直紀の勤務先、ビデオ関係会社の事務所にて……。
- 直紀
- 「へ?今なんて?」
- 上司
- 「いや、うちのPRも兼ねてコンテストに出すから
-
- インディーズムービーを一本撮って欲しい、言うた
-
- んやが聞こえんかったか?」
- 直紀
- 「それは聞こえた、で。誰が撮るって?」
直紀の一言に反応し、周囲の人間がザッっと一斉に直紀を指差す。
- 直紀
- 「をい(汗)……あたし一人で撮れってかー(汗)」
- 上司
- 「手が空いてるの自分だけやもの、じゃ、宜しく。
-
- あ、経費だからって余りお金使わないでね。
-
- うち貧乏会社なんだから」
- 直紀
- 「いんぼーだぁー(じたじた)」
じたじた暴れる直紀。
そそくさと散っていく同僚達。
嗚呼、貧乏籤、貧乏籤。
トボトボと吹利商店街を歩く直紀。
- 直紀
- 「まぁったく……いきなり作品一本撮れ、はないわよねー
-
- 機材はともかく、役者とかシナリオとかどーすんのよ(怒)」
ぼやきながらもFLOWER SHOP Mikoの前を通りかかる。
店内ではお客と談笑しながら花束を作っている尊がいた。
- 直紀
- (あ、尊さんだ……ってそれどころじゃ無いのよね……)
何時の間にかベーカリー方面に足が向かう。
カラン、カランとベーカリーのドアが開いて御影が出てきた。
- 直紀
- (あ、御影さんだ……ってそれどころじゃ無いのよね……)
腕組みして考え込みながらトコトコ歩く。
ごん!
- 直紀
- 「(目から火花)痛ったー。ちょっと!何処見て歩……
-
- か無いわよね、電柱は(苦笑)……ん?」
電柱にはられている一枚の映画ポスター。
最近リバイバルされたヤクザ映画のポスターである。
大きなタイトルは『極道の女達』と墨痕淋漓書き付けられ、主人公らしい女
優がサラシ巻きで諸肌脱ぎ、白木の長ドスを構えている姿が写っている。
他にも「女の好いた腫れたは命(たま)の取り合いや!」等と物騒な事が書
きなぐられている。
- 直紀 :「(きゅぴーん!)ぽむ!
- 手を叩く)……こ、これだわっ!
-
- よし、お願いするだけしてみよう!尊おねーさーん!!
-
- (だっしゅ)」
拳を握り締めて脱兎の如く駆出す直紀。
- 尊
- 「ありがとうございましたー(お客を見送る)さてと、そ
-
- ろそろ店じまいしようかなっと(外の花をしまう)」
- 直紀
- 「……さーん(小さな声)」
- 尊
- 「?……誰かに呼ばれたような……」
- 直紀
- 「……とさーん(少し小さな声)」
- 尊
- 「直紀さん?」
かなり向こうから手を振りつつ突っ走って来る直紀。
ダッシュで駆け寄り。
- 直紀
- 「尊さんっ!(迫りっ)」
- 尊
- 「は、はい?(汗)」
- 直紀
- 「尊おねーさん、ビデオ出よう、ビデオっ(嬉々)」
- 尊
- 「は?……ビデオ?……(ぼふっ)」
- 直紀
- 「ビデオで映画撮りたいの、それに出演して下さいっ」
- 尊
- 「あ、ああああ(汗)映画!。映画ね……良かった(大汗)」
良かったって……尊、一体何を想像した?(汗)。
それはともかく。
- 尊
- 「でも、あたし……そういうのやった事無いし(照)」
- 直紀
- 「(ぶんぶんっと首を振って)どーしても出て欲しいの、
-
- だめ?(しょーどーぶつの目)」
- 尊
- 「う……(汗)(なんかすっごく断りづらい……)判りま
-
- した、あたしで出来る事なら」
- 直紀
- 「わぁい(喜)じゃ、明日にでもベーカリーで打ち合わせ
-
- しましょ!あたしまだ捕まえなきゃいけない人が居るから
- 直紀
- それじゃ」
再び疾風の如く駈けていく直紀。
呆然と見送る尊。
- 尊
- 「あ、何の映画か聞くの忘れた……(汗)」
凄い勢いで御影めがけて、疾走する。
- 直紀
- 「あ、いたいたっ!みぃかげさぁーんっっ!!」
ききぃっと止まり
- 直紀
- 「(ぜーぜーぜー)み、み……」
- 御影
- 「よくわからんが、落ち着け(^^;
-
- わしに何か用なのか?」
- 直紀
- 「御影さんっ!極道やりましょう!!」
- 御影
- 「あぁ??」
路上でいきなり『極道やりましょう!!』は、ないだろう。
周辺にいた人がざざっと遠巻きに眺めている。買い物帰りとおぼしき主婦
などは
- 主婦A
- 「聞きました、奥様?」
- 主婦B
- 「ええ、やっぱり……ねぇ(ひそひそ)」
まぁ、そんなことはお構いなしに
- 直紀
- 「あのね、今度ビデオ作ることになったんだけど、役が
-
- 御影さんにぴったりなのー(はぁと)ねっ、やろうっ!」
- 御影
- 「役って極道のか(汗)」
- 直紀
- 「マフィア系じゃなくって着流し仁侠のほうだよー、
-
- ねっ、お願いー!!」
- 御影
- 「ま、まぁやれってゆーならやるが。どこでやるんだ」
- 直紀
- 「場所はなんとかなりそうなんだけど、小道具とかまだ詳し
-
- いことは決まってないの。明日にでもベーカリーで打ち合
-
- わせしよーと思ってんだけど」
- 火虎左衛門
- 「ふっふっふ、俺がいるのを忘れたか?とうっ!!」
- 直紀
- 「れ?炎野さん??(きょろきょろ)」
どこからか直紀と御影めがけて急降下する。このまま着地していれば華々しく
炎野火虎左衛門、参上!!と相成ったわけだが……
- 御影
- 「(がしっっと足を掴む)うおりゃあっ!!」
- 火虎左衛門
- 「のをっ!!(びたーん!!)」
- SE
- 「ずしゃぁっ」
- 御影
- 「お、すまん。条件反射でつい」
- 火虎左衛門
- 「鬼…… 鬼神力とは……(がくっ)」
- 御影
- (わしはオロかいな、
-
- エア・スタンピートで踏みつけた方がよかったか?)
どたどたとこちらに走ってくる音がして
- 喬
- 「また、人様に迷惑かけて…ってなにをやってるんです、
-
- オマエは(^^;」
- 火虎左衛門
- 「……(きゅう)」
- 直紀
- 「炎野さーん、だいじょぶ?(つんつん)」
- 火虎左衛門
- 「てやぁっ!!(と、ヘッドスプリング)なんのこれしき!
-
- 話は聞かせてもらったぜ、直紀ちゃん!!
-
- 小道具類はこの俺にまかせろ!
-
- 実家に帰ればストックなんざずらりとあるぜ!!」
- 直紀
- 「そーなんですかぁ、助かりますー!!あ、あとね殺陣とか
-
- も教えて欲しいんだけど、いい?」
- 火虎左衛門
- 「まかせろ(ぐっ)おい、喬!おまえも手伝え」
- 喬
- 「まぁ、かまいませんが、その前に……
-
- ハナ血くらいさっさと拭きなさい
-
- (ポケットティッシュを投げつける)」
下準備、完了?-------------
直紀の自室
- 電話
- 「てるるる、てるるる〜」
フローリングの床にこれでもか!とばかりに置かれた資料の山、山、山。
先ほどからひっきりなしに電話が鳴り響く。
- 紘一郎
- 「来いと言ったから来たんだが……なんだこの状態は(呆)」
- 直紀
- 「あ、紘一郎っ!電話取って、でんわー!!」
- 紘一郎
- 「(はぁ)はい、柳です。はい……え?料亭??はぁ、担当
-
- と代わりますんで、少々お待ちください」
- 直紀
- 「もしもし、あ、はい!ええ……あ、ほんとにいいんですかぁ
-
- はい!ありがとうございますー!!」
がちゃん。
- 直紀
- 「よぉし!撮影場所げっとぉ!!(ぐっ)紘一郎こっち
-
- こっち〜。はいっ、これっ!(どさどさどさっ)」
- 紘一郎
- 「な、なんなんだ。これは」
渡されたものは仁侠、極道関係の資料。
- 直紀
- 「シナリオ考えんの手伝ってっ(極上笑顔)」
- 紘一郎
- 「…………………………」
- 直紀
- 「(じーーーーーっ)」
- 紘一郎
- 「やだ(きっぱり)」
- 直紀
- 「ひどいぃぃ、さてはあたしのこと愛してないのねっ」
- 紘一郎
- 「馬鹿なこと言ってる場合か(ぐりぐり)」
- 直紀
- 「みゅー、んじゃあ撮影手伝ってよぉ。人手が足りないの〜」
- 紘一郎
- 「役者じゃないならまあ、かまわんけど(^^;」
ミーティング-------------
かららん
- 尊
- 「あら?直紀さんまだ来てないのか。観楠さん、コーヒー
-
- 貰えますか?」
- 観楠
- 「いらっしゃい、尊さん。映画にでるんだって?」
- 尊
- 「もうそんなに話が広まってるんですか?直紀さんに拝み
-
- 倒されちゃって、つい。でも、実はまだ何の映画か聞いてな
-
- いんです(苦笑)」
- 観楠
- 「そーいえば、御影さんも似たようなとこ言ってたような…」
- 尊
- 「みっ御影さんも??」
と、尊が言ってるそばから、かららんと御影が入ってくる。
- 火虎左衛門
- 「よう、旦那。こっちこっち」
- 喬
- 「こんにちは、御影さん」
- 御影
- 「おう、(きょろ)柳さんはまだか」
- 火虎左衛門
- 「女の仕度は時間がかかるのが相場ってもんだ」
- 喬
- 「経験者は語る…ですか(にやり)」
- 火虎左衛門
- 「お、俺のことは別にいーだろっ!(焦)」
- 尊
- 「御影さんも、直紀さんと待ち合わせですか?」
- 御影
- 「ああ、柳さんに映画の出演を頼まれて。今日ここで
-
- 打ち合わせをするんだが、(きょろ)まだ来てないようだな」
- 尊
- 「あたしも、直紀さんに映画に出演してくれって言われて
-
- 今日打ち合わせなんですけど」
- 御影
- 「……」
- 尊
- 「……」
- 直紀
- 「あ、集まってますねっ!遅くなってごめんなさーい」
- 尊
- 「直紀さんっ!!(迫る)」
- 直紀
- 「わぁっ!あーびっくりしたぁ。どしたんです?」
- 尊
- 「(小声)あたし、相手役が御影さんなんて聞いてないですよ
-
- (真っ赤)」
- 直紀
- 「あれ?……言ってなかったっけ?」
- 尊
- 「聞いてませんって(赤面)」
- 花澄
- 「……見たいっ!(握り拳)」
- 直紀
- 「え?」
- 花澄
- 「見たい、ですっ!直紀さん、極道の妻の格好、されるん
-
- ですって?」
- 直紀
- 「はいぃ?!」
情報が、どこかでひずんだらしい。
- 花澄
- 「え、だって、御影さんが極道の格好をして、直紀さんが
-
- 極道の妻の格好をされるって聞いたんですけれども?」
- 直紀
- 「だ、誰から聞いたんですか?それ(^^;」
- 花澄
- 「たしか……炎野さんだったかしら?」
- 喬
- 「また、オマエとゆー奴は!(さっくり)」
- 火虎左衛門
- 「きゅう」
- 一同
- 「………(^^;」
- 直紀
- 「あ、ええっと。あたしは、監督兼役者ってとこですけど
-
- そんな重要な役はやんないですよ。第一妻の役なんて…
-
- (ちらりと尊を見て)尊おねーさんに恨まれるのヤだし」
- 尊
- 「なっ、直紀さんっっ!!なんでそーなるんですかっ
-
- (さらに真っ赤)」
- 花澄
- 「でも、極道のかっこはなさるんですよね?」
- 直紀
- 「うん、そのつもりだけど?」
- 花澄
- 「着付け、お手伝いしますから。見せて下さいねっ(嬉々)」
- 直紀
- 「な、何で花澄さんってば、そんなに嬉しそうに…
-
- ありがたいけど(汗)」
- 花澄
- 「好きなんです、そういうの(にこにこ)」
- 直紀
- 「ま、いっか。さぁって打ち合わせしましょっ!」
- 尊
- (ご、極道の女って(汗)御影さんの妻役?……で、この
-
- メンバー……)
揃い踏みしたメンバーに、そこはかと無い不安感に襲われる尊。
頬を伝う一筋の冷や汗、いや、それにしては顔が紅いが(笑)。
- 直紀
- 「……それでね、きりゅーいんはなこの生涯とか極道の妻
-
- 達みたいな路線でいこーと思うの」
- 尊
- 「え? き、鬼龍院? 極道の妻達?……というと……
-
- ……こほっ(咳払)……(キッと斜に構えて)
-
- 『御集まりの親分集皆々様に申し上げます。
-
- 大親分亡き後、この組は跡目がおらんさかい、うちが
-
- 仕切るよって。あんじょうたのんます』」
- 直紀
- 「姉さん!(尊さんノってるぅ)」
- 尊
- 「『ガタガタ騒ぐな!……よろしゅう……御座いますな?』
-
- ……こ、こんな感じで良いんでしょうか(照)
-
- あ……(我に返る)い、今のカットして下さい(赤面)」
- 直紀
- 「ええ〜っ、今のすっごく良かったのに〜」
- 尊
- 「そんな……恥ずかしいですよ、やっぱり」
- 観楠
- 「(尊さん、かっこいいなぁ)」
カランコロン。
- 観楠
- 「おや、3人そろって。いらっしゃい」
- 十
- 「かくかくしかじかとゆーわけでパンの耳ください」
- 豊中
- 「だからそのあほな説明はやめろと」
- ユラ
- 「いぢましいと言うかなんと言うか」
- 直紀
- 「あ、ねぇねぇ! 一さんも映画出よう映画!それで御影さん
-
- と決闘するの!(笑)」
- 十
- 「ダンナと決闘? 嫌だぁ、まだ死にたくないぃ!」
- 直紀
- 「えぇーっ、そんなぁ。一さんにも出てほしいのに。ね、
-
- お願い(しょーどーぶつの目)」
- 十
- 「(はう……こ、こんな目で見つめられたら……)
-
- う、うん」
- 直紀
- 「わーい、ありがとーっ!」
- ユラ
- 「へぇ、面白そうですねえ」
- 直紀
- 「でねっ、御影さんが極道でね尊さんがその妻みたいなの
-
- やりたいのー(満面笑顔)」
- 豊中
- 「こいつは上映会をしなくちゃいけませんねぇ、御影の旦那」
- 居候
- 『赤くなっとる赤くなっとる』
- 御影
- (無言で殴る)
- SE
- 「ごすっ」
- 豊中
- 「(頭をかかえて)……旦那、グーで殴らんでくださいよ。
-
- ……痛ひ(涙目)」
- 御影
- 「尊さんに漣丸でざくざく、ってやられたほうが良かった
-
- か?」
- 尊
- 「うふふふふふふ」
- 豊中
- 「み、尊さん……目が据わってるんですけど……(汗)」
- 居候
- 『ぐ、ぐーだ。ぐーのほうが良いぞ、若いの(汗)』
- 本宮
- 「(へぇ……映画かぁ……)」
この日、本宮はフラナ、佐古田と共に斎藤家へ招待されていた。
瑞希の「教育」を回避するためにベーカリーでの出来事を余さず話したとし
て、それをいったい誰が責められるだろう?
- 花澄
- 「うーん(悩)」
- 尊
- 「花澄さん、どうしたんですか?」
- 花澄
- 「あ、丁度良かった。ちょっとちょっと」
- 尊
- 「はぁ?」
花澄にくっついて、衣装の並ぶ部屋へ入る尊。
- 花澄
- 「イメージとして、この留袖がいいと思うんだけど、
-
- ちょっと羽織って……あ、やっぱり」
- 尊
- 「丈が少し足りないみたい(汗)」
- 花澄
- 「まあ、それは上げがしてあるから、それをほどけば
-
- 良いと思うんだけど……後は、晒し布買ってこないと」
- 尊
- 「??」
- 花澄
- 「尊さん、ウエスト細いんだもの。着物って、元々ずん胴の
-
- 日本人に似合うように作ってあるから。ええと…これくらい
-
- かな?」
そこら辺を引っ掻き回して帯を引っ張り出し、それをくるくると尊に
巻き付ける。
- 尊
- 「あ、あつい(汗)」
- 花澄
- 「甘い、尊さん。この上に襦袢と着物が来るの。確か雪の
-
- 降るシーンがあるから、紗だの呂だのは着れないし」
- 尊
- 「(な、何か花澄さん、目の色が変わってる…)」
- 花澄
- 「後は直紀さんでしょ。彼女はきちんと上げを縫った方が
-
- いいし…あ、でもその前に炎野さんに許可とらなきゃ……。
-
- はい、わかりました。後はこちらで用意します(にこにこ)」
- 尊
- 「は、はあ……(汗)有難う、花澄さん」
- 花澄
- 「いいえ(にこにこ)。奇麗な人たちがもっと奇麗になる
-
- お手伝いだもの。楽しくって」
- 尊
- 「………(大汗)」
着付けを済ませ、上機嫌の花澄とともに撮影場に姿を表わす尊
- 尊
- 「あの……どうでしょうか(照)」
- 瑞希
- 「わ、みこちゃんきれー」
- 花澄
- 「ふふっ、やっぱり留袖似合いますねえ」
- 直紀
- 「御影さん、尊さんになんか言う事があるでしょお?(にこっ)」
- 御影
- 「え、いや、わしは……(大汗)」
- 尊
- 「(じっっと見つめる)似合い…ませんか?」
- 瑞希
- 「(心の声)言え、言うんだ!御影さん」
- 御影
- 「その……奇麗ですよ、凄く」
- 尊
- 「(かぁぁ)あ、ありがとうございます」
尊と御影が盛り上がってる中、直紀はなぜか肩を抱いてうずくまっている
- 花澄
- 「直紀さん、なになさってるんです?」
- 直紀
- 「き……聞いてる方が恥ずい(むずむず)」
- 直紀
- 「あ、そーいや最初のシーン、ヒットマン役どーしよ。
-
- エキストラも、もーちょっと欲しいとこよねぇ(うーん)」
- 火虎左衛門
- 「あんまり予算ないんだろ?俺の知り合いに頼んでも
-
- いいけど、どーする?」
- 瑞希
- 「ふふっ、心配ないわ直紀さん。こいつが責任持って
-
- やらせて貰うからっ(笑)(ぽん、と肩をたたく)」
- 本宮
- 「なんで俺がぁっ!」
- 瑞希
- 「いいじゃない、あんたが三人の中で一番頑丈で強いんだし
-
- まだあるわよ、御影につっかかってぶっ飛ばされるチンピラ1
-
- とか殴り込みで直紀さんにばっさり切られる雑魚その一とか
-
- みこちゃんに切りかかろうとして、返す刀でさくっといっちゃ
-
- う役とかあたしに逆らって平手打ち食らう、若いもんの役
-
- とか…」
- 本宮
- 「…思いっきりやられ役ですね」
- 瑞希
- 「なによ、やられ役のほうが難しいのよ、だからあんたに
-
- 頼んでんじゃない」
- 本宮
- 「瑞希さん…(ちょっとジト目)いつ…俺に役を頼みました…」
- 瑞希
- 「(ぽりぽり)そーいや、むりやり引きずり込んだんだっけ
-
- かな…」
- 火虎左衛門
- 「まぁ、もとみーならタッパもあるし、殺陣もそこそこでき
-
- るしな」
- 直紀
- 「本宮君、頼んでいい?(じぃっ)」
- 本宮
- 「(あー(^^; 女の人のこーゆー目って弱いんだよなぁ)
-
- ……はぁ、やらせて貰います」
- 瑞希
- 「よっし、よくいった!それでこそ男の子っ!!(ばしばし)」
キャスティング監督、総指揮、尊の片腕役 :柳 直紀如月組跡目 如月 尊役 :如月尊如月組若頭? 御影 武史役 :御影武史敵対組、斎藤組の後妻 斎藤 瑞希役 :斎藤瑞希斎藤組組頭筆頭 一十役 :一十レフ版持ち :大門喬 (平塚花澄)カメラ :岩沙琢磨呂、斎藤瑞希(カメラマン兼任)衣装着付け、メーキャップ :平塚花澄チンピラ役、エキストラなど :スナフキン愛好会衣装提供、演技指導 :炎野火虎左衛門小道具・照明 :豊中雅孝特殊効果 :キノエ、キノト、炎野火虎左衛門救護班 :小滝ユラ特殊効果対策班 :柳紘一郎資料提供・松蔭堂救護班、現わる!-----------------
- 直紀
- 「駄目じゃないですかぁ御影さん、エキストラ本気で
-
- なぐっちゃ。もう次のシーンの用意出来ちゃってんのに、
-
- このアザ、消えませんよ」
- 御影
- 「本気だった訳やないんやけどなあ、まずかったかんかなあ」
- 直紀
- 「まずいも何も。さっきの殴り合いの前のシーンを、これか
-
- ら撮らなきゃなんないんですけどっ(汗)」
- 御影
- 「あーー。そりゃ、確かに間抜けだ(大汗)」
- 直紀
- 「困ったなぁもう…」
- 豊中
- 「柳さん、そーゆーんだったら、いい人知ってるんですが」
- 直紀
- 「え、ほんと?」
- 十
- 「(豊中の襟首を掴んで)だめです」
- 豊中
- 「だが一、背に腹はかえられんぞ」
- 十
- 「背と腹以前だ。「あれ」だろ?俺はいやだぞ」
- 直紀
- 「えー、どういうこと?え、ユラさん?あ、納得。たしかに
-
- こないだの肺炎かかりかけ事件以来、少々のことじゃ体調
-
- 崩さなくなったし」
携帯電話を取り出す直紀。
- 直紀
- 「もしもし…あ、ユラさん?…そう、今映画撮ってるんだけ
-
- ど、エキストラの子がアザ作っちゃって…出番まで?うん…
-
- あと一時間位。え?大丈夫?なんとかなる?よかったぁ、
-
- じゃ、待ってまぁす!」
豊中をものかげにひきずっていく一。
- 十
- 「…豊中、おまえ余計なことを」
- 豊中
- 「だが、現にいなきゃ困るんじゃないか。
-
- ま、俺はキャストじゃないから、怪我する心配ないしな」
- 十
- 「…ほー…そうか。怪我する心配ないか…
-
- (みしめきどかぐしゃぼき)」
自転車をとばしてくるユラ。
- ユラ
- 「なおきさーん、おくれてすいませーん、怪我人って…」
- 十
- 「まず、これ(豊中を突き出す)」
- 豊中
- 「(力一杯)いらんっっっ!このくらいならほっときゃ
-
- 治るっ!」
- 居候
- 『ひわぁぁぁ(汗)』
- 直紀
- 「……なんか病院行くのが嫌でだだこねてるよーにも
-
- 見えるなぁ(笑)」
- 十
- 「そんな生易しいもんじゃないですよ(^^;」
- 直紀
- 「そなの?ユラさんの薬よく効くのに……」
- 十
- 「いや、薬が精製されるまでに数々の人た……(びくぅっ!)」
- ユラ
- 「一、楽しそうねぇ(にっこり)何を話してたのかしらぁ?」
豊中をひっ掴み仁王立ちのユラ
- 十
- 「なっ(汗)いや、なにも話してないぞ!あ、俺そろそろ
-
- スタンバらないと(滝汗)」
そそくさとその場を立ち去ろうとする、一
- ユラ
- 「待ちなさい、一。ここ切り傷があるわよ。すぐ済むから
-
- 豊中と一緒に、こっちにいらっしゃい(にっこり)」
- 直紀
- 「あ、ほんとだ。近くで話してたけど気付かなかったぁ。
-
- ユラさんって良く気のつく人なんですねぇ(尊敬)」
- 十
- 「いやっ!大丈夫だ、これくらい怪我のうちにも入らんっっ!!」
- 直紀
- 「だめですよぉ、破傷風とかになったらどーすんですか?
-
- じゃ、ユラさんお願いしますね(にこ)」
- ユラ
- 「まかせといてっ!さ、いくわよ、二人とも(笑)」
夜…一人近くの公園を散策する如月組組長。
突然、何かに気付いたようにふりむく。
- 如月
- 「誰だ、そこにいるのは…」
ザッ…
突然、茂みから若い男が現れる。その手には、ぎらりと光る短刀が
握られていた。背の高い黒髪の男、人の良さそうな糸目…しかし…
その表情は冷たく凍り付いていた。
- 男(本宮)
- 「如月の親分…命(タマ)とらせてもらいます…」
- 如月
- 「貴様…どこの組みのもんや…」
- 男(本宮)
- 「答える義務はありやせん…」
- 如月
- 「ぬかせ…」
す…っと壮年とは思えない素早さで男の手をはらおうとする。
しかし、これをなんなくかわす男。
- 如月
- 「おのれ…」
- 男(本宮)
- 「俺を…ただの鉄砲弾だとお思いですかい?…親分」
にやり…と鋭い笑みを浮かべ、一瞬にして間合いを詰め…
どんっ!と…身体ごと組長に突っ込んでいく。
- 如月
- 「ぐっ…ごぼっ(口から血が溢れる)」
- 男(本宮)
- 「(くくくっ)…終わりだ…」
力を込めて小刀を引き抜く男。抜くときの返り血で全身血で真っ赤に
染まる…
- 男(本宮)
- 「へへ…これで如月も終わりだ…へへ…あははははっ」
笑いながら走り去っていく男。
- 如月
- 「う……みこ…と…」
舞台裏00
- 直紀
- 「はいカットぉ!いいぞ、なかなかのワルぶり!」
- フラナ
- 「もとみー凶悪ぅ」
- 本宮
- 「うわ…べっとり…」
全身血糊をべったりとつけたまま戻ってくる本宮。
- 御影
- 「いや、そうしてるとホンマ人殺しの後だな、これで外歩い
-
- た日にゃ職務質問どころじゃすまんぞ」
- 本宮
- 「え…まあ、ほんとに…つい…のっちゃって…」
- 瑞希
- 「な〜んか演じはじめると、夢中になる質ね〜」
- フラナ
- 「でも演技うまかったよぉ、もとみー」
- 本宮
- 「そうかな…(照れ)」
- 直紀
- 「あ、本宮君!次、次、御影さんに絡むチンピラで入るから
-
- すぐ着替えて」
- 本宮
- 「あ、はい、ちょっと待っててください」
- 尊
- 「えーと、それ終わったらあたしに切られるシーンなんだけ
-
- ど、合間にちょっと切る練習させてくれる?」
- 本宮
- 「そうですね、切られ方ももうちょっとやっときたいし…」
- 瑞希
- 「そーだ、あたしの次のシーン…組の若い者に気合を入れる
-
- 場面で…平手打ちくらう役だから…痛かったらごめんね」
- 本宮
- 「痛かったらて…手加減してくれるんじゃ」
- 瑞希
- 「あたし、手加減て苦手なのよ(キッパリ)」
そして…
- 本宮
- 「はぁ…なんか…おもいっきりしばかれる役勢揃いですね」
- 十
- 「(ぱらぱらと台本めくる)…でもこれ、しばかれ役みんな
-
- お前の名前で書いてあるぞ」
- 本宮
- 「…俺…生きてクランクアップ迎えられるでしょうか…」
- 豊中
- 「安心しろ、心強い救護係がいるから(にやり)」
- 本宮
- 「そうですか?よかった(ほっとした表情)ちょっと心配し
-
- てたんですよ」
- 十
- 「ああ、あいつな…(ううむ、教えるべきか)」
組長の墓前。すでに夜も更け、誰もいない棺の前でぎゅっと位牌を握り
占める。
- 尊
- 「(……仇は必ず!でも……)」
憂いを帯びた姿は疲れのためか…だが目だけは決意に満ちていた。
- 御影
- 「姐さん、やはりここでしたか」
- 尊
- 「御影はん、来客は?」
- 御影
- 「客は全部、直紀の姉さんが取り仕切ってます」
- 尊
- 「直紀が…そう」
ふっと、細く息をはく。沈黙
- 御影
- 「姐さん…気ぃ落さんといてください」
- 尊
- 「わかってます…あてがしっかりせんと」
- 御影
- 「姐さん、後のことはわしらにまかせてお休みになって
-
- ください」
- 尊
- 「その気持ちだけで充分や、甘えてはいられへん」
きゅっと表情を引き締める尊。
- 御影
- 「無理はなさらんでください、一番辛いのは姐さんなの
-
- ですから」
そっと、尊の肩を抱く御影。
- 尊
- 「…御影はん…あて…」
- 御影
- 「尊姐さん…」
見詰め合う二人…そして…舞台裏01
- 瑞希
- (じーっ)
- 尊
- 「…あのぉ…瑞希さん…」
- 瑞希
- 「んーどしたのみこちゃん?ほら続けて続けて、
-
- 練習時間ないんだぞぉ」
答えつつ、ハンディカムを二人から離さない瑞希。
- 尊
- 「立ち稽古まで…撮らなくても…緊張するじゃないですか」
- 御影
- 「…(ぽりぽり)」
- 瑞希
- 「これも、カメラの前で緊張しない為の訓練訓練、ほら次の
-
- シーン!みこちゃん、御影さんにそっと寄り添う!
-
- ほらぁ早くぅ(くす)」
- 尊
- 「でも…(真っ赤)その…」
- 瑞希
- 「ほぉら、御影さん。そっとみこちゃん抱きしめる!(くす)」
- 御影
- 「はい…(うう…瑞希さんに…何も言えん)」
そ…っと、ぎこちなく尊を抱き寄せる御影。
真っ赤になって抱き合う姿…しっかりと瑞希のハンディカムで
撮影されている。
- 瑞希
- (ふふ、メイキングオブ極道の女…今から楽しみ)
横から瑞希をつつく豊中。
- 豊中
- 「瑞希さん、そろそろ出番です。スタンバってください」
- 瑞希
- 「いいとこなのにぃ〜」
- 豊中
- 「俺が代わりに撮っときますよ(にやぁり)」
シーン02. 襲名…杯----------------------大広間。近隣の親分衆の集まる中、如月組7代目の襲名式が執り行われる。
- 尊
- 「(この中に……仇がいるかもしれへん)」
- 直紀
- 「姐さん、皆様お集りのようで……」
- 尊
- 「今、いくわ……」
すっと、直紀を従え。場に現れる。親分衆に向き直ると、キッと斜に構え
- 尊
- 「御集まりの親分集皆々様に申し上げます。大親分亡き後、
-
- この組はうちが仕切るよって。あんじょうたのんます。」
- SE
- 「姉さん!」
- 尊
- 「ガタガタ騒ぐな!……よろしゅう……御座いますな?
-
- (親分集を見渡す)」
- 親分集側近
- 「ほう、それはまた……細腕繁盛記、というところですかな?
-
- (嫌みな笑い)」
- SE
- 「どすっ(短刀が畳に突き刺さる)」
- 直紀
- 「なめてもろたら、困りますな(にこっ)」
- 側近
- 「貴様ぁ」
- 直紀
- 「動かんときっ」
小柄数本が、畳に刺さる。
- 直紀
- 「女やからって、うちらは、なあんも困りませんなぁ。
-
- 困るんは、あんたらとちゃいますか?」
にっと笑った顔のまま。
- 直紀
- 「(低めの早口で)女にメンツ潰されるんが、そんなに
-
- 恐いんか」
- 親分集
- 「なんやと!」
- 尊
- 「直紀、控え」
- 直紀
- 「せやかて姐さん……」
- 尊
- 「ええから、控えとき」
建前上、尊の口調はキツイが、目は笑っている。
曰く、「よくやった」と。
- 尊
- 「(親分集に向き直り)失礼いたしました。ご覧の通り
-
- この組には御影を始め、生きのいいのがそろっています
-
- よって、どうぞ御心配なく。この組のシマはうちらが立
-
- 派に守って見せます」
尊は暗に、こう言いたいのだ。
「うちのシマに手を出すな」と。
- 親分集
- 「ぐっ……ふん、後で泣かんこっちゃな」
- 直紀
- 「ふん、鳴く?鳴いてるのはどっちや(嘲笑)」
舞台裏02
- 紘一郎
- 「ほい、カットー(かちん)」
- 直紀
- 「ふい〜、終わったぁ(へなへな〜)」
- 紘一郎
- 「さっさと着替えて、配置につく!俺、これで上がるからな」
- 直紀
- 「はぁーい。あ、花澄さぁーん(ぶんぶんっ)
-
- 着物ほどくの手伝ってー」
- 紘一郎
- 「あ、いたいた。一さん、次のシーンなんですけど」
- 十
- 「次ってゆうと…ああ、如月組に挨拶代わりに舎弟何人かを
-
- なぎ倒すシーンな。あれが、何か?」
- 紘一郎
- 「姉キがどーしても、雷雨飛び交うなかっつーシチュエー
-
- ションに萌えまして(^^; 俺が結界張りますんで何かある前に
-
- 挨拶しとこうと思って」
- 十
- 「な、何かって(汗)」
- 紘一郎
- 「俺、結界張るの苦手なんすよ。(きっぱり)じゃ、がん
-
- ばって下さい(すたすた)」
- 十
- 「いや、がんばれって……こ、紘一郎君ーーーー!!(泣)」
シーン03. 誘いの手--------------------
人気のない工事現場
瑞希、御影がたたずんでいる…
- 瑞希
- 「…しつこい女と思うかもしれないわ…」
おもむろに口を開き、すっ…と御影の両頬をなぜる瑞希。
- 瑞希
- 「あたしの組にいらっしゃい、悪いようにはしないわ
-
- あんな、親分も死んだちっぽけな組にいつまでの義理立て
-
- する必要無いわ。…ねぇ…お願い…
-
- でなきゃ、あたしは…あんたを…殺さなきゃいけなくなる…」
訴えるような視線。
黙って目をそらし、そっと瑞希の手をはらう御影。
- 御影
- 「…すいません、こたえる事は…できません
-
- わしには、せねばならんことがありますので」
払われた手を握り緊め、きっと御影を見据える瑞希。
- 瑞希
- 「…あの女ね…」
ぴく…かすかに御影の表情が変った…
- 御影
- 「…」
- 瑞希
- 「あの女の為でしょう!死んだ親分の為なんて嘘!
-
- あの女の為に…むざむざ命を捨てるって言うの!」
- 御影
- 「…わしは…器用に世の中を渡っては生きられんのです
-
- この話、聞かなかった事にします」
- 瑞希
- 「利口になりなさいよ!御影!」
瑞希の声に応えず、振り向きもせずに歩いていく御影。
御影の後ろ姿を見送り、きゅっ…と手を握り緊める瑞希。
- 瑞希
- 「如月尊、このままじゃ…済まさないよ…」
舞台裏03
- 御影
- 「はぁ(汗々)」
- 瑞希
- 「ふー、お疲れ様っ」
- 直紀
- 「すごいっ瑞希さん艶っぽ〜い」
- 瑞希
- 「ふふっ人妻の色気ぇ〜ぶいっ」
- 花澄
- 「いいなぁ…御影さん、うらやましいです(しみじみ)」
- 尊
- 「…そうですね」
- 瑞希
- 「んーみこちゃん、どうしたの(くす)」
- 尊
- 「いえ…(ぶすっ)」
- 瑞希
- 「ふふ、ひょっとして嫉いた?みこちゃん」
- 尊
- 「そ…そんなことないですよっ」
- 瑞希
- 「ふぅん、ほっぺひくひくしてるの…あたしの
-
- 気のせいかな(ぷにぷに)」
- 尊
- 「き、気のせいですよっ!(真っ赤)」
- 直紀
- 「(くす)瑞希さんて、いぢめっこだぁ」
台本見ながら御影に話し掛ける瑞希。
- 瑞希
- 「(服のすそくいくい)み〜か〜げさん!このシーンなんだ
-
- けどさ」
- 御影
- 「ん?どれだ」
- 瑞希
- 「東京であたしと御影さんがいたとこのシーン」
- 御影
- 「ん、ああ東京にてのシーンか、わしが尊さんの組に
-
- 戻るっちゅうとこだな」
- 瑞希
- 「うん、ここっであたしさ、御影さんのことを引き止め
-
- たくて…でもできないって、葛藤するシーンなんだけどさ。
-
- ここで、もっとこうらぶらぶモード出せないかなぁと思って」
- 御影
- 「ら、らぶらぶモードって、あーた(汗)そんな…」
いきなり焦る御影、くすくすと御影の顔をうかがいながら
- 瑞希
- 「ひょっとして、嫌なの?あたしとらぶらぶモードすんの」
くすくす…いたずらっぽい笑みを浮かべながら御影の顔を覗き込む瑞希。
ちょっと、顔近づきすぎのよーな気が…
- 御影
- 「いや…それは、瑞希さん人妻だし…人様の奥さんに(焦)」
- 瑞希
- 「(くす)演劇だよ…これって?それでも?」
- 御影
- 「そう言われましても(汗)」
- 瑞希
- 「ぶー、御影さんみこちゃんとはらぶモードできるのに、
-
- あたしじゃらぶモードやってくんないんだぁ」
急に拗ねた口調になる瑞希、でも目は笑ってる。
ひたすらあせりまくる御影。
- 御影
- 「(滝のよーな汗)あ…う…そんなことは…」
ぺろっと舌を出し、す…っと御影から離れる瑞希。
- 瑞希
- 「じょおだんだよっ(くす)御影さん、本気で焦ってるぅ〜」
- 御影
- 「あ、あのね…」
- 直紀
- 「瑞希さーん、そろそろ出番だよ〜」
- 瑞希
- 「あ、はーい」
てててて
- 御影
- 「はぁぁぁ、焦った…」
- 十
- 「いや、あんなダンナ、はじめて見ましたよ」
- 御影
- 「…お前、瑞希さんにあんな風に言われて平静を保てるか?」
- 十
- 「…う、それは…」
- 豊中
- 「瑞希さん、強い…」
いきなり如月組に乗り込んだ、真紅のスーツに身を包んだ女。その傍らには
長ドスを構えた男が、組のものに睨みをきかす。
- 瑞希
- 「(くすくす)一、そのへんにしときな」
- 十
- 「……」
値踏みするように、じっと尊を見て、はンと鼻で笑う。
- 瑞希
- 「ふぅん、あんたがあたしから御影をとった泥棒猫?」
- SE
- 「どすっ」
- 十
- 「瑞希の姐さん!」
ヒュンと瑞希の顔、数ミリの所に小柄が突き刺さる。
- 直紀
- 「……なんやて、も一度ゆうてみ。姐さんを罵倒すンのは
-
- うちが許さんよ(懐から小柄を見せる)」
- 尊
- 「(すっと手で制する)直紀……待ちぃ」
- 直紀
- 「姐さん!せやけどっ(きっと睨む)」
- 尊
- 「(正面向いて)瑞希はん、あんたも極道の女やったら……
-
- ケジメの取り方……判りますな?」
どすっ!と抜き身で畳に突き立てられる二本の白木の長ドス。
- 尊
- 「お互い恨みっこなしや、細工なんぞしてあらへんよって、
-
- どっちでも好きな方取り」
- 瑞希
- 「おもしろい!あたしの御影にちょっかいだしたこと、
-
- たっぷり後悔させてやるよっ(ちゃきっと長ドスを構える)」
- 尊
- 「(すっ…とドスを抜き瑞希をにらみすえる)女の好いた
-
- 惚れたは命(たま)の取り合い。往生しいや!」
舞台裏04
シーンの変わり目、何だかんだと片付けつつ
- 花澄
- 「瑞希さんに尊さん、かあ……いいなあ、御影さん」
- 御影
- 「……はあ?」
- 花澄
- 「そんな役なら、私が代りたいです……(深い溜息)」
- 御影
- 「………(^^;;;)」
シーン05 そして……---------------------
- 尊
- 「行くん?」
- 御影
- 「……すいません」
- 尊
- 「犬死に……するだけやで」
- 御影
- 「分かってます」
- 尊
- 「そんなことして、死んだ大親分が喜ぶと思うてるん?」
- 御影
- 「それも、分かってます」
- 尊
- 「……ほな、なんでやの!」
- 御影
- 「すいません、姐さん。
-
- わしは、こういう生き方しか、よぉしませんのや」
- 御影
- (長ドス片手に背を向ける)
- ひしっ!(注
- 背中にすがる)
- 尊
- 「必ず……帰ってきておくれ……(涙)」
- 御影
- 「行って……めぇりやす(振り返らず歩き出す)」
で、何故か降り出す雪。
舞台裏05
カチン☆
- 直紀
- 「はい!カットぉ!うーんやっぱり絵になるなぁ(笑)」
- 尊
- 「は、恥かしい……(赤面)」
- 直紀
- 「なーにを(笑)もーしっかり気分入っちゃって!涙だって
-
- 目薬使う必要無かったじゃない」
- 尊
- (赤面)
- 御影
- 「(荒い息)……ただいま……帰りました(にっ)」
- 尊
- 「……おかえりなさい(涙をこらえた笑顔)」
- 御影
- 「……さすがに、疲れました」
- 尊
- 「そう……。ゆっくりお休み……」
- 御影
- 「そう……します……(ぐらっ)」
- 尊
- (無言で御影を抱きとめる)
- 御影
- 「すいません、姐さん。血が……」
- 尊
- 「ええんよ。あんたが……御影はんが戻ってきてくれた。
-
- それだけでうちは幸せなんよ……。汚れるぐらい、どうっ
-
- てことあらへん」
- 御影
- 「……すいません」
その時……
物陰から飛び出した若いチンピラが、叫びながら銃を構えた。
- ??
- 「うわああああああああっ!」
- 御影
- 「姐さん!」
銃声。一発、二発、三発……
- ??
- 「は……はは……、やった……やったぞぉぉぉぉっ!」
- 御影
- (無言で手にした長ドスを投げる)
- ??
- 「やった(どすっ)……え? あれ?(倒れる)」
- 尊
- 「……御影はん? 御影はん!」
- 御影
- 「怪我は……ねぇですかい?(にっ)」
力のない笑みをうかべて振りむく御影の胸には、いくつもの赤黒い穴が穿た
れていた。
ゆっくりと膝をつき、仰向けに倒れる。
- 尊
- 「いや、嫌ァ! 血が……血が止まらない……」
- 御影
- 「……姐さん、汚れます」
- 尊
- 「あ、あかん……あかんえ……死んだら、あかんえ……。
-
- お願いや……うち……うち、まだ何も言うてへん。まだ何
-
- も聞いてへん」
- 御影
- 「姐さん……」
- 尊
- 「うちを、うちをひとりにせんといて……。なぁ……うち、
-
- ひとりは嫌やの……」
- 御影
- 「すいません……」
- 尊
- 「謝らんでええ。せやから、死なんといて……。御影はん
-
- ……。武史……うち……うちは……」
- 御影
- 「……分かってます、姐さん。……尊」
- 尊
- 「武史……(泣き崩れる)」
カチン☆
- 直紀
- 「カット! おっけー! 撮影終了っ、おつかれさまーっ!」
- 瑞希
- 「きゃーっ、みこちゃん大熱演ーっ! 熱っぅ〜い!」
- 花澄
- 「ほんとに、尊さん綺麗でしたねぇ」
- 尊
- 「ど、どうも(照)」
- 豊中
- 「瑞希さん、ちょっとメイキングのテープチェックします
-
- んで」
ハンディカムとテレビにつながるボードが怪しげ(汗)。
- 豊中
- 「う〜ん、ちょっとここ、使えないかな」
‥‥‥‥ビデオからノートパソコンに映像を取り込んで、いじくる豊中。
背後で見ている一、ユラ。
- ユラ
- 「何に使う気?」
- 豊中
- 「ポスターなんかも作れるかな〜、と思ってね」
- 十
- 「う”‥‥‥‥いいぞっ!(拳を握りしめる)」
- 豊中
- 「直紀さん直紀さん、こんなのどうですか」
切り出した画像はやや暗め。元がハンディカムの映像だからしかたがない。
倒れた御影をだきしめて泣き崩れる尊の映像である。
- 豊中
- 「もうちょっといじくって、ポスターにでも」
- 直紀
- 「おっけ〜っす(にこにこ)」
- 御影
- 「なにしとるんや」
何故か赤い顔の御影。画面をのぞき込み、無言で豊中を殴る。
- 豊中
- 「(痛いと思いつつ)照れなくってもいいでしょう、旦那。
-
- 素直じゃないんだから」
- 御影
- (無言の圧力)
- 尊
- 「何をしているのかしら?(さりげなく殺気)」
- 豊中
- 「(汗)え〜とですね、ポスター用映像なんかもあると便利
-
- かなと。旦那が照れまくってるようですが実は旦那‥‥‥」
- SE
- がしいっ
御影のごつい手に肩を掴まれ、声も出なくなる豊中。
- 御影
- 「こいつのいうことは気にしなくてええ」
- 尊
- 「そうですか?(真っ赤)」
- 瑞希
- 「みこちゃ〜ん、着物かえて〜!」
尊が立ち去った後。
- 御影
- 「余分なこといいおって(赤い顔)」
- 豊中
- 「(にやにや)旦那、本心を隠したかったら接触テレパスに
-
- 触れないことですよ」
- SE
- ぼくっ
まともに殴られた頭を抱える豊中を置いて、立ち去る御影。
- 豊中
- 「いってぇ………何もマジで殴らなくたって」
- ユラ
- 「馬鹿(冷)」
NGシーン(笑)----------------
- 尊&瑞希
- 「御影さんっ! どっちを選ぶんですっ!?(睨む)」
- 御影
- 「……あ、いや、それは……」
- 尊&瑞希
- 「?」
- 御影
- 「……あ、悪い。セリフ忘れた」
- 琢磨呂
- 「くおらぁ、人が笑いたいの我慢してカメラ回してやってる
-
- のに忘れるたー何事だ(爆)」
- 十
- 「ダンナ、本気であせっただろ?」
- 花澄
- 「(台本を見つつ、ぽそっと)尊さん、標準語に戻ってる……」
- 直紀
- 「結構、マジ、でしたよね」
- 尊
- 「(はっと気付いてばばっと台本を見直す)す、すいません
-
- リテークお願いします……
-
- (いけない……つい本気になっちゃった)」
- 御影
- 「尊さん、これ、演技。演技だってば(汗)」
- 尊
- 「あ……(汗)」
そして、休憩中の会話。
- 瑞希
- 「みーこちゃん(おもむろに後ろから抱き付く)」
- 尊
- 「わ!きゃ!瑞希さん。なんですか」
- 瑞希
- 「さっきのシーンさぁ、みこちゃん結構マジだったね。
-
- ぢつは本気で妬いてたのかなぁ?(くす)」
- 尊
- 「な、な、なんですか、いきなり!(真っ赤)そんなこと
-
- ないですっ」
- 瑞希
- 「ふぅん(くす)じゃ、今はそーいうことにしとく
-
- (くすくす)」
- 尊
- 「もう、瑞希さんてばっ(真っ赤)」
- 十
- 「いや〜、ダンナの冷や汗たらしてる顔なんか見たの初め
-
- てだよな(笑)」
- 御影
- 「まぁな……。美女ふたりに同時に言い寄られた経験なん
-
- か、ないだけにな」
- 十
- 「まぁたまた、そーゆーことを言う」
- 御影
- 「……十、おまえわしがその手のモテモテ系の人間だと思
-
- うか?」
- 十
- 「う……、そう言われると返答に困るが」
- 尊
- 「(ふぅん。……あ、あたし、どうして安心してるの?)」
- 花澄
- 「えと、ここでよろしいですか?(レフを持って)」
- 琢磨呂
- 「被写体の顔を良くみる! 顔の部分に光は当ってはいる
-
- けどその部分がカメラから見えない! もっと右、右!」
- 花澄
- 「(あたふた)」
- 琢磨呂
- 「………」
- 花澄
- 「(うろうろ)」
- 琢磨呂
- 「そこだ動くなっ!」
- 花澄
- 「(びくぅ!)」
- 琢磨呂
- 「よし、撮影開始!」
………………………………
- 花澄
- 「腕が………(レフ版が、ぐらっ)」
- 琢磨呂
- 「だーーーーーーーーー! カット! レフ、動かさない!」
- 花澄
- 「は、はーい」
- 琢磨呂
- 「もう一度! Go」
御影と尊が二人とも移動する
- 花澄
- 「(かたくなにじーっとうごかない)」
- 琢磨呂
- 「そこは角度を変えなきゃならん場面だってーーーーー!
-
- うおー畜生これじゃ撮影が進まない! 誰か専門家呼んで
-
- こいー!」
- 花澄
- 「専門家…専門家の方って、誰でしょう(おろおろ)」
- 直紀
- 「んー、次のシーンは御影さんと一さんの決戦、っと」
- 喬
- (レフを持ちながら)
-
- 「ジャガーノートvsガンビット……ですか」
- 直紀
- 「炎野さん、御影さんの特殊メイク終わった?」
- 火虎左衛門
- 「はっはっは、どーだ。ばっちりだろ」
- 御影
- 「うぉ、血糊がべとついて気色悪ぅ」
顔の半分が血まみれの特殊メイクを施された御影が、火虎左衛門の背後から
顔を出す。心構えができていても、そのインパクトはかなりのものだ。
- 十
- 「ダンナ、本気はナシですぜ」
- 御影
- 「努力はしよう。ただ血糊が目がふさがってるから、遠近
-
- 感がつかめん。手元が狂ったらスマンな」
- 十
- 「はぁぁうぅぅぅ(涙)」
- 直紀
- 「それじゃ用意いいですかぁ?」
- 琢磨呂
- 「こっちはいつでもOKだぜ!(カメラを構える)」
- 直紀
- 「はーい、それじゃいきまーす。シーン34カット8、よーい
-
- ……スタート!(カチンコっ)」
対峙する御影と十。唸る拳!
- 直紀
- 「流石ねー、迫力あるぅ(惚れ惚れ)」
- 花澄
- 「そうですねえ、凄い」
- 琢磨呂
- 「おい、にーちゃん達目がマジだぜ!?」
- 豊中
- 「今の御影さんのパンチ打ち抜いてたぞ(^^;」
- 花澄
- 「でも誰が止められるんでしょう?」
- 御影
- 「(血塗れの顔で)くぅふっふっふっふ、楽しいよなぁ!
-
- そうやろ、十!!(どごっ、脇腹をかすめて拳が地面を打つ)」
- 十
- 「チイィ、この化け物野郎がぁぁっ!(脇腹の激痛に歯を食
-
- いしばり、肘を取りに行く)」
- 火虎左衛門
- 「これじゃ、このシーンは使えないな。ヤクザの出入りじゃ
-
- 無いぞ。作り直すか?」
- 喬
- 「そんな予算ないはず、止めないと」
- ユラ
- 「そろそろ、あたしが本当に必要かな?」
- 瑞希
- 「ふっ、大丈夫よ(にやり)」
- 御影&十
- 「うぉぉぉおおおおおおっっっっ!!」
その時、二人の間に割って入る影。
御影の鼻先には漣丸、十の顔にはエビアンの膜。
- 尊
- 「はい、そこまで(はぁと)」
- 直紀
- 「迫力あるけど、怪我されちゃかなわないからねっ」
特殊効果NG-------------
草むらがたなびく夕暮れ。
対峙する、男が二人……
- 十
- 「瑞希の姐さんはてめえみたいな野良犬にゃあつりあわ
-
- ねえンだよ。とっとと手ぇひいてもらおうか(にやり)」
- 御影
- 「野良犬にさらわれたてめぇはいい面の皮だよな(冷笑)」
- 十
- 「てめぇ………、殺す」
- 御影
- 「やってみな、苦労するぜぇ」
戦う御影と一。賭けるものは組の威信などではなく、男のプライド。
- 直紀
- 「はいっ、そこでキノエちゃん雷っ!」
- キノエ
- 「まかせてっ」
バリバリバリバリバリ!
- 十
- 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛(感電中)」
- 御影
- 「(うーむ、筋肉が痙攣してしゃべることすらできんな)」
- 直紀
- 「きゃーっ、にのまえさーんっ!キノエちゃんストップ
-
- ストップぅっ!」
- キノエ
- 「あれ?やりすぎちゃったかな……」
- 直紀
- 「にのまえさーんっ!しっかりしてーっ!」
- 十
- 「し、死ぬかと思った……」
- ユラ
- 「で?治療してほしいのは誰?(わくわく)」
- 御影
- 「わしは平気だから、十を看てやってくれるか」
- ユラ
- 「はいはぁい。さぁ一、まずこれを飲みなさい」
- 十
- 「いや、大丈夫だから」
- ユラ
- 「焦げてるのに大丈夫なわけないでしょ。いいから飲む!」
- 直紀
- 「尊さんこっちこっち、もーちょっと寄ってー」
- 花澄
- 「直紀さん、そんなに腕ふりまわしちゃ、着崩れちゃう」
立ち位置を支持する、直紀。
- 尊
- 「こ、こうですか?」
- 瑞希
- 「(くす)そぉんなに真っ赤じゃ、ポスター使い物にならな
-
- いわよ、みこちゃん(くすくす)そう思わない、御影さん?」
- 御影
- 「いや、その…(汗)」
- 尊
- 「わ、わかってますっ(赤面)」
- 直紀
- 「あ、瑞希さん。ドス抜き身でこー下ろしてっ。一さん
-
- そこに立て膝ついてねー」
- 瑞希
- 「おっけー。こう?」
するっとスリットから太股が覗く。
- 琢磨呂
- 「うをーーーーー!!萌えーーーーー!!!」
- 十
- 「(平常心、平常心だっ!平静を保て、十!!直紀さんが
-
- いるんだぞ!ああ、でもスーツがぁぁぁっっ!!)」
- 直紀
- 「うんっ!かぁっこいいー瑞希さん(はぁと)ってこらっ!
-
- 琢磨呂君、萌えないっ(笑)」
- 琢磨呂
- 「そりゃ、無理ってもんだぜ。直紀ちゃんー」
- 直紀
- 「もぉ、カメラマンがそんなじゃ困るでしょーが(^^;
-
- さぁって、炎野さん!いいよぉ」
- 火虎左衛門
- 「よっしゃ!いっちょ、ハデにいくぜ!」
ちゃららら〜
音楽とともに、延々と流れるテロップ
- 直紀
- 「ふふーんっ!(上機嫌)どう?すっごいでしょお」
- 上司
- 「………………………」
- 同僚
- 「………………………」
暗い上映室で画面を見つめる上司と同僚の顔が、やけに白く見えるのは
画面の光りのせいだけではないような気もするが……気のせいだろうか?
テロップも終わり『完』の文字が大画面に映し出されても微動だにしない、
上司&同僚。さすがにいぶかしく思って、ひょいっと顔を覗き込む。
- 直紀
- 「ねぇってばっ!感想はーーーー??」
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