東京、能義家。
話しは去年の6月に遡る。
- 母
- 「茜、紅茶は?」
- 茜
- 「まだ用意してないよ〜。ちょっとお兄ちゃん、それあた
しのっ!」
- 兄
- 「いいじゃないかクッキーの一つくらい。それより、雅孝
はどうした?」
- 豊中
- 「いるって。紅茶はイギリスがいいぞ」
- 茜
- 「フォーションしかないよ♪」
わいわいがやがや。
- 豊中
- 「ケーキ、箱から出したのか?」
- 茜の兄
- 「お〜う。べつに構わんだろ」
- 豊中
- 「いいんじゃないか?」
このころ、人間がいなくなった茶の間に一匹の猫が入ってきた。両手にすっぽり収まってしまうくらいの、小さな猫。
- 猫
- とてっ(食卓に飛び上がる)
- 猫
- くんくんくん(匂いをかぐ)
- 猫
- くゎぷっ(ケーキにかぶりつく)
知らぬが仏というやつである。
- 猫
- ぺろぺろかぷかぷ(無心に生クリームを食っている)
で、台所で。
- 豊中
- 「ああったく……茜、それよこせ。秀人、おまえがカップ
持ってってくれ。茜にやらすと壊すぞ」
- 秀人(茜の兄)
- 「そ〜やって甘やかすからいつまでたっても成長しないん
だ茜が」
- 豊中
- 「一番甘やかしとるのはおまえだろうが」
若者二人+茜が茶の間に戻ると。
茶の間のテーブルの上に仲良く並んだ、猫とケーキ。
ケーキの生クリームは半分近く失われ、猫は顔中クリームだらけ。
きちんと前足を揃えて座っていると、ケーキの飾りのようにも見える。
- 秀人
- 「ぶっ(吹き出す)」
- 豊中
- 「……なあ、これからは食う直前に箱から出そうぜ」
- 茜
- 「あたしのケーキ(涙)」
- 猫
- 「にぃ(訳:おいちかった♪)」
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