エピソード489『ケーキが(涙)』


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エピソード489『ケーキが(涙)』

東京、能義家。
 話しは去年の6月に遡る。

「茜、紅茶は?」
「まだ用意してないよ〜。ちょっとお兄ちゃん、それあた しのっ!」
「いいじゃないかクッキーの一つくらい。それより、雅孝 はどうした?」
豊中
「いるって。紅茶はイギリスがいいぞ」
「フォーションしかないよ♪」

わいわいがやがや。

豊中
「ケーキ、箱から出したのか?」
茜の兄
「お〜う。べつに構わんだろ」
豊中
「いいんじゃないか?」

このころ、人間がいなくなった茶の間に一匹の猫が入ってきた。両手にすっぽり収まってしまうくらいの、小さな猫。

とてっ(食卓に飛び上がる)
くんくんくん(匂いをかぐ)
くゎぷっ(ケーキにかぶりつく)

知らぬが仏というやつである。

ぺろぺろかぷかぷ(無心に生クリームを食っている)

で、台所で。

豊中
「ああったく……茜、それよこせ。秀人、おまえがカップ 持ってってくれ。茜にやらすと壊すぞ」
秀人(茜の兄)
「そ〜やって甘やかすからいつまでたっても成長しないん だ茜が」
豊中
「一番甘やかしとるのはおまえだろうが」

若者二人+茜が茶の間に戻ると。
 茶の間のテーブルの上に仲良く並んだ、猫とケーキ。
 ケーキの生クリームは半分近く失われ、猫は顔中クリームだらけ。
 きちんと前足を揃えて座っていると、ケーキの飾りのようにも見える。

秀人
「ぶっ(吹き出す)」
豊中
「……なあ、これからは食う直前に箱から出そうぜ」
「あたしのケーキ(涙)」
「にぃ(訳:おいちかった♪)」



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