エピソード533『にっぽにあ・にっぽん』


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エピソード533『にっぽにあ・にっぽん』

某日、吹利駅前商店街にて。
 ちょうど、高校生達の下校時刻に重なったらしい。
 風が、強い。

花澄
「この時刻に外に出るのって久しぶりだなあ……ん?」

前から、五人くらいの女子高校生達が歩いてくる。
 今流行のミニスカートにルーズソックス。茶髪の染めかたも、目の前に長く前髪が垂れ下がっている様子もよく似ている。

花澄
「(五人揃って、分身みたいねえ)」

そこに風が一吹き。
 女の子達の髪が乱れる。
 と、彼女たちは一斉に髪に手をやり、同じ仕種でざっと髪をかきあげた。

花澄
「う……(こ、恐いっ)」

思わずよけた花澄の横を、女の子達は通り過ぎていった。

花澄
「……か、買い物買い物、と」

そそくさ、と行き過ぎようとした花澄の目の前に、今度は男子高校生が二人歩いてくる。

花澄
「……」

肩までくる髪は、丁寧に整えられている。
 後ろから見たら、花澄では性別が判断できそうに無い。
 と、またもや風が吹く。
 二人は、落ちてきた髪をさらり、とかきあげた。
 妙に優美な手つきであった。

花澄
「……」

無言で、花澄は向きを変えた。
 真っ直ぐにベーカリーを目指す。
 からころん。

観楠
「いらっしゃい、花澄さん」
花澄
「……(左右を見る。常連数人のみ)」
観楠
「どうしたんです?」
花澄
「……ああよかった、普通の人がいるっ!(涙目)」
観楠
「??」



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