エピソード549『美味しい夕食』


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エピソード549『美味しい夕食』

FLOWER SHOP Miko

良く晴れたある日曜日の午後、店の中で鉢植えの手入れをする尊。そこへ小さなお客さんが現れた。

かなみ
「こんにちはっ!(笑顔)」
「あら、かなみちゃんいらっしゃい(にこ)」
かなみ
「あのね、かなみ、みこ姉様におねがいがあるの」
「(かなみの前にしゃがむ) ん? なぁに? 言ってごら ん」
かなみ
「他の人には内緒にして欲しいんだけど、姉様……内緒に してくれる?」
「わかった内緒にするわね(笑顔)」
かなみ
「じゃぁ耳かしてっ」

何事か、尊の耳に耳打ちするかなみ。聞いている尊の表情がだんだん笑み崩れて行く。

かなみ
「だめ?(上目)」
「(くすくす) いいわよ、私で出来る事なら」
かなみ
「やったぁ(笑顔)」

その日の夕方のベーカリー楠

閉店間際。

観楠
「うーん(伸び) やっと終わったか……さて、片づけて帰 るか」

ドアベルを鳴らし、入ってきたのは尊である。

観楠
「あ、尊さん。御免なさいそろそろ看板なんですよ」
「ええ、解ってます。ところで観楠さん、今日この後お暇 ですか?」
観楠
「え゛え゛え゛っ(汗) ……ひ、暇ですが……(まさか……)」
「よかった(にこ)」
観楠
(ああっ……お、俺には素子ちゃんがいるのに……で、でも 尊さんも……はっ……いかん! いかんぞ観楠! こんな事じゃ! 第一、尊さんには御影さんがいるだろーに!)
「どうか……しました?(怪訝)」
観楠
「み、尊さん、お気持ちは嬉しいんですが、僕には心に決 めた人がいてですね、あ、いや別に尊さんが魅力的ぢゃ無いとか、そーいう訳じゃなくて(汗)」
「……はい?(きょとん) あ……ああっ(笑) 観楠さんな んか、勘違いしてません?(笑)」
観楠
「え?」
「あたしが言いたかったのは、暇なら早く家に帰って上げ て下さいって、言いたかったんです、言い方が不味かったですね(笑)」
観楠
「あはあはあははは(大汗) (そうだよな、ああよかった ……けどちょっと残念……かな?)」

残念と思った瞬間浮かぶ御影の顔。思わず怖気が背中を駆け上がる。

観楠
「(くわばらくわばら……) ん? それはそうと、家で…… まさか、あの子に何かあったんですかっ(焦)」
「違いますよ、別に何もありませんから、心配は要りませ ん(笑)」

ほっと胸をなで下ろす観楠。

観楠
「じゃ一体?」
「さぁそれは(くす) 帰ってからのお楽しみという事で、 早く帰ってあげてくださいね、それじゃ」

ひらりと出て行く尊。
 後には一人首をひねる観楠。

観楠
「尊さんは心配ないって言ったけど……やっぱ気になるなぁ 急いで帰ろ」

湊川家

とっぷり日も暮れ、当たりは暗くなっている。だが、楠家には明かりが点いていない。

観楠
「おかしいな……かなみちゃんが居るはずだけど」

焦って部屋に駆け込む観楠。

観楠
「かなみちゃん!? どこだい?」

かなみはソファーの上で気持ちよさそうな寝息を立てていた。

観楠
「なんだ……寝ちゃってたのか……(安堵)」
かなみ
「んー(眠) あ、父様おかえり」
観楠
「ただいま、かなみちゃん、すぐ御飯にするからね」

愛用のエプロン片手にキッチンに向かう、が。

観楠
「あ……れ?」

既に用意されている夕食の準備。御丁寧に美味しそうな煮物まで食卓に乗っている。

観楠
「かなみちゃん、これ、誰が用意したの?」
かなみ
「かなみが作ったの!」
観楠
「え? かなみちゃんがこれを? でも、コンロとか」
かなみ
「あのね、みこ姉様が『火を使うのは危ないから』って手 伝ってくれたの」
観楠
(なるほど! この事だったのか!)

ようやく尊の悪戯っぽい笑みの意味を理解した観楠。

観楠
「でも、一体なんでまた急に?」
かなみ
「はい、父様(紙を手渡す)」

手渡された画用紙にかかれた観楠(と思しき似顔絵)。そして、その下に書かれている文字。
 『父様、いつもごくろうさまです。             かなみ』
 慌てて後ろのカレンダーを振り返る。
 今日の日付は6月15日、第三日曜日。

観楠
(そうか……父の日……忘れてた)
かなみ
「父様、ごはんたべよっ!(にこ)」
観楠
「あ、うん、そうだね(笑顔)」
観楠
「か、かなみちゃんこれは……(汗)」

観楠の箸には煮物から掴み出された「ほぼ」原形を保ったままのニンジンがつかまれていた。

かなみ
「それ、かなみが皮むいたの、おいしいよっ(笑顔)」
観楠
「ははは(汗) 美味しいね」

終幕っミ☆



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