吹利学院高校芸術科、授業終了間際。教室で……机に突っ伏し、熟睡中のフラナ。
- フラナ
- 「ん……みゅう……ぐー……おいし……そ……う」
- 本宮
- 「(しょーがないな……あいつは)」
きーんこーんかーんこーん
- 先生
- 「これで、授業を終わりだ」
- 生徒
- 「はぁ……終わったあ」
ぞろぞろと帰り出す生徒達。まだぐっすり寝てるフラナ。揺すり起こす本宮。
- 佐古田
- 「じゃん(おきろー)」
- 本宮
- 「おい、授業終わったぞ……おい、フラナ! 起きろ」
- フラナ
- 「ふにゃ……む……いただき……まぁ……ひゅ」
がぶっ! 本宮の肩口めがけて思いっきり食いつくフラナ。
- 本宮
- 「いってえええぇぇぇっ!」
- 佐古田
- 「ぎゅぃぃぃぃん(驚きの音色)」
- フラナ
- 「みゅ〜(はむはむ)」
- 本宮
- 「こらあぁぁ! 待てぇ食うなああぁぁっ」
教室に絶叫がこだまする……
そして……帰り道……肩を押さえて歩く本宮、しゅんとしてとぼとぼ歩いているフラナ、我関せずの佐古田。
- 本宮
- 「いてててて……」
- フラナ
- 「ごめんね……もとみー……痛い? ごめん」
- 佐古田
- 「じゃあぁぁん(気にすんな〜の音色)」
- 本宮
- 「ああ、大丈夫だ。それより授業中寝るなよ、お前」
- フラナ
- 「……ごめんなさい〜」
歩いていく三人、目の前にはハーブショップグリーングラス。
- フラナ
- 「そうだ、ここで薬塗ってもらおう」
- 本宮
- 「え、ここ……って確か豊中さんの知り合いの」
- フラナ
- 「ユラさんだよ、あの人薬草とかに詳しいから、ねっ」
- 佐古田
- 「じゃじゃじゃん(こないだ撮影でお世話になっただろ〜)」
- 本宮
- 「でも……迷惑じゃないか?」
- フラナ
- 「僕がお願いするっ!」
そして……
- フラナ
- 「ユラさぁん」
- ユラ
- 「あら、君は瑞希さんの弟の……」
- フラナ
- 「裕也だよ、フラナでいいよ。あのね、お願いがあるの」
- ユラ
- 「お願い? 、なに?」
- フラナ
- 「お薬塗って欲しいの」
- ユラ
- 「え、どこか怪我したの?」
- 本宮
- 「あ、こんにちは、えっと……実は噛み傷なんですけど」
噛み傷と聞いてきゅっと表情が険しくなるユラ。
- ユラ
- 「噛まれた! 何に! 待ってて、すぐ消毒するからっ」
- 本宮
- 「あっ、そのちょっと待ってください」
- ユラ
- 「だめよ、大変なのよほっとくと」
- フラナ
- 「えーとぉ(真っ赤)」
- 本宮
- 「(頭ぽりぽり) あの……その……」
- ユラ
- 「どうしたの?」
- 本宮
- 「実は……」
かくかくしかじか……一部始終を説明する。当然、大笑いされたが……
- ユラ
- 「(くすくす) 災難ね、でもよかったわ、犬とか厄介なの
じゃなくて。とにかく、ちゃんと消毒しとくわ。
じゃ、上着脱いで」
- 本宮
- 「え、脱ぐん……ですか……(心持ち赤くなる)」
- ユラ
- 「あら、別にあたしは平気よ」
- 本宮
- 「は……はい」
そそくさと上着を脱ぐ本宮。普段は一見普通そうな外見だが、実際は無駄な肉が無く、筋肉もしっかりついた引き締まった身体をしている。
- ユラ
- 「へぇ……なにかスポーツでもやってるの?」
思わず感心したようにつぶやくユラ。
- 本宮
- 「え、はい。合気柔術を……十三・四年くらい……」
- フラナ
- 「もとみー強いんだよぉ」
- ユラ
- 「なるほどね、見かけはそんなにがっしりしてないのに……
しっかり鍛えてある、付け焼き刃の筋肉とは違うわね」
- 本宮
- 「(照れ) うたれ強いのが取り柄ですから」
- ユラ
- 「ふ……ん、丈夫なんだ」
丈夫だ、ということに興味を引かれたらしい、消毒をしながら……
- ユラ
- 「ところでさ、本宮くん。ちょっと聞きたいんだけど」
- 本宮
- 「なんですか?」
- ユラ
- 「お酒とか飲む?」
- 本宮
- 「え、ええ父さんや兄貴たちとたまに」
- ユラ
- 「煙草は?」
- 本宮
- 「いえ、吸いませんけど」
- ユラ
- 「今まで大きな病気や大怪我したことは?」
- 本宮
- 「これといってないですね」
- ユラ
- 「持病とか、アレルギーとかは」
- 本宮
- 「ないですよ」
- ユラ
- 「最近疲れやすいとかない」
- 本宮
- 「そんなことないですね」
- ユラ
- 「ふむふむ……なるほど。健康優良、持病なし、ばっちり
ね。でも未成年っていうところが一番のネックね……惜しいわ」
- 本宮
- 「……な、何が惜しいんだろう(汗)」
ユラは手近な人間を新薬の実験対象とする性癖がある。ただし成年男子のみしか対象にしないというポリシーを持っているのである。
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