エピソード573『上達の早道』


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エピソード573『上達の早道』

某日、夕刻、花澄の家で。

直紀
「では、行きますかっ(気合っ)」

台所には、買ってきたばかりの肉や野菜が転がっている。

花澄
「でも、私もいつも適当で作ってるんですけど……」
直紀
「いーのっ! とにかくこれで一通り、の、献立教えて
にこっ)」
花澄
「じゃ、これ、本当に簡単なの。鶏の胸肉を厚さ半分にそ いで、白ワインと、塩胡椒でもんで、置いておく」
直紀
「厚さ半分って、……あ、これ、切り離さないんだ」
花澄
「うん、本を開くみたいに。で、置いておく間に、いんげ ん4本を洗って、ラップで包んでレンジにかける、と。30秒」
直紀
「水は要らないの?」
花澄
「洗ったまま、まだ水気が残ってるくらいでいいって。で、 鶏肉の上にハムとスライスチーズを一枚ずつ少し重ねて載せて、いんげんを芯にして、巻く」
直紀
「……厚さが何かいびつ(汗)」
花澄
「え? ……あ、成程。じゃ、ここを少し切って、こっち に廻して」
直紀
「……花澄さん、案外適当(汗)」
花澄
「だから、適当に作ってますって(苦笑)」
直紀
「で、これを?」
花澄
「ラップで包んで、レンジに入れて……6分半から7分。 ラップの包み口を上にしとくのが、コツかな」
直紀
「え?」
花澄
「下にしとくと、チーズが溶けて全部流れるんですよね」
直紀
「で?」
花澄
「一品終わり。で、後は……」

約一時間半後。

花澄
「直紀さん、苦手って散々言ってたけど、問題無しじゃな いですか」
直紀
「うーん、下準備がね、いつも時間取るの。野菜切ったり とか」
花澄
「千切りにしたり、面取りしたり、とか?」
直紀
「……う」
花澄
「それはもう場数を踏めば問題無し。直紀さん、舌は肥え てるんだから作れば美味しいものが出来ますよ」
直紀
「う、うん……」
花澄
「まあ、何よりの上達の早道は」
直紀
「何っ!?」
花澄
「誰かに食べてもらうこと、かな。……直紀さんなら、食 べて欲しい人、いるでしょう?(にこにこ)」
直紀
「か、かすみさんっ(わたわた)」
花澄
「一さんは、何故か天ぷらにこだわるんですよね……よし、 今度は天ぷら作りましょう、直紀さん!(握り拳)」
直紀
「は……はいいっ(あれって、野菜切るばっかじゃないか あっ)」



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