エピソード483『土産は毒団子!?』


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エピソード483『土産は毒団子!?』

豊中が一週間ばかり姿を見せなかった、次の週のこと。

豊中
「何だ一、まだ生きてたのか。相変わらずパンの耳を食っ ているようだが」
「生きとるわい。何の用だ」
豊中
「土産を買ってきてやったぞ、感謝したまえ」
「天変地異の前触れか?」

キノトとキノエ(オコジョのまま)が、笑った。
 そしてオコジョの姿のまま後足で立ち上がり、

キノト
『お土産って、なんですか?』
豊中
「う〜む……離れてると何を質問されているのか、分から ん。肩に乗るか、手に触るかしてくれ。あるいは人間バージョンになるか」
「やめておけキノト、実験動物にされるぞ」
豊中
「するか。オコジョは貴重な動物だぞ。こいつを使うくら いなら人間を使う」
キノエ
『人間の方が下なのね(笑)』

オコジョの小さい前足が、豊中の手に触れた。
 質問を読みとって、豊中はニヤリとわらった。
 そして取り出したもの。一見すると何のへんてつもないクリームサンドビスケットのパックと、見るからに悪趣味な包装紙に包まれた箱。
 包装紙をのぞき込み、キノトが妙な顔をした。

キノト
『毒団子、って書いてあるみたいなんですけど』
豊中
「その通り。15個入りの団子のうち2個はトウガラシ入り、 というパーティーグッズだな。ちゃんと土産物屋で買ってきたんだぞ」
「お前なぁ」
豊中
「安心しろ、こっちはちゃんとしたクッキーだ」
「お前がそう言うと、全っ然安心できんのだがな」
キノト
『なんて書いてあるんですか?』
豊中
「へ? あ、そうか、日本語は書いてないもんな。ドリア ンクリームサンド、だよ」
「キノエ、キノト、お前らは毒団子の方にしとけ。これな ら、臭いで分かるだろ」
キノエ
「そうします、でもこれって何かルール違反みたい(笑)」
豊中
「お前はどうなんだ?」
「『私はいかなるときでも、誰からでも挑戦は受ける!』」
豊中
「?」
「昔、アントニオ猪木というプロレスラーはそう言ったの だ」
豊中
「ふむ、ならば受けるのだな(にやり)どっちだ。ドリアン クリームか? 毒団子か?」
「毒団子での一本勝負だ」
豊中
「そう来るか。キノエ、キノト、ちょっとこっちに来て手 に触っていてくれ。主に教えちゃだめだぞ」

十は目の前の団子をにらんだ。団子というよりも小さな大福餅と行った風情がある。おそらく中にはあんこが詰まっているに違いない、そしてうち二つには唐辛子が入っているのだ。

「(おちつけ、十。いいか、物事には必ず表と裏がある。そ の表裏は時により自在に変化する。その変化を見切ってこそ良き術師となりうるのだ。全神経を集中しろ、見切るのだ。そう、唐辛子「赤」つまり五行の「火」に対応する、俺の性は「土」。火は燃えることで土を生み出す。つまり火と土は相生の関係にある。やれる。勝ったぞ、十。お前の望む団子が火、つまり唐辛子だ。だから、本能的にやばいと思うものを取れ。それで、勝てる!)」

十はオーバーアクションで一つの団子を取った。

「豊中! 俺の勝ちだ!!(ぱくっ、もぐもぐ)」

意地悪げに見つめる豊中。ゆっくりと動く顎が一瞬止まる。

「う、うおおおおおおおおおおっ!?」
豊中
「水でも持ってきてやれ、キノト。(ため息) しかし、何 でたかが六分の一の確率にああまで馬鹿なこと考えるかね」

やれやれと行った表情で肩をすくめる豊中。悶絶した十を二匹の式神は半ば諦めたように見つめていた。
 とことこと走っていったキノトが、水を持って戻ってくる。
 さすがに、水の入ったグラスを運ぶにはオコジョの体は不便だったと見え、戻ってきた時は少年の姿をとっていた。

キノト
「持ってきました(諦め顔)」
豊中
「ごくろうさん。……おや?」

モンゼツしている一をにやにやしながら見ている人相の悪い男に、豊中は気付いた。御影である。

豊中
「御影の旦那でしたか。飯ですか?」
御影
「うんにゃ。茶を飲みに来た。それよりこいつはなにやっ てんのか、教えてくれんか、豊中」
豊中
「はあ。俺が買ってきた土産と、俺が知り合いにもらった 土産を持ってきたんで、俺が買ってきた方を食わせてやったんですが」
御影
「で、これか。どんな土産だ?」

悪趣味な包装紙を見て、御影はにや〜りと笑った。

豊中
「旦那も試しますか(無表情を装っている)」
御影
「ん? こっちはなんや」
豊中
「知り合いの女性からもらったバリ土産ですよ」
御影
「……ドリアンぅ?(うさんくさそー)」

このころになると、一は立ち直っていた。
 いつもながら、立ち直りの早い奴である。

「(こっそり) なあおい、買ってきてくれた女性ってだれ だよ」
豊中
「(ひそひそ) ユラだ」

一は複雑な顔。

御影
「食ったことはないなぁ」
豊中
「(相変わらずポーカーフェイスで) 熱帯フルーツでして ね。果物の王様と呼ばれているそうです」
御影
「まともなホテルには持ち込み禁止と聞くな」
「なんだ、知ってるんだ」
御影
「だから、食ったことはないって言っただろ」
豊中
「それじゃぁ、どうです。旦那もおひとつ(にや)」
御影
「ほほぉぅ、それはわしに対する挑戦だな(にや)。うけて たつぞ(ひょいぱく)」

口に放り込んでから御影は後悔した。

御影
「これは……味はともかく、臭いが……」
豊中
「どうです?(にや)」
御影
「(息を止めると速攻で噛み砕いて飲み込む) お、思った よりおいしいじゃない……か」
豊中
「それじゃぁもーひとついかがです?(笑)」
「ひとつと言わずに何個でも(笑)」
御影
「お、おう」

結局、ほとんど御影ひとりで食ったらしい。

御影
「あう……(胃袋が腐敗しとる〜)」
テーブルにつっ伏している)



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