エピソード548『猫の不幸』


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エピソード548『猫の不幸』

大河
「さてと、ようやくあがりだ」

夕刻、大河は定時に研究所を出た。伸びをして腕をひねるとそれだけでぽきぽきとひじが鳴る。

大河
「萌は何処に居るかなぁ……」

独り言を呟いて歩き出す。さほど探さなくても彼女は見つかった。
 何匹か猫が集まっていて真っ白な猫が何やら「演説」している。だが集まっていた猫たちはすぐに散らばってしまい萌は悲しそうにそれを見送った。

大河
「なにを話してたんだい?」
「マサヒロ……」

呟いて変身する。何故か今にも泣き出しそうだ。

大河
「喧嘩でもしたのか」

黙って首を振り、抱きついてくる。

大河
「お、おい」

うろたえる大河に萌は涙交じりの声で話しはじめた。

「友達が……死んだの……、車にはねられて……」

何度もしゃくりあげる。

「あんなに……元気だったのに……なのに……」

大河は萌の背中を軽くぽんぽんとたたいた。

「だから……皆に路を渡るときは気をつけてって言ってたの」
大河
「そうか……」
「(突然顔を上げる)マサヒロ?」
大河
「……なんだい?」
「死んじゃやだよ……。私、マサヒロの死に顔なんて見た くないよ……」
大河
「ああ、当分死にゃあしないよ」
「ほんと?」
大河
「殺せるもんなら殺してみろ」
「だから見たくないって言ってるでしょ」

少し元気が出たようだ。

大河
「もう帰れるか?」
「うん……」

声を出さず手話でメイに命令する。

大河
『(手話で)家にパスを通してくれ』
メイ
『(大河に)OK』

空間に開いた穴に入る。後には誰もいなくなった。



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