流
- 「うん」
- 彩
- 「(泣き止んで) それじゃあ、罰としてこの荷物も持って
ね」
- 夏和流
- 「……へ?(間抜けな顔)」
- 彩
- 「早くしてよ。日が暮れちゃう」
- 夏和流
- 「(……はっ!) ずるい! 僕を騙したね!!」
- 彩
- 「お互い様でしょ」
- 夏和流
- 「〜〜〜〜〜!」
- 彩
- 「さ、いきましょ」
結局男なんてものは、立場が弱いのだ。
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