〜 脅威!改造怪人タラバンバー 〜 の巻


目次


エピソード『究極戦士サイキョーダー』===================================

〜 脅威!改造怪人タラバンバー 〜 の巻

あっという間に日曜日、アクションショー当日。
 

フラナ
「るーるるーるるん(ぴょんこぴょんこ)」
本宮
「こら、落ち着けよ」
フラナ
「だぁって楽しみなんだもんっ」
佐古田
「じゃぃぃぃぃん(楽しみだぁぁぁの音色)」
本宮
「はぁぁ(溜め息)…まぁしょうがないか」
 
 一方、その頃。食休み中のアクションショー出演者達
 
火虎左衛門
「さぁて、そろそろ気合いれていくぞ」
メンバー1
「う…(うずくまる)」
火虎左衛門
「おい、どうした?」
メンバー1
「っ…は、腹が…てっててて…痛」
火虎左衛門
「大丈夫か?おい、誰か医者呼べ医者!」
メンバー2
「どうしたんですか?炎野さん」
火虎左衛門
「こいつが急に腹痛いって言い出して」
メンバー1
「痛っっっ…」
メンバー2
「しっかり、救急車呼びましょう」
 
 程なく運ばれていく男。残されたメンバー。
 
火虎左衛門
「大丈夫か、あいつ」
メンバー2
「でも、どうしましょうか…代役たてないと…」
火虎左衛門
「代役立てるしかねぇな」
メンバー2
「代役って、改造怪人の代理…大変ですよ」
火虎左衛門
「ううむ」
メンバー2
「ある程度、アクションがこなせて、タッパがあって、
体力のある人でないと代役はつとまりませんよ
私らだとサイズが合いませんし…どうしましょ」
火虎左衛門
「ううぅ、まずいなぁ」
メンバー2
「困りましたね、子供達待ってるのに…」
火虎左衛門
「参った…誰か適役はおらんか…」
 
 悩む一同。そこへ…
 
フラナ
「炎野さんっ(ひょいっ)」
火虎左衛門
「おおう、お前はフラナ少年。お前どっから現れた」
フラナ
「へっへーん、ナイショ!おもわず様子見に来ちゃった」
佐古田
「じゃじゃじゃーん(こんにちはぁぁぁの音色)」
火虎左衛門
「フラナ少年、すまんが、少々取り込んでいてな」
本宮
「あ、いたいた…すいません炎野さん。フラナの奴が…」
火虎左衛門
「!もとみー」
 
  はた、と本宮に目を留める炎野。タッパはある…アクションもできる…
 立証済みだ、体力も…そこそこありそうだ。
 
火虎左衛門
(こいつはいける!)
本宮
「?どうしたんですか炎野さん」
火虎左衛門
「あー、もとみー。
 ちょぉーっと、こっちに来い(手招き&怪しい笑顔)」
本宮
「なんか、イヤな予感がするけど…… なんですか?」
火虎左衛門
「オマエを本アクションショーの
 改造怪人役に任命する。喜べ」
本宮
「はいはい……
(なげやりに)ばんざーい
 ……これでいいですか? って…………
 なんだってぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
火虎左衛門
「聞いての通りだ」
本宮
「いやですよ」
火虎左衛門
「……」
本宮
「まっぴらごめんです」
火虎左衛門
「……
 げんまいれいちっ!!」

  燃え盛る火球を本宮に放り投げる。
   とはいえ温度は約40度で燃え盛る炎は視覚的なモノなので害はない。

本宮
「あちちちちちちち」
火虎左衛門
「と、いうわけで今回もとみーは改造怪人役。
 オーケー? フラナ少年??」
フラナ
「いいよ(あっさり)」
佐古田
「じゃじゃかじゃん(フラナに同じの音色)」
火虎左衛門
「よし、決定」
本宮 
「俺自身は了解してないですよぉ!!
 って、あちちちちちちちち」
火虎左衛門
「(炎を消してシリアスな表情になる)
 オマエ、本当の理由が聞きたいのか?」
本宮
「当たり前ですっ!!」
火虎左衛門
「実は今日その役をするはずだった人が倒れてな……
 だから、その代役を探してたんだ。
 俺の眼ではオマエが一番の適役だったってわけだ」
本宮
「だからってなんで僕が……」
火虎左衛門
「倒れた人が言ってたぜ……
 子供たちが楽しみに待っているのにこんなことで……
 ってな」
本宮
「……」
 # 一行化け
 中止にするなんて耐えられねぇ…… この日を
 楽しみにしてきた子供たちにそう言い訳するんだ?」
本宮 
「炎野さん……」
フラナ
「もとみー、やってあげてよぅ」
佐古田
「……(無言で本宮に訴えかける)」
本宮 
「分かりました、やりましょう!!」
火虎左衛門
「へへ、ありがとよ!
 悪ぃが、1時間しかねぇんだ。
 30分ほどで基本叩き込むから覚悟してくれ」
本宮 
「はいっ」
火虎左衛門
「よし、これが衣装だ(バサッ)」
本宮
「こ…これ…」

全体の外見として、黒のスーツにカニの甲羅をしょわせて足を所々に生やしたといったしろものだった、他にもどういうわけか貝やら海藻もどきがあちこちにくっついている。

火虎左衛門
「着込むと結構動きづらくなるからな、気を付けろよ」
本宮
「これ…どういう怪人なんですか」
火虎左衛門
「改造怪人『タラバンバー』カニをベースに海産物を装備 :として取り入れている」
本宮
「どういうコンセプトで作ってるんですか…怪人って」
火虎左衛門
「本気でコンセプトを求めるな」
そして、練習開始。

火虎左衛門
「違う!そこはもっと振りを大きく大袈裟に!」
本宮
「はっはいっ」
火虎左衛門
「よし!そこでスイッチ!『タラバブルボンバー』だ!」
本宮
「は…はい(あきらめてる)」
火虎左衛門
「いいぞ!飲み込みが早いな、これはいけるぞ」
本宮
「うぅ、深く考えるな…無心でいく…」

なかなか調子は良さそうである。精神的なものを除けば…そして、会場の観客席にて。

フラナ
「まだかなぁ、もとみー(ワクワク)」
佐古田
「じゃじゃ〜ん(楽しみーの音色)」
フラナ
「どんな格好してくるかな、カメラカメラっと」

子供と一緒にはしゃいでるフラナはまだいいとして(それでも場違いだが)スナフキンスタイルに金髪碧眼の佐古田はおもいっきり浮いていた。
   そしてショーの始まる時間になり……

お姉さん
「みんな〜、こんにちはぁ〜!!」

  軽快なBGMとともに現れるお姉さん。
   これから現れる悪役に捕まってしまうヒロインであるが、その実
   ショーの進行を受け持つ大変なポストである。
   ちなみにこの進行役がお兄さんだと子どもにウケがよく、
   お姉さんだとその上に付き添いの父兄さん方にもウケが良くなる。

子供たち
「こんにちはぁ」
フラナ
「こんにちわぁ」
佐古田
「じゃんじゃじゃ〜ん(こんにちわぁの音色)」
お姉さん
「あっれ〜〜? 声が小さいなぁ
 もう一度、大きな声でぇ、こんにちわぁっ(大声)!!」
子供たち
「こんにちわぁあああああああっ(絶叫)」
フラナ
「こんにちはぁあああああああっ(絶叫)」
佐古田
「じゃんじゃじゃじゃ〜〜んっ!!
 (こんにちはぁあああああああっ(絶叫)の音色」

  挨拶の終わったところでBGMがおどろおどろしいモノに変わる。
   ふんぞり返って歩く悪ボスと取り巻きの戦闘員4名。
   タラバンバーはいないようだ……
   そのころの舞台裏……
   着ぐるみの頭部を外して待機している本宮と
   ヒーローコスチュームに身を包み登場準備を進める火虎左衛門。

本宮 
「うう、あがってきたぁ…… た、確かあがったときは
 手のひらに使徒を3体書いて……ってどう書くんだ?」
火虎左衛門
「何やってんだ? もとみー」
本宮 
「いえ、こう出番が近づいてくるとあがってしまって」
火虎左衛門
「ま、だれだって最初はそうだ。今のうちに慣れておけ」
 本当なら、いま悪ボスと一緒に出ていたところ
 だったんだぞ」
本宮 
「そうだったんですか」
火虎左衛門
「オマエに慣れてもらう為に無理を言ったんだ。
 いいか、立ち回りをすべて暗記しようと思うなよ。
 舞台上じゃあ多少の声はBGMが消してくれるから、
 解らなくなったら聞け、俺がサポートするからよ。
 ……と、出番が近いな…… じゃ、行ってくる。
 着ぐるみのチャックを閉めてもらったときはちゃんと
 ありがとうございます、って言うんだぞ。」
本宮 
「はい(アクションショーの世界って体育会系なんだな)」

  舞台に戻って……

悪ボス
「ふははははは、この遊園地はわれわれが占拠する!!
 逆らうやつは皆殺しだーーーっ!!(ドス利きすぎ)」
戦闘員*4
「イ゛ーーーっ!!(整列&武器を構える)」
お姉さん
「そんなことはさせないわ、
 みんな、大きな声でサイキョーダーを呼んで!!」
子供たち
「サイキョーダー!!」
お姉さん
「もっと大きく!!」
子供たち
「サぁイキョぉダぅぁぁぁ〜〜!!」

  半ばヤケになって絶叫する子供たち&フラナ。
   付き添いの親御さん達の一部は子供たちの絶叫に紛れたギター音に
   首をかしげている。

サイキョーダー
「待てぃっ!! そうはさせるかぁっ!!
 (だだだっ!! と走り込む)
 だっ、だっ、でやぁっ!!」

  颯爽と現れ、口上も述べずにいきなり攻撃するヒーロー。
   かなり狂暴な部類に入るヒーローらしい。
   その時点でバラバラになっていた戦闘員*3だが、実はヒーローの
   進行方向に接する形で真直に並んでいた。
   サイキョーダーの奇襲の断空キック(仮)をくらって吹っ飛ぶ戦闘員。

戦闘員*3
「イ゛ーーっ!!(泣)」
悪ボス
「さ、サイキョーダーめ……
 おいっ!! そこのお姉さんを人質にするんだ」

  悪ボスの命を受けた戦闘員、進行役のお姉さんを捕まえようとする。
   しかしダッシュで先回りするヒーロー。

戦闘員
「イ、イ゛ーーー(涙)」
サイキョーダー
「わかってんのか? ワキ役に見せ場はねぇぜ」

  ヒーローのサマソをくらって吹っ飛ぶ涙の戦闘員
   サイキョーダー、アンタ絶対悪役や……

悪ボス
「くっ…… ひとまず退却だっ!!」

  悠然と退場する悪ボス。その後ろで肩を貸し合いながら退場していく
   戦闘員*4の姿が痛々しい。

お姉さん
「ありがとう、サーキョーダー」

  退場した悪役と入れ替わりにステージの影から再登場するお姉さん。
   そして、それに答える為にぐっ、と親指を立てるヒーロー。
   戦闘員相手に見せた凶悪な素振りを一切見せずに愛想良く
   お姉さんの質問に模範的解答をする。
   そして、颯爽と退場するヒーロー。
   ……で、舞台裏……

本宮 
「えーっと、カヲル君にサキエル、後はラミエル、と」
火虎左衛門
「何してんだ、もとみー?」
本宮 
「いえ、あがらない為のおまじないを……」
火虎左衛門
「そんなことをしている場合か、もう出番だぜ」
本宮 
「ま、まだ心の準備が……」
火虎左衛門
「うるさい、時間はたっぷりあったハズだ
 それに今でもあがってるようじゃあ、
 出番が来るまでは永久にあがりっぱなしだと思うぜ」
本宮 
「う……」
火虎左衛門
「それとさっきも言ったがムリに喋ることはねぇ
 セリフはすべて音響がしてくれているからな。
 ……って、怪人役が喋ることもねぇが」
本宮 
「解りました」
火虎左衛門
「基本的には悪ボスのいうことを聞いてれば良いからな。
 ……じゃ、行ってこい!!」
本宮
「(両手で頬をパシッと叩く)よぉし!いくぞっ」
 
 そして、場面は切り替わり。再度悪ボス登場。
 
悪ボス
「くくくくく、おのれサイキョーダーめ!私の世界征服の
邪魔をしおって!かくなる上は!出でよっ、
究極改造怪人!タ〜ラ〜バンバー!」
タラバンバー
「グゴオォォォォォォォォンォンォンォンォン」
 
  悪ボスの絶叫と共にスモークか吹き出し、重々しい雄叫びの残響音とともに
 ごつごつしたハサミを振り回しつつ、タラバンバー登場。
 
悪ボス
「ゆけぇぃ、タラバンバー!(めちゃくちゃ力こもった声)
お姉さんを人質にし、サイキョーダーをたぁーおす
のぉだぁぁっ」
タラバンバー
「シャギィィィィィィィンングォォォォォォォンンンン」
お姉さん
「きゃぁぁぁぁたすけてぇっ」
子供たち
「おねぇさあん!」
悪ボス
「くわはははははっ、これでサイキョーダーも終わりだ!
はぁーっはっはっはっ(腹の底から響く高笑い)」
 
  お姉さんをハサミで捕まえるタラバンバー、子供たちがいっせいに騒ぎ出す。
 
お姉さん
「みんなっ!みんなでサイキョーダーを呼んでっ!」
子供たち
「(ほとんど絶叫)サぁイキョーダぁぁぁぁっ!
サぁイキョぉダぅぁぁぁ〜!!」
 
  子供たちの絶叫に答えるように、おもむろに舞台そでから飛び込んでくる
 サイキョーダー。
 
サイキョーダー
「とぉーっ!(すちゃっ)」
悪ボス
「ふっ、きおったなサイキョーダー!」
サイキョーダー
「ああっお姉さんっ!おのれ卑怯な手をっ」
悪ボス
「くははははっあまいなっ!いけぇ、究極改造怪人
タラバンバー!サイキョーダーを倒すのだぁぁ」
タラバンバー
「ギュゴオォォォォンンンンン(お姉さんを戦闘員に渡し、
突っ込んでくる)」
サイキョーダー
「ふっ、改造怪人だろうが負けないぜっ」
お姉さん
「サイキョーダー!がんばって!さぁっみんなも心を
一つにして、サイキョーダーを応援よ!」
サイキョーダー
「来やがれ!! タラバンバー!!
 格の違いってのを見せてやるぜ!!」
悪ボス
「ぬははははは!! そんな事言ってもいいのか?
 お姉さんがどうなってもいいのかぁ?」

  悪ボスがアゴで指図すると、戦闘員が手にした武器の先を
   お姉さんの首筋に突きつける。

悪ボス
(子供たちに向かって)
「どぅだ? サイキョーダーはもう手も足も出せない」

  サイキョーダー(火虎左衛門)、悪ボスが喋ってる間に
   タラバンバー(本宮)にこっそり話し掛ける。

火虎左衛門
「おい、オマエの肩を踏み台に使うから
 ちょっとふんばっててくれよ」
悪ボス
「キサマらは運がいい、サイキョーダーの公開処刑に
 立ち会えるのだからなぁぁぁ!!(ヤケに嬉しそう)
 ぬわはははは……」
サイキョーダー
「ゴタゴタ言ってンじゃねぇっ!!」

  宙に舞うサイキョーダー、悪ボスが喋っている間にタラバンバーの
   膝を足掛かりに、肩を踏み台にしてジャンプしていたのだ!!
   そして着地点には……

戦闘員
「イ゛、イ゛ーーーーーっ!!」

  お姉さんに武器を突きつけていた戦闘員。
   サイキョーダーのナギナタ蹴りをくらって思い切り吹っ飛ぶ。

サイキョーダー
「さ、お姉さん安全なところへ」
お姉さん
「ええ、ありがとう。サイキョーダー」

  子供たちの歓声が響く。
   そして、吹っ飛んだ戦闘員を助け起こしたサイキョーダーは……

サイキョーダー
「どうする? 戦闘員は俺の手に落ちたぜ?
 そこからちょっとでも動いてみろよ?」

  な、なんてぇコトを……

悪ボス
「こ、こらっ!!
 やっていいことと悪いことがあるぞ(狼狽)」
サイキョーダー
「……オマエ達からやり出したことだろう!!
 人質を取るということが、どんなにひどいことか
 これで解っただろう?!」

  サイキョーダーの『反面教師』
   悪行をそのままやり返すことで、その行為の卑劣さを訴える
   説教じみた必殺技だ!!

サイキョーダー
(戦闘員を放す)
「気を取り直して、いくぜ、タラバンバー!!」
タラバンバー
「シャギギィィィィイン!!」

  サイキョーダーに釈放され、よろよろと悪の陣営に戻る戦闘員。
   他の戦闘員*3に温かく迎えられ涙の御対面をしている。
   子供たちの目が戦闘員に移っている間に打ち合わせをする火虎左衛門。

火虎左衛門
「俺が3発攻撃をする度に1発づつ返してこい。
 タラバンバーはパンチがメインだからキックはするなよ」

  サイキョーダーの激しいコンボをハサミの手でさばき、
   的確にサイキョーダーを痛めつけるタラバンバー。
   そして、アッパーをくらって吹っ飛び、倒れるサイキョーダー。

サイキョーダー
「くっ、くそうっ!!」
悪ボス
「ぐはははははは、よくやった!!
 よぅし、とどめはこの私がしてやろう!!
 下がっていろ、タラバンバー」

  4人の戦闘員が居るところまで下がるタラバンバーとすれ違いに
   のこのことステージ中央で倒れているサイキョーダーに近寄って、
   足蹴にする悪ボス。
   次々に響く子供たちの悲鳴。

お姉さん
「ああっ、サイキョーダーがあぶないっ!!
 みんな、サイキョーダーを応援してっ!!」
子供たち
「サぁぁイキョぉぉぉーダーっ!!
悪ボス
「フン、もうサイキョーダーは立てん!!
 ここで死ぬのだぁーーーははははははは!!」
子供たち
「サぁぁぁぃイキョょぉぉぉーダぁーっ

  と、この時点で戦闘員がタラバンバーへ次の説明をする。

戦闘員
「次に声援を受けたサイキョーダーが立ち上がるから、
 悪ボスが指示したら突っ込んでボディを出せ、
 炎野がそれを受け止めて背負い投げを決めるから、
 そこでくるりと回って背中から落ちる。受け身しろよ。
 それからまたオマエが立ち上がって炎野にアッパーを
 だすが、そこで躱されて乱舞を受ける……いいな?」
お姉さん
「ダメよ、そんな小さな声じゃあ倒れた
 サイキョーダーには聞こえないわ!!
 もっと大きな声で、お願いっ!!」
子供達
「サぁぁぁぃイキョょぉぉぉーダぁぁぁぁぁぁっ!
サイキョぉぉぉぉダぁぁぁっ!」

喉もさけんばかりの子供達の絶叫が響く、声に応じて、勢いよく悪ボスを押しのけ、サイキョーダー立ち上がる!

サイキョーダー
「うおおおおおおおおっ!俺は負けないっ」
お姉さん
「やったわ!みんなの心がひとつになったのよ」
悪ボス
「なっなにぃっ!馬鹿なぁっ」
サイキョーダー
「ふ…みんなの熱い想いが俺を蘇らせたのさ!」
びしいっと悪ボスを指差す。

サイキョーダー
「みんなの遊園地を荒らし、平和を脅かす悪ボスめ!
その野望…このサイキョーダーが砕いてやる!」
悪ボス
「ぐぬぬ…おのれぇサイキョーダーめぇ
タラバンバーゆけ!サイキョーダーをしとめるのだ!」
タラバンバー
「ウグオォォォォォォォォンンン」

悪ボスの命令を受け、ひたすらまっすぐに突っ込んでくるタラバンバー。

タラバンバー
「ウグオォォォォンンン!!!」
サイキョーダー
「させるかよっ!」

まっすぐに突き出されたハサミをがしっとつかむ。

サイキョーダー
「おっちろぉぉぉぉっ!」

相手の勢いを利用し、見事な一本背負いを決める。必死に受け身をとるタラバンバーだが、しかし…ごん
  着慣れないきぐるみを着込んでいるため、うまく動けず、もろに床に頭を打ちつけてしまう。

タラバンバー
(あうっ…ててて…て…しま…)
 
  何とか立ち上がったタラバンバーだったか、少々足がふらついてしまう。そこへ間髪入れず乱舞を叩き込もうとサイキョーダーが突っ込んでくる。
タラバンバー
(…ちょっ…ちょっとまっ…)
サイキョーダー
「おーおらおらおらおらおらぁっ」

有無を言わさず、蹴り乱打を浴びせるサイキョーダー。

タラバンバー
「ギュオォンォンォンォンォンォン」
サイキョーダー
「ファイナル!」

華麗にターンを決めつつ、とどめの後ろ回し蹴り炸裂。

タラバンバー
(げほっ)

見事にふっ飛ばされ、転がるタラバンバー。

サイキョーダー
「やったぜ」
お姉さん
「すごいわ!サイキョーダー」
子供達
「やったぁぁっサイキョーダー!」
悪ボス
「なにいぃぃ!我が最強の改造怪人が」
タラバンバー
(…う…いてぇ…)

ほとんど気絶寸前のタラバンバー、薄れゆく意識の中、子供たちの歓声、悪ボスの叫び…がかすかに聞こえる。

サイキョーダー
「最強!無敵!サイキョーダー!」

サイキョーダーの勝利の声が響く、そこでタラバンバー(本宮)の意識は完全に途切れ…
  タラバンバーは完全に沈黙した(笑)

悪ボス
「お、おのれぃ…… 今日のところはこれで引き下がってやる!! 次に会うときまで首を洗って待っているんだな!! ぐわははははははははははははは……(退場)」
戦闘員
「イ゛ーっ!!(二人がかりでタラバンバーを担ぐ)」

  去っていく悪役達、悪ボスは徹頭徹尾エラソーだったな……
   その後ステージ中央に立つお姉さんとサイキョーダー

サイキョーダー
「この世に悪のある限り!! 俺は戦い続ける!! すべての悪に鉄拳制裁!!」

  派手なアクションポーズを取った後……

サイキョーダー
「良い子の君たちも悪の道に走ってはいけないよ…… では、さらばっ!!(しゅたっ)」
お姉さん
「ありがとうサイキョーダー!! みんな、これからもサイキョーダーを応援してねっ!!」

  退場するサイキョーダーとお姉さん。
   その舞台裏……

火虎左衛門
「もとみー、いや、タラバンバーのヤツどうですか!?」
劇団員1
「ああ、着ぐるみの熱にやられて受け身を
 取り損なったみたいだな」
劇団員2
「安心しろ、頭を打ったみたいだが、大事はないようだ。 あと、汗をかきすぎて軽い脱水症状を起こしている みたいなんで、さ湯を飲ませてやっとくわ。 オマエは、写真撮影に行ってこい」
火虎左衛門
「はい、ありがとうございますっ!!」

  その後、サイキョーダーとお姉さんは
   「僕と握手」&「写真撮影」のために再びステージにあがる。

フラナ
「あーっ!! 僕、写真撮影券もらってないよ!!」
佐古田
(黙って看板を指差す)

  『サイキョーダーと一緒に写真に写ろう!!

   註
小学生未満のお友達に限ります』
フラナ
「僕、幼稚園児って言って……」
佐古田
「じゃじゃんじゃんじゃん(ムリだって(汗)の音色)」

  フラナと佐古田は握手だけにとどまったのであった……
   さて、写真撮影も終わり、アクションショーの全日程も終わり、
   控え室で一服する劇団の面々……

「失礼します、炎野君いますか?

  そこにひょっこり顔を出す喬、
   その後ろにはポニーテールの女の子。

大野
「ああ、それなら急場のバイトの見舞いをしてる」
「怪人役の人、新人さんでしたか」
大野
「よくわかるねぇ」
「投げのとき、背落ち(受け身)をし損なってましたから」
大野
「へぇ、オマエって見る目あるんだなぁ。 で、その後ろの女の子は?」
「獅堂環さんです」
大野
「いや、名前だけじゃあ解らん」
「炎野君から聞いてませんか? でしたら、彼から聞いてください」
大野
「……! そうか(にやにや)」
「そういうことです(笑)」
「(小声)なんで解っちゃうんだよぅ……(赤面)」
「じゃ、炎野さんのところに行ってきますね。 どうも、失礼しました」

  そのころ、ベッドのある部屋で……

火虎左衛門
「おい、起きたか?」
本宮
「う…… 炎野さん、俺、気絶してたんですか?」
火虎左衛門
「ああ、投げのとき受け身をし損なったろ?」
本宮
「はい」
火虎左衛門
「練習のとき、受け身は絶対に取れって言ったよな」
本宮
「……はい、すみませんでした」
火虎左衛門
「スマンな、ムリ言って。 もう、アクションショーには誘わねぇよ」
本宮
「……いえ、俺で良ければ、また使って欲しいです」
火虎左衛門
「なんでだ? あんな痛ぇ目にあっておきながら」
本宮
「俺…… 炎野さんがアクションショーやってる理由が 解ったような気がするんです……」
火虎左衛門
「(照れくさそうな表情で)へっ! イッパシのクチを ききやがる。また呼んでやってもいいが、 今度にはちゃんと受け身を取れるようにしろよ」
本宮
「(赤面)はい……」
火虎左衛門
「いや、冗談じゃなく……な。 行ってみれば見世物なんだが、アクション自体は非常に 危険なんだ。受け身ができなかったばっかりに身体が 動かなくなったヤツもいるって話だからな。 頭を打って脳内出血なんか起こしたら最悪だぜ?」
本宮
「そ、そうなんですか(ごくり)」
火虎左衛門
「ま、話はこれくらいにしておいて…… ホラ、バイト料(封筒を渡す)」
本宮
「そんな…… 迷惑かけておきながら、こんなの もらえませんよ」
火虎左衛門
「いーからとっとけって」
本宮
「でも……」
火虎左衛門
「そーか、そこまでいらんと言い張るのな。 よし、この俺が有効活用して、フラナ少年たちと 焼き肉を食いに行く…… ってことにしていいか?」
本宮
「そうですね、そうしてください(笑)」
「ほほう、私たちも混ぜていただけますか(ニヤリ)」

  扉が開き、喬登場。

火虎左衛門
「ああ、喬か、今日は遅かったな。 ……で、ナニをニヤついてんだ?」
「いえ、ちょいとオマエに会わせたい人がいましてね。 ……どうぞ、入ってください」

  おずおずと部屋に入る環。

火虎左衛門
「た…… 環じゃねぇかおい!!」

  しかし、火虎左衛門を見たとたんに頬を膨らせて……

「今日、ショーをやるって大門さんから聞いたよ。 ……なんで呼んでくれなかったんだよっ!! (ずんずんと詰め寄る)」
火虎左衛門
「お、落ち着け、頼むから落ち着いてくれっ!! (じりじりと後ろに下がる)」
「いままでは、いつも呼んでくれたクセにっ!! (じりじりと詰め寄る)」
火虎左衛門
「そ、それはオマエの受験勉強の為にだなぁ……」
「問答無用!! 空手パァンチ!!(ごすっ)」
火虎左衛門
「ほぶぅっ!! (吹っ飛び) くっ、いつもながらのグゥなパンチだぜ」

  一部始終を見物し、唖然とする本宮。
   共感して受けた頬の痛みをこらえつつ、肩を大きく震わせて笑う喬。

「本宮君、立てますか?  そろそろ二人にさせてあげたいのですが」
本宮
「あ、はい」
「ついでにあの二人も呼んできますか(^^;」

  退散する邪魔者ども(^^;

火虎左衛門
「ふぅ(ベッドに腰を下ろす) 落ち着いたか?」
「う、ん」
火虎左衛門
「オマエ、受験とかはいいのか?」
「息抜きだって必要なんだよ」
火虎左衛門
「だからってムリにアクションショー見ても しょうがねぇだろ?」
「そうじゃなくて、会いたいって思うときがあるでしょ」
火虎左衛門
「俺にか?」
「他に誰がいるんだよぅ。 聞いて欲しいことがあったんだ。炎野さんに」
火虎左衛門
「……わかった、悪ぃが先にハラごしらえに行かねぇか? みんなで焼き肉食いに行くことになってるからよ」
「でも……」
火虎左衛門
「息抜きが必要なんだろ?」
「わかったよ」
火虎左衛門
「よし、じゃあ行こうぜ」

  ちょうどその時、ドアが開き、喬が顔を出す。
   聞いていたとしか思えないタイミングだ(汗)

「話は終わりましたか? じゃ、行きますか?」
フラナ
「炎野さん、ごちそうになりまーすっ!!」
佐古田
「じゃんじゃあんじゃん(ごちそうさまの音色)」
火虎左衛門
「準備のいい奴だな、おい」
「たかれるうちにたかっておく、鉄則です」
火虎左衛門
「おいおい、元々はもとみーの金だぞ(汗)」
本宮
「俺は構わないですよ」
「(火虎左衛門に小声で)足りなくなったら 私も出しますよ」
火虎左衛門
「(小声)へっ!! 銀河一のお節介野郎が ……じゃ、行くかっ!!」
そして、焼き肉食べ放題の店へくりだす一行。

炎野
「さぁて、とりあえずもとみーよくやった、乾杯だ。」
フラナ
「かんぱぁ〜いっ」
佐古田
(無言でコップをあげる)

こうして、『やったぜもとみー!いっちょ食うか』パーティがはじまった。

本宮
「どうも、なんか悪いですね」
「いいんですよ、本宮君。実際、災難だったでしょ」
「でも、すごくよかったよ怪人役」
炎野
「まあ、ともかく今日はもとみーのおかげで助かった、
遠慮しねえで、たーんと食ってくれよ」
フラナ
「わぁいっ!いっただっきまーすっ」
佐古田
(早速、焼けた肉をぱくつきはじめる)
本宮
「おまえらなぁ…」
炎野
「まあ、いいじゃねえか。ほらお前も食え!
お前の稼ぎなんだからな」
本宮
「はい、じゃいただきます」

こうしてパーテイが続いていく…しかし、主賓のはずの本宮、ひたすら肉を焼く方にまわっていた…
  結果、本宮・喬が焼き係、炎野・佐古田がひたすら食べる係、環・フラナはマイペース…という役割分担になっていた。

フラナ
「(もぐもぐ)もとみー(ひょいぱく)たべなおぉ」
本宮
「フラナ、食べてからしゃべれよ」
佐古田
「(こくこく)…(表情も変えずひたすら食べる)」
本宮
「佐古田、お前少しくらい会話しろよ…」
炎野
「いいっていいって、ぼさぼさしてるとなくなるぜ」
「あのね、少しは焼く方も手伝ってくださいよ…」
本宮
「あ、俺もやりますから」
「いいのいいの、本宮君は主賓なんだから食べなきゃ」
「そうそう、すごいかったよねアクション。他のメンツとも引けを
  $B!(JF$B$H$C$F$J$+$C$?$h!W(J
「ほんとに、武道なにか習ってたのかい?」
本宮
「合気柔術を…もう幼稚園くらいからずっとやってます」
「どうりで…すごいねぇ」
フラナ
「すごいだろぉ(えっへん)」
本宮
「お前じゃないだろ(笑)」
その一方、食べまくっている二人…

炎野
「おーいここらへん焼けてるぞ、食わんなら、一帯まとめて食うぞ」
佐古田
「(しゅしゅしゅっ)…(巧みにはしを動かし肉を取っていく)」
炎野
「この…やるな、佐古田!」
佐古田
(表情も変えずに食べ続け、再びはしをのばす)
炎野
「負けるか!」
佐古田より一瞬早く、炎野がはしをすべらせ、肉をかっさらっていく。

佐古田
(無表情のなかにかすかに悔しさを秘めた顔)
炎野
「食い物に関しては負けんぞ」

ばちばちばちと視線が交錯する…

本宮
「佐古田の奴…」
「まったく…しょーがない人ですね…炎野君」
「でも、見てて面白いよ(ぱく)」
フラナ
「どっちが勝つかな?(はむ)」
炎野
「このっ負けるか!(しゅたっ)」
本宮
「はぁ…(空いたところに肉を置きながら)…炎野さん。そんな急が
なくっても、なくなりませんよ」
佐古田
(ひょいひょい)
「ちょっとちょっと佐古田君、そっちはまだ焼けてないよ、
こっちこっち」
フラナ
「(ぱく)なんかさぁ…こうして見ると、喬さんともとみーって
役割似てない?」
「うーん、似てるかもしれないね」
こうして、和気あいあい(?)とパーティは終わった。

炎野
「(ぽんと佐古田の肩を叩く)いい勝負だったな…」
佐古田
(無言で見かえす)
炎野
「また…勝負するか」
佐古田
(無言で頷く)
フラナ
「なんか…困ったコンビ結成だね」
「うん…(ちらっと喬を見る)ほんとに困ったコンビかもね」

一方、喬…長々と続いた伝票を前に、目の幅涙一歩手前の状態になっていた。

本宮
「(おずおず)…あの喬さん、俺…少しなら…」
「…いいんだよ、本宮君…ちょっと計算外だっただけ…」
本宮
「…すいません…佐古田の奴…」
「ほんとうにいいんだよ…(あああ、今月…)」

お互い新しいライバルを見つけ、満足気な炎野、佐古田。相変わらずのーてんきなフラナ。なんとも言い難い表情の本宮、環。ただ一人、遠い目の喬…ひたすら、めまぐるしい一日だった…



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