夕刻、グリーングラス。
日がだんだん長くなる頃。
時刻の割に、まだ外は明るい。
と、扉が開いた。
入ってきたのは、大き目のかばんを肩からかけた女性。髪の毛を後ろできちんと束ね、黒いリボンでまとめてある。
黒い靴のかかとが、何かの拍子にかつん、と音を立てた。
涼しげな風が、どこからか一筋流れ込んだ。
語尾が消え入るような声で、応えがある。
幾つか置いてある丸イスに、花澄はすとんと腰を下ろした。
そのまま、黙って窓の外を見ている。
ユラは、お茶を包みおわった。
のろのろ、と、花澄が立ち上がる。
かなり疲れているらしい仕種だった。
こっくりと肯くと、花澄はまたイスに座り込む。
その目の前に、ほの甘い湯気をたてる小さなカップがそっと差し出された。
そのまま暫く、おだやかな沈黙。
半ば開いた窓から、さわさわと葉ずれの音が流れ込む。
こっくりと肯くと、花澄はまたイスに座り込む。
花澄はまた笑うと、一度目を閉じた。
そして、すぐ目を見開き、立ち上がった。
ユラの告げた金額を払うと、紙包みを受け取り、かばんの中に落とし込む。
深々、と頭を下げられて、一瞬ユラが反応しきれないうちに、黒いスカートの裾を翻して、花澄は外に出ていった。
閉まった扉に、ユラはちいさくつぶやいた。
ガラス越しに西日の射す、妙に夏めいた日のことである。