エピソード480『ど〜してこうなる!?』


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エピソード480『ど〜してこうなる!?』

晴れ、ところにより結界

吹利学校大学部の、それは去年(1996年)の春のことであった。
 一は、東北とは桁違いに早い春を満喫しながら、大学構内を歩いていた。大学院生になって、気楽な気分もあったのだ。式神二人(?) はのんびりとコートのポケットの中で昼寝中であったし、バイトを探す必要さえなければ天下太平の世のように、その時は思えた。
 しかしその時。
 一陣の風が、舞った。
 呪術的な風。式神がするっとポケットを抜け出し、一の肩に乗った。

「誰だよ、こんなところで術をつかっているのは?」

一般の学生たちは、突風に吹き散らされた髪をなでつけ、飛ばされかけたノートをおさえたが、それきりのこととしてそれぞれの行動に戻った。
 が、一の耳は、異様な声を耳にしていた。

?A
『これで判っただろう、俺たちの力が!』
?B
『馬鹿かお前は。ンなもんが何の役に立つんだ? これだ から UFO野郎は馬鹿だって〜んだよ。ただ、周囲と切り離しただけだろうが』

声の方向を、キノトがささやいた。校舎の裏手の、駐車場。そこに、結界があると。
 一は、足早に駐車場に向かった。
 一の傍らを、テニスラケットを抱えた新入生の女の子たちが通っていった。
 彼女たちの目には、何も見えなかったのだ。
 駐車場の真中に張られた結界も、その中にいる3人の青年も。

青年1
『君にこんな真似ができるか、豊中? できんだろうが』

結界の中にいる3人のうちで一番小柄な青年が、他の二人と対立しているようだった。

豊中
『確かにできないけどな、しかしできたからって何の役に 立つんだ?』
青年2
『この力があれば、宇宙人と交信できる』

一は、思わずズっこけた。
 式神二人も、盛大にため息をついた。
 結界の中で、豊中と呼ばれた学生が爆笑していた。

豊中
『おまえら、やっぱし馬鹿だよな〜。プラナリア以下だ』
青年1
『なんだと!?』
豊中
『芸のないセリフだな。とりあえず、面白い手品だったよ』
青年2
『お前に出られるものか!』

一は、どうしようかと考えた。
 一の力なら、こんなちゃちな結界は簡単に破れる。が、ここで術を使うのは、いささか気が引けた。それに、小柄な学生は別に危害を加えられているわけではない。

豊中
『人の出入りはできないというのか?』
青年1
『できるわけはないだろう』
豊中
『そ〜か、では試してみよう』(にやり)

すたすたと結界に近寄り、豊中は腕を突き出した。
 妙な角度に突き出したところから見ると、結界が見えているわけではないらしい。が、腕はいくらかの抵抗を受けはしたものの、結界の外に出て、再び引っ込められた。

豊中
『ま、物理的に出られない、というわけじゃないようだな。 心理的なものだろう?』
青年1
『……』
豊中
『外に出たくなくなるし、中に入りたくなくなる、という やつか。で、中の人間は外から見えるのか?』
青年2
『見えない』
豊中
『そのわりに、あそこでこっちを見てる奴がいるけどな?』

豊中が指さしたのは、一だった。
 気配を絶っているから、常人にはそこにいると意識できないはずの一を、たしかに豊中は指さしていた。

青年1
『……いないじゃないか』
豊中
『いるさ。そうか、結界のせいで見えないんだな? それ に今は外から見えないわけだし、そうかそうかやりたい放題やっていいんだな』

青年たちは、後悔したことだろう。
 豊中はにんまりと笑って、ショルダーバッグに片手を突っ込んだ。
 取り出したのは、不格好な機械のようだった。

豊中
『さ〜て、ほんじゃあ実験におつき合いいただきましょう かねっと♪』
青年1
『実験? なんのつもりだ!?』
豊中
『おまえらのヨタにつき合ったんだ、新作の実地試験くら いつき合ったってばちはあたらんよ』

青年1は、たぶん後悔している暇はなかっただろう。
 豊中の手にした機械が、火花を散らした。
 青年1はあっさりアスファルトに伸び、青年2は仰天し、豊中はがっかりした顔をした。

豊中
『う〜ん、なんでこんなに出力が……れ、焦げたなこりゃ』
青年2
『豊中、おまえ……』
豊中
『死んじゃいないって。気絶しただけだよ』
青年2
『あのなあ』
豊中
『いい加減、この狭い所にヤローといるのも嫌になったな。 じゃ、俺はそろそろ消える。
あ、ついでに結界とやらも消すか』

素人に、消せるものではない。
 一は、豊中が何をする気か、じっと観察していた。
 豊中は、ショルダーバッグ(工具いり)で青年2の顔面を思いっきりぶん殴った。
 結界を維持していたのは、青年2。それを気絶させればたしかに結界は消える。しかし、余波は思いっきり回りに悪影響をもたらす。
 一は、とっさに術を使い、余波を吸収した。
 豊中は、しっかりそれを見ていた。

後日……

「しかし、あいつを殴ればいいと良く分かったな」
豊中
「あ、あれか? あてずっぽうだ」
「……をい(^_^;)」
豊中
「言っておくが、観測に基づいた推理なんだからな」



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