夕暮れ、いつものベーカリー。
カランカラン。元気いっぱいに瑞希登場。
- 瑞希
- 「やっ〜ほう! こんにちはっ」
しかし……いつもとちょっと違う。
きりっと奇麗に引かれたルージュライン。ほんのり薄付きのファンデーション、目元に涼しげな淡いパウダーブルーのアイシャドウ、頬に淡いオレンジの頬紅をさして……きっちりと化粧し、すっきりとしたスーツに身を包んだ瑞希。
- 観楠
- 「(なぜか照れて)い、いらっしゃい、瑞希さん」
- フラナ
- 「瑞希姉ちゃんが……お化粧してる」
- 本宮
- 「め……めずらしい……」
- 佐古田
- 「じゃじゃじゃん(めずらしい〜)」
- 尊
- 「瑞希さん……(いつもと印象が全然違う)」
- 花澄
- 「あら、奇麗ですね……」
しかし、驚く周囲をまったく気にしない瑞希。
- 瑞希
- 「どしたの? みんな?」
- 観楠
- 「いえ……(なぜか照れ)」
- 尊
- 「今日、何か用事でもあったんですか?」
- 瑞希
- 「ん、用事? 特にないけど……あ、そういやユラちゃん
とこに寄ってくの忘れてた。ちょっと行って来るっ!」
ぱたぱたぱた。きっちり整った格好のまま、せわしなく駆けていく瑞希。
後に残された面々は……
- 観楠
- 「瑞希さん……別人みたいだった……」
- 尊
- 「ほんと……女の人ってちょっとお化粧するだけで、ぐん
と変っちゃうんですよね」
- 花澄
- 「いいですね」
それぞれに感想をもらす一同……その間、隅っこでぼそぼそと話し合う三人。
- 本宮
- 「久しぶりに見たな……瑞希さんがお化粧したとこ……」
- フラナ
- 「いつもは、お客さんの会社いくときさえ、面度くさがっ
てお化粧しないのに……」
- 佐古田
- 「じゃぎぃぃぃぃぃん(疑惑の音色)」
- 本宮
- 「瑞希さん……何かあったのかな……」
- フラナ
- 「ま……ま……まさかぁ……あ!」
- 本宮
- 「どうした?」
- フラナ
- 「そういえば……あの口紅……会社の同僚の人がお土産に
買ってくれたって言ってた……」
- 本宮
- 「同僚?」
- フラナ
- 「いつも一緒にお仕事してる男の人から……だって」
- 本宮
- 「おっ……男……男から、そっそういや……だっ旦那さんは」
- フラナ
- 「旦那さん……今、出張中……」
旦那は出張中、めずらしくお化粧している瑞希。しかもその口紅は会社の同僚(男)が買ってくれたもの……
一同思考中……
- 佐古田
- 「ぢゃぎぃぃぃぃぃぃん!(壊れた音色)」
- 本宮
- 「ちがぁぁぁうぅぅぅ! 瑞希さんに限ってそんな事絶対
にないっっ!(絶叫)」
- フラナ
- 「(ひたすら慌てて) なんだよぉ! なに想像したんだよぉ
もとみー!」
- 本宮
- 「俺の馬鹿馬鹿! なに考えてんだぁっ!」
- 佐古田
- 「ぎゃぎゃぎゃぎゃぁぁぁん!(瑞希さぁぁぁぁん)」
もうぱにっく状態、大騒ぎの三人組。そんな三人を横目に……
- 尊
- 「……まさか、ね」
- 花澄
- 「心配ないですよ、瑞希さんですから」
- 観楠
- 「瑞希さんに限って……」
ばたばたばた
- 瑞希
- 「再び、こんにちはぁっ」
からんからん
- 瑞希
- 「はぁ、汗かいちゃった」
- 尊
- 「あの、ところで……瑞希さん、似合いますねその口紅」
- 瑞希
- 「ふふっ、そう?」
- 尊
- 「普段あまりお化粧しないんですか? あたし瑞希さんが
お化粧してるのって、初めて見ましたよ」
- 瑞希
- 「え? うん、そうよね。お化粧なんて普段しないし」
- 尊
- 「え、じゃ……今日は何か特別な日なんですか?」
- 瑞希
- 「んー特別っていうか。……実は今日ね、五分早起きした
の」
- 尊
- 「は?」
- 瑞希
- 「五分って手持ちぶさたでしょう? なんかしよっかなーっ
て思って」
- 尊
- 「それで……お化粧ですか」
- 瑞希
- 「うん(キッパリ)」
思わず、その場に崩れ落ちそうになってしまう尊。
- 尊
- 「そ、そ、それで……」
- 瑞希
- 「変かなぁ」
- 尊
- 「そんな、すごく綺麗ですよ(くす)」
- 花澄
- 「似合いますよ、とても」
- 瑞希
- 「そうかなっ、へへっ」
- 観楠
- 「……はは……はは(あの三人てば……)」
- 瑞希
- 「ところで……」
ちらり、と三人組を見る。
- 瑞希
- 「あいつら……なに騒いでるの?」
- 尊
- 「ええ(くす) 色々と……」
必死に笑いをこらえる尊、その後ろで……
- フラナ
- 「もとみーってばぁっ、何考えたんだよ」
- 本宮
- 「(焦りまくり) そ、そ、そんなおまえだって……考えた
だろ」
- 佐古田
- 「じゃいぃぃぃぃん(瑞希さぁんっっっ)」
やっぱりパニック状態……
- 瑞希
- 「あいつら、いつも元気ねぇ」
騒ぐ三人組を横目に見て、呑気につぶやく瑞希。
- 花澄
- 「可愛いじゃないですか(にこ) うらやましいな、あんな
に慕われてて」
- 瑞希
- 「慕われる? なんで?」
- 尊
- 「(うーん、言うべきか言わないべきか……迷うとことよ
ね)」
- 観楠
- 「(言ったら最後……)」
言ったら最後、三人完璧にのされるだろう……しかし、言わないなら言わないで、三人組のあやしい誤解はとけない。
- 瑞希
- 「(きょとん) なんなの、一体?」
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