- 瑞希
- 「あーあ。暇な作業……」
今日は朝からデータの打ち込み。単純、退屈、特にもならないうざったい作業である。
- 瑞希
- 「ん? ……あれ……ここ……」
メインマスタファイル、そのなかの項目名『提出日』の中での『提』の漢字が堤防の『堤』の字になっている。
よーするに単純な文字間違い。しかし、場所が悪すぎる……
- 瑞希
- 「……ちょっと……なによぉ! これ」
- 工藤
- 「どうしたんですか? 瑞希先輩」
- 瑞希
- 「これ見てよぉ」
- 工藤
- 「これって……あ……」
- 瑞希
- 「なぁんで、こんなはじめのとこ間違えてんのよぉ」
- 工藤
- 「え、でも……これ、客先から持ってきた奴ですよ。ここ
まで作っててどうして今の今まで気が付かなかったんでしょうねぇ……」
- 瑞希
- 「どうしてでしょうって、そんな気楽な事じゃないわよぉ!
三ちゃん! ちょっとぉこれ見てよ」
- 三本柱
- 「なに騒いでるんですか……瑞希さん」
マスタファイルの項目名の間違い……これは結構致命的だ……
- 三本柱
- 「参りましたね、こりゃあ。よりによって」
- 瑞希
- 「ここ直したら、後の作業全部修正よ、前に納品した奴も
みんな直さなきゃだし……」
- 工藤
- 「うーむ、さして重要な項目じゃないんですけど……一番
元になってるファイルですし……どうしましょ……」
- 瑞希
- 「どーすんのよぅ、また、ざんぎょーの嵐ぃ、しかもなん
の得にもなんない事にぃ(じたばたじたばた)」
- 工藤
- 「瑞希先輩、暴れないでくださいよ……」
- 三本柱
- 「……私に一つ、案があります」
- 瑞希・工藤
- 「案?」
- 三本柱
- 「……我々の……過去五分ほどの記憶を消す、というのは
どうでしょう?」
一旦、顔を見合わせる瑞希と工藤……そして。
- 瑞希・工藤
- 「(ぽむ) 決まり」
こうして『気づかなかったフリして黙殺』案は可決した……
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