良く晴れたある日曜日の午後、店の中で鉢植えの手入れをする尊。そこへ小さなお客さんが現れた。
- かなみ
- 「こんにちはっ!(笑顔)」
- 尊
- 「あら、かなみちゃんいらっしゃい(にこ)」
- かなみ
- 「あのね、かなみ、みこ姉様におねがいがあるの」
- 尊
- 「(かなみの前にしゃがむ) ん? なぁに? 言ってごら
ん」
- かなみ
- 「他の人には内緒にして欲しいんだけど、姉様……内緒に
してくれる?」
- 尊
- 「わかった内緒にするわね(笑顔)」
- かなみ
- 「じゃぁ耳かしてっ」
何事か、尊の耳に耳打ちするかなみ。聞いている尊の表情がだんだん笑み崩れて行く。
- かなみ
- 「だめ?(上目)」
- 尊
- 「(くすくす) いいわよ、私で出来る事なら」
- かなみ
- 「やったぁ(笑顔)」
閉店間際。
- 観楠
- 「うーん(伸び) やっと終わったか……さて、片づけて帰
るか」
ドアベルを鳴らし、入ってきたのは尊である。
- 観楠
- 「あ、尊さん。御免なさいそろそろ看板なんですよ」
- 尊
- 「ええ、解ってます。ところで観楠さん、今日この後お暇
ですか?」
- 観楠
- 「え゛え゛え゛っ(汗) ……ひ、暇ですが……(まさか……)」
- 尊
- 「よかった(にこ)」
- 観楠
- (ああっ……お、俺には素子ちゃんがいるのに……で、でも
尊さんも……はっ……いかん! いかんぞ観楠! こんな事じゃ! 第一、尊さんには御影さんがいるだろーに!)
- 尊
- 「どうか……しました?(怪訝)」
- 観楠
- 「み、尊さん、お気持ちは嬉しいんですが、僕には心に決
めた人がいてですね、あ、いや別に尊さんが魅力的ぢゃ無いとか、そーいう訳じゃなくて(汗)」
- 尊
- 「……はい?(きょとん) あ……ああっ(笑) 観楠さんな
んか、勘違いしてません?(笑)」
- 観楠
- 「え?」
- 尊
- 「あたしが言いたかったのは、暇なら早く家に帰って上げ
て下さいって、言いたかったんです、言い方が不味かったですね(笑)」
- 観楠
- 「あはあはあははは(大汗) (そうだよな、ああよかった
……けどちょっと残念……かな?)」
残念と思った瞬間浮かぶ御影の顔。思わず怖気が背中を駆け上がる。
- 観楠
- 「(くわばらくわばら……) ん? それはそうと、家で……
まさか、あの子に何かあったんですかっ(焦)」
- 尊
- 「違いますよ、別に何もありませんから、心配は要りませ
ん(笑)」
ほっと胸をなで下ろす観楠。
- 観楠
- 「じゃ一体?」
- 尊
- 「さぁそれは(くす) 帰ってからのお楽しみという事で、
早く帰ってあげてくださいね、それじゃ」
ひらりと出て行く尊。
後には一人首をひねる観楠。
- 観楠
- 「尊さんは心配ないって言ったけど……やっぱ気になるなぁ
急いで帰ろ」
とっぷり日も暮れ、当たりは暗くなっている。だが、楠家には明かりが点いていない。
- 観楠
- 「おかしいな……かなみちゃんが居るはずだけど」
焦って部屋に駆け込む観楠。
- 観楠
- 「かなみちゃん!? どこだい?」
かなみはソファーの上で気持ちよさそうな寝息を立てていた。
- 観楠
- 「なんだ……寝ちゃってたのか……(安堵)」
- かなみ
- 「んー(眠) あ、父様おかえり」
- 観楠
- 「ただいま、かなみちゃん、すぐ御飯にするからね」
愛用のエプロン片手にキッチンに向かう、が。
- 観楠
- 「あ……れ?」
既に用意されている夕食の準備。御丁寧に美味しそうな煮物まで食卓に乗っている。
- 観楠
- 「かなみちゃん、これ、誰が用意したの?」
- かなみ
- 「かなみが作ったの!」
- 観楠
- 「え? かなみちゃんがこれを? でも、コンロとか」
- かなみ
- 「あのね、みこ姉様が『火を使うのは危ないから』って手
伝ってくれたの」
- 観楠
- (なるほど! この事だったのか!)
ようやく尊の悪戯っぽい笑みの意味を理解した観楠。
- 観楠
- 「でも、一体なんでまた急に?」
- かなみ
- 「はい、父様(紙を手渡す)」
手渡された画用紙にかかれた観楠(と思しき似顔絵)。そして、その下に書かれている文字。
『父様、いつもごくろうさまです。 かなみ』
慌てて後ろのカレンダーを振り返る。
今日の日付は6月15日、第三日曜日。
- 観楠
- (そうか……父の日……忘れてた)
- かなみ
- 「父様、ごはんたべよっ!(にこ)」
- 観楠
- 「あ、うん、そうだね(笑顔)」
- 観楠
- 「か、かなみちゃんこれは……(汗)」
観楠の箸には煮物から掴み出された「ほぼ」原形を保ったままのニンジンがつかまれていた。
- かなみ
- 「それ、かなみが皮むいたの、おいしいよっ(笑顔)」
- 観楠
- 「ははは(汗) 美味しいね」
終幕っミ☆
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