エピソード582『熱き戦いに向けて』


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エピソード582『熱き戦いに向けて』

じりじりと肌を焦がす紫外線。夏に向けて肌の露出度が高くなるこの季節!年に何回かはおなじみの……あの日がやってくる

キノト
「ここかな?直紀さんが言ってたとこって」
「ああ。しかし随分、年期の入ったアパートだな」
キノト
「ミツルのとこと言い勝負だね(笑)」
カンカンと錆びついた階段が音をたてる。上まで登りかけたとき、ふいに声が聞こえてきた。女の…ちょっと怒ったような声。

「何で部屋にいちゃいけないのよーぅ!」
紘一郎
「だーかーらー(^^; おとなしく姉貴んとこに行ってろって。
客がくるんだって、今日は。朝にそういったはずだぞ」
「覚えてないもんー!あたし一人のけ者なんて、
ずるいいいいいいーーーーーっっっ!!」
紘一郎
「あーーーーー!!聞き分けのないっ、とにかくそうなの。
解ったな、すー」
すー
「こーちゃんの、ばかったれーーーーーーーっ!!!!掃除も食事も
もうやってやんないんだからーーーーーー!!!」
ばたばたと階段に向かって走るたびに、サイドに入ったレイヤがふわりと揺れる。

紘一郎
「………いつ自分でやったよ、オイ(^^;」
十の側をするっと抜け、荒々しく階段を駆け抜けて行く。顔を見合わせ

キノト
「ミツル、今の人さぁ……(^^;」
「ああ、似てるよな。直紀さんに(汗)」
キノト
「性格なんて、特にね」
紘一郎
「ん? ああ、一さん。いらっしゃい」
「立て込んでいたようだけど、上がって構わないのかい?なんなら
出直すけど」
紘一郎
「あれが俺達の普段の会話ですから、気にしないで下さい(苦笑)
そろそろ日がありませんからね。話せるときに、話しておかないと」
「そ、そんなに凄いものなのか(汗)」
紘一郎
「………ええ。気を引き締めていかないとこっちがやられます。
さ、どうぞ。茶ぐらい出しますんで」
紘一郎の自室。独身一人暮らしの割には、こざっぱりとした部屋である。風通しを良くした部屋に、白いのりの利いたカーテンが目にまぶしい

キノト
「(ちら)ミツル……」
「とりあえず、ゴミが溢れないようには善処する。するから
そんな目でみないでくれ(汗)」
キノト
「そうだね。以前えらい目にあったし」
「ああう、勘弁しろって」
紘一郎
「お待たせしました。さて、さっそくですが本題に入りましょうか」
麦茶とともに、レポートのようなものを手渡す。表題は『クリアランスセールに向けての傾向と対策』である(^^;この講義を受けるために今日は、わざわざ紘一郎の下宿まできたのだ。そして、紘一郎による講義が始まった。

紘一郎
「さて、バーゲンに置ける俺達の役割は、いかにサポートするかに
掛かってます。それがひいては俺達の幸せにもつながってるんです」
キノト
「? どーゆうことですか?」
からんと氷をかき回し、たずねる。

紘一郎
「効率良く回れば、よくて4時間で終わります。相手の思考を読み、
先回りして品を押さえれば、迷う時間が短縮されますからね。結構、
ここは重要ですよ。姉貴に言わせると、迷うのもバーゲンの醍醐味
なんですが、それだといつまでも終わりませんからね。選択肢をある
程度設けた上で合理的に攻略するのがコツです」
キノト
「ほ、ほんとに大変なんですね(汗) ね、ミツル。…ミツル?」
ぽけっとキノトが紘一郎の話を聞く傍らで、十が何をしてたかと言えば…話を逐一、レポートに書き込み、さらに赤線を引いていた(笑)

キノト
「ミツル…学校の講義の時とえらく態度が違わない?(笑)」
「ええい、些細なことを気にするな。で、具体的に何をすれば
いいのかな、紘一郎君」
紘一郎
「そうですね。姉貴の買い物が普通の人より大変なのは、サイズに
大きく関係してるんですよ。なんたって、バーゲン時にいちいち
試着してるヒマなんてないですからね。ところで一さん、姉貴の
サイズ知ってます?」
「え?サイズって………サイズっ(汗)」
紘一郎
「? ああ、服とか靴のサイズですよ(笑)」
「ああ、ふくとかくつね………ははははは(乾いた笑い)」
キノト
「ミツル…喋りが平仮名になってる(^^;」



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