エピソード498『恥ずかしいデッキ』


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エピソード498『恥ずかしいデッキ』

五月の末、晴れた日、松蔭堂の十の下宿。

豊中
「おーい一、いるか」
「応、豊中か。なんぞ?」
豊中
「引越祝いを持ってきてやったのだ」
「ををっ! これはビデオデッキ! どーゆー風の吹き回 しだ?」
豊中
「二千円でいい」
「そういうことね(^^; しかし、いいのか?」
豊中
「かまわん、スクラップにちょっと手を入れただけだ。再 生は出来るみたいだが、タイマー録画が怪しいぞ」
「映れば基本的に文句無いです、サンキュ」

一週間後、ベーカリー。
 からんからん

「ふう、豊中、あれどこで拾ってきた?」
豊中
「ゴミ捨て場」
「何か憑いてたろ」
豊中
「そうか?」
「これ見て見ろ」
豊中
「何じゃこりゃ」
「この一週間、勝手にあのデッキが撮った番組のリスト」
豊中
「ふむふむ……、おい、なんだこの『キューティハニーフ ラッシュ』ってのは?」
「セーラーソイルの後番、らしい」
豊中
「『CLAMP学園探偵団』?」
「CLAMPって漫画家の美形小学生三人組の話」
居候
『はぁ』
豊中
「爆裂時空メイズ、Hauntedじゃんくしょん、ケロケロちゃ いむ、超者ライディーン、はいぱーぽりす、機動戦艦ナデシコ、少女革命ウテナ、新世紀エヴァンゲリオン……、で、ウルトラマンティガ、真闇戦士ダーキオンにサイキョーダーか。ダメダメだな。これ」
居候
『頭痛がしてきた』
「どーもたちの悪いアニメファンが憑いたらしい」
豊中
「お前が撮ったんじゃないのか?」
「俺は 全日と、新日のプロレス中継が撮りたかったん だぁ……(;_;)」
豊中
「……(^^; で、どうする?」
「このデッキの根性を叩き直してやることに決めた」
豊中
「つーと?」
「幸いバイト代が出て今手元には金がある。今日借りてき たのは、UWFとRINGSのベストバウト集に、機甲武闘伝Gガンダム、疾風アイアンリーガー、初代ゴジラに、新ガメラ、勇者指令ダグオン、昭和残侠伝唐獅子牡丹、がある。これであのデッキに男の生き様と怪獣のロマンを叩き込んでやる。
他に何か無いか?」
豊中
「アラモと、地上最大の作戦。大脱走に大西部があるぞ。 後、荒鷲の要塞か」
「うむうむ」
火虎左衛門
「仮面ライダー全集にウルトラマン全集、古き良き円谷特 集スペクトルマンとかミラーマンも、でもって、科学忍者隊ガッチャマンにキカイダーやメタルダーも熱いな。宇宙刑事シリーズと五人戦隊シリーズもおまけで付けてやろう
どさどさ)」
訪雪
「だぁ、そんなにたくさん置いたら床が抜けちまう(汗)」
「え……(汗)」
「奥様は魔女とかモンティパイソン、笑点なんかは……」
火虎左衛門
「そんなモンはいらん!!」
「空飛ぶモンティ……」
火虎左衛門
「いらーん!!!!(ツッコミ裏拳)」
「しくしくしく」
琢磨呂
「タスクフォースとトップガンもいいぜ」
「わかった」
御影
「銀河英雄伝説を忘れるな。それからダイハード。T1と T2。七人の侍と荒野の7人。7人といえばワイルド7。
「なるほど」
訪雪
「儂ならまず、コンバトラーVにマジンガーZ。あ、『こ のまちだいすき』と『古代エジプトパズル』もいいなあ。あとは……(遠慮なし)」
「……むちゃくちゃですね、若大家(^^;;
よし、これだけあればあのデッキも更生するだろう。ご協力感謝します。
何なら上映会でもしましょうか?」
豊中
「一晩は無茶だって」
(無言でツカツカと近づいて、どさっとビデオテープを置く)
「あの……これは(汗)」
「だめよ、そんな偏った嗜好してちゃ。ちゃんとこーいう 良い作品も見なきゃ、じゃそー言う事で(にこ)」

いいたい事だけいって去っていく尊。

豊中
「で十。なんだそれ?」
(汗)
豊中
「どれどれ……『魔界転生』『帝都物語』? うっわー趣 味(笑)」
「まだある『山猫は眠らない』に……『眼下の敵』?(汗)」
豊中
「これは……(汗)」
「冗談なのか本気なのか……どっちだ?(汗)」

後日。十の下宿。

豊中
「どーなった、あれ」
「うむ、おかげでプロレスはこっちが忘れてても録画する ようになった」
豊中
「そりは結構。慣れりゃあ便利かもしれんな。憑いてるっ てのも。そーいや今週のティガ見てなかったな。(ぽちっ)」
「あ、ま、待てっ!(汗)」

そこには半ズボン姿の美形小学生三人の姿。

豊中
「これは、なんだ?」
「CLAMP学園探偵団……(滝汗)」
豊中
「ふーん」
「……」
豊中
「なぁ十」
「?」
豊中
「お前って本当に恥ずかしい奴だな」
「ほっとけぇぇぇぇっ!!(血涙)」



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