昼である。普通の人は食事をしているか、あるいは食事のために店を探している時間だ。
- 大河
- 「近頃は暑いなぁ」
彼もその一人だ。
- 大河
- 「(ベーカリー楠の前で) パンか……、ここで買ってこう
かな」
店に入ろうと向きを変えたとき
- 萌
- 「みゃあん」
- 大河
- 「おや、萌じゃないか……、こんなとこでなにしてんだ?」
- 萌
- 「お昼、一緒に食べよ」
- 大河
- 「こんなとこで喋るんじゃない」
- 萌
- 「じゃあどうやって答えろってのよ」
- 大河
- 「……それより、またねずみとかじゃないだろうな」
- 萌
- 「ちがうよ」
- 大河
- 「ならいいけど。パン買ってくるからちょっとまってろ」
- 萌
- 「みゅ(こくん)」
カランコロン
- 観楠
- 「いらっしゃいませ」
- 大河
- 「これと……これと、これをください……。……し、シシャ
モパン?(汗)」
- 観楠
- 「あっ、それはですね……(嬉)」
- 萌
- 「(ぴく) ししゃも?」
- 萌
- 「シシャモ、シシャモ……シシャモ!(シシャモってお魚だ
よね!?)」
- 萌
- 「ミャア、ミャア!(かりかり)」
- 大河
- 「わあっ! 。こら引っかくなぁ」
- SE
- たたたっ(←走りよる足音)
カラカラ
- 萌
- 「ミイ、み〜」
- 大河
- 「あっ、こら(ぐい)」
ドアを開けた途端店に入ってきた萌を捕まえて、
- 大河
- 「ドウブツが(ぐっ)」
一歩踏み出す。
- 大河
- 「食い物屋の中に(カラン)」
勝手にドアが開く。
- 大河
- 「入るんじゃあな〜い(ぽ〜ん)」
- 萌
- 「フギャ〜(泣)」
萌は店の外に(文字どおり) 放り投げられた。
- 観楠
- 「(……確かにそれはそうなんだが……、ひどいことするなぁ)」
- SE
- たたたた(←走りよる足音)
-
- ばたん(←ドアが開かれた音)
風のような勢いで小さな(といってもかなみよりは大きいが……)少女が入ってきた。
- 萌
- 「これなら文句無いでしょっ?(大河に)」
- 萌
- 「おさかなっ! お魚ちょうだいっ!(観楠に)」
- 大河
- 「ここはパン屋だろうがっ!(すぱーん)」
- 萌
- 「じゃあ、お魚パンっ!(真剣)」
- 観楠
- 「(今のハリセン、どっから出したんだ? ……いや、そう
じゃなくて……)」
- 大河
- 「さっきシシャモパンといったろうが(パン)」
- 萌
- 「そのパンくださいっ」
- 観楠
- 「(はっと我に帰る) あっ、はいはい」
観楠がパンを袋に入れている間に萌は大河に向けて手を差し出した。
- 大河
- 「なんだよ……」
- 萌
- 「お金、ちょうだいっ」
- 大河
- 「昨日こづかいをやっただろうがっ」
- 萌
- 「今日の夕ご飯の材料買うのに使っちゃった」
- 大河
- 「……すいません、それ、僕の分と一緒にしてください」
- 観楠
- 「はい(あの子が夕ご飯をつくるのかな……?)」
- 萌
- 「わ〜い、おさかな、おさかな(スキップ)」
- 大河
- 「どうもおさがわせしました……(嘆息)」
カランコロン
- 朝
- 「なんだったんや、いまのは……(呆)」
- 観楠
- 「(やっぱり売れるじゃないかシシャモパン……)(嬉)」
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