ベーカリーにて……。
お茶を飲みつつくつろぐフラナと本宮、普段の光景。しかし……いつも一緒の佐古田がいない。
その頃、……草原。さわさわ……と涼しい風が吹き抜け、生い茂った草がうねり揺れ踊る。
草の海の中、ギターを片手に、ぼさっとした上着につば付き帽子をかぶった、金髪の少年。傍らには、行儀良く座った赤いワンピース姿の小さな女の子が座っている。
ギターをかき鳴らし、かたや音を鳴らし。なにやら……語り合っている。何を語り合っているか……は、当人達にしかわからないだろう。
佐古田の上着の裾をひっぱり、顔を見上げる譲羽。何かをねだる子供のように……。小さく首をかしげ、譲羽の目を見詰める佐古田。小さな手足をぱたぱたと動かし、訴える視線で何かを主張する。
小さくうなずく佐古田。どうやら意味は通じたらしい。
ギターをとり、つま弾きはじめる。ゆるやかな優しい音色がうねる草原に響く……。
静かにギターを奏でる傍らで、佐古田に寄りかかり、じっと音色に耳(?)を傾ける譲羽。
さわさわと……夕暮れの涼しい風が吹き抜ける。そこへ……
わらわらわら
いつしか、二人(?)周りがざわついて来る。
あの、草原の小人がいる……一人、二人とどんどんまわりに集まって来る。ギターの音色にあわせ、歌を歌っている……小さく……ささやくような……
にぎやかになった周りを見つめる譲羽。しっかりと佐古田の服の裾をつかむ手に力を入れる……
不意に、手を止めギターをおろす佐古田。すかさず、ひょいっと佐古田の膝の上に登る譲羽。小人達の歌声は……まだ続いている。小人達を見つめ佐古田に問い掛ける譲羽。
顔を上げ……佐古田の緑の瞳を見つめる譲羽。
譲羽を膝からおろし、ギターをかき鳴らしながら……歌う……飾りも何もない……素朴な歌。懐かしいような……暖かいような歌声。
三人でいよう
楽しいとき、さみしいとき
三人でいよう
つらいとき、嬉しいとき、いつも一緒に
一人ではつらいから、二人では甘えてしまうから
だから、三人でいよう
いつも、わかちあおう
一人では、弱いかもしれないけど、三人いれば強くなれる
三人でいよう、誰よりも強くなろう
ぼくらは、いつだって、ここにいるから
瞳を閉じ……歌う佐古田。草を鳴らし伴奏をつける小人、小石を打ち鳴らし、合いの手を入れる小人、一緒に高く低く歌う小人。そして……最後の歌声が喉にひきとられていく。
ぽふ
佐古田の問いに答えず、膝に顔を埋めてしまう譲羽。ぽんぽんと……優しく頭をなでる佐古田。
顔を上げる譲羽。微笑んで、すい……と譲羽に手を差しだす佐古田。その手に握られたのは……
小さな白い花……
佐古田を見上げ、首をかしげる譲羽。佐古田は黙ったまま、小さく微笑んだだけ。
差し出された花を小さな手で受け取る。
何時の間にか……大勢いた小人達は姿を消し、静かになっていた。しかし……そこへ……
二人に手を振り、膝から譲羽を抱え上げ歩き出す佐古田。抱え上げる間際……
答えの代りに、優しく微笑む佐古田。二人と一緒に歩き出す。小さな草原は、すっかり夜になっていた。