- 直紀
- 「に、荷物が……重い(げっそり)」
自分の身長とたいして変わらない紙を数本小脇に抱え、よたよたと帰路に着く。
- 直紀
- 「だいたい、一般家屋の立面図を1週間で書き上げろって
のがどだい無理だっつーに(ぶつぶつ)」
- SE
- 「ちりりん」
- 直紀
- (ん? 自転車??)
少し身体を脇に寄せる。自転車は直紀のすぐ傍を通りすぎる、と同時に
- 直紀
- 「(さわられたっ!!) ちょっと待てぇ! そこの奴っ!!(怒)」
自転車の男と目があう。暗くて顔はよく解らない……が、微かに『ちっ』というのが聞こえた。
- 直紀
- 「そこの人っ! そいつ止めてっ!!」
前方に人影、急に視界に入ってきた人に対し自転車は悲鳴を上げる。
- 直紀
- 「人の尻を触った挙句に『ちっ』だとぉぉっっっ!!(怒)」
- 痴漢
- 「うわっ!!」
スピードの落ちた自転車に追い付くと、横に周りこみ後輪に思いっきり蹴りを入れる。ガシャーンと静かな住宅街には少々の騒音を残し、自転車は持ち主もろともアスファルトに叩き付けられる。
- 直紀
- 「(ぜーぜー)……ふんっ!」
- 男
- 「……あいかわらず、気性の荒い女だな」
- 直紀
- 「人に口出しされる覚えはって……なんだ、あんたか」
- 加賀
- 「しかも口汚ないな。まったく」
- 直紀
- 「敵意を持ってる相手に対して、にこやかにしてられるほ
ど人間出来て無いんでね。ま、礼は言っておくけど」
- 加賀
- 「……まったく、何で俺がお前の身辺調査なんてやらなきゃ
なんないんだ(泣)」
- 直紀
- 「あ、あんたねぇ(脱力) 訳も解らずこんなむさいのに、
常にどっからかじーっと見られてる、あたしの気持ちも考えなさいよっ!(怒)」
- 加賀
- 「考えてどーしろと言うんだ?」
- 直紀
- 「……っ!(怒)」
- SE
- 「ドガッ!!」
- 加賀
- 「ぐぉぉぉっ!!(うずくまる) お、おま……(大汗) 鳩尾
蹴るか? しかもヒールの先でっ!!」
加賀が顔を上げた時には、既に直紀の姿は大通りの中に消えていた。
- 加賀
- 「も、もう二度と助けん! くっそぉぉ(ずきずき)」
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