エピソード550『将来有望』


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エピソード550『将来有望』

吹利学院高校芸術科、授業終了間際。教室で……机に突っ伏し、熟睡中のフラナ。

フラナ
「ん……みゅう……ぐー……おいし……そ……う」
本宮
「(しょーがないな……あいつは)」

きーんこーんかーんこーん

先生
「これで、授業を終わりだ」
生徒
「はぁ……終わったあ」

ぞろぞろと帰り出す生徒達。まだぐっすり寝てるフラナ。揺すり起こす本宮。

佐古田
「じゃん(おきろー)」
本宮
「おい、授業終わったぞ……おい、フラナ! 起きろ」
フラナ
「ふにゃ……む……いただき……まぁ……ひゅ」

がぶっ! 本宮の肩口めがけて思いっきり食いつくフラナ。

本宮
「いってえええぇぇぇっ!」
佐古田
「ぎゅぃぃぃぃん(驚きの音色)」
フラナ
「みゅ〜(はむはむ)」
本宮
「こらあぁぁ! 待てぇ食うなああぁぁっ」

教室に絶叫がこだまする……
 そして……帰り道……肩を押さえて歩く本宮、しゅんとしてとぼとぼ歩いているフラナ、我関せずの佐古田。

本宮
「いてててて……」
フラナ
「ごめんね……もとみー……痛い? ごめん」
佐古田
「じゃあぁぁん(気にすんな〜の音色)」
本宮
「ああ、大丈夫だ。それより授業中寝るなよ、お前」
フラナ
「……ごめんなさい〜」

歩いていく三人、目の前にはハーブショップグリーングラス。

フラナ
「そうだ、ここで薬塗ってもらおう」
本宮
「え、ここ……って確か豊中さんの知り合いの」
フラナ
「ユラさんだよ、あの人薬草とかに詳しいから、ねっ」
佐古田
「じゃじゃじゃん(こないだ撮影でお世話になっただろ〜)」
本宮
「でも……迷惑じゃないか?」
フラナ
「僕がお願いするっ!」

そして……

フラナ
「ユラさぁん」
ユラ
「あら、君は瑞希さんの弟の……」
フラナ
「裕也だよ、フラナでいいよ。あのね、お願いがあるの」
ユラ
「お願い? 、なに?」
フラナ
「お薬塗って欲しいの」
ユラ
「え、どこか怪我したの?」
本宮
「あ、こんにちは、えっと……実は噛み傷なんですけど」

噛み傷と聞いてきゅっと表情が険しくなるユラ。

ユラ
「噛まれた! 何に! 待ってて、すぐ消毒するからっ」
本宮
「あっ、そのちょっと待ってください」
ユラ
「だめよ、大変なのよほっとくと」
フラナ
「えーとぉ(真っ赤)」
本宮
「(頭ぽりぽり) あの……その……」
ユラ
「どうしたの?」
本宮
「実は……」

かくかくしかじか……一部始終を説明する。当然、大笑いされたが……

ユラ
「(くすくす) 災難ね、でもよかったわ、犬とか厄介なの じゃなくて。とにかく、ちゃんと消毒しとくわ。
じゃ、上着脱いで」
本宮
「え、脱ぐん……ですか……(心持ち赤くなる)」
ユラ
「あら、別にあたしは平気よ」
本宮
「は……はい」

そそくさと上着を脱ぐ本宮。普段は一見普通そうな外見だが、実際は無駄な肉が無く、筋肉もしっかりついた引き締まった身体をしている。

ユラ
「へぇ……なにかスポーツでもやってるの?」

思わず感心したようにつぶやくユラ。

本宮
「え、はい。合気柔術を……十三・四年くらい……」
フラナ
「もとみー強いんだよぉ」
ユラ
「なるほどね、見かけはそんなにがっしりしてないのに…… しっかり鍛えてある、付け焼き刃の筋肉とは違うわね」
本宮
「(照れ) うたれ強いのが取り柄ですから」
ユラ
「ふ……ん、丈夫なんだ」

丈夫だ、ということに興味を引かれたらしい、消毒をしながら……

ユラ
「ところでさ、本宮くん。ちょっと聞きたいんだけど」
本宮
「なんですか?」
ユラ
「お酒とか飲む?」
本宮
「え、ええ父さんや兄貴たちとたまに」
ユラ
「煙草は?」
本宮
「いえ、吸いませんけど」
ユラ
「今まで大きな病気や大怪我したことは?」
本宮
「これといってないですね」
ユラ
「持病とか、アレルギーとかは」
本宮
「ないですよ」
ユラ
「最近疲れやすいとかない」
本宮
「そんなことないですね」
ユラ
「ふむふむ……なるほど。健康優良、持病なし、ばっちり ね。でも未成年っていうところが一番のネックね……惜しいわ」
本宮
「……な、何が惜しいんだろう(汗)」

ユラは手近な人間を新薬の実験対象とする性癖がある。ただし成年男子のみしか対象にしないというポリシーを持っているのである。



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