街から闇は消えたのか? そんなことは知らない。だが、周りは明るい。満月、その輝きも、もう目立たない。
ひゅうっ……。
空気を切り裂く、鋭い音。その振動と共に、光を弾き、輝く剣。舞うように、踊るように。跳ねるように、飛ぶように。剣は、ふるわれる。
その光景は、まるで芸術家によって創られたかのように美しい。
- 涼子
- 「もう、十二時ですよ」
横から、声がかけられる。声の方を振り向く。
- みのる
- 「……起きていたのか」
- 涼子
- 「はい」
すっ、と剣をしまう。瞬く間に剣は消え去り、そこにはキーホルダーが残る。
- 涼子
- 「どうしたんです、この夜中に」
- みのる
- 「……」
- 涼子
- 「もう、寝ましょう?」
- みのる
- 「……そうだな」
だが返事と裏腹に、一歩も動かない。
- 涼子
- 「……」
- みのる
- 「弱くなった」
- 涼子
- 「え?」
- みのる
- 「俺は、弱くなった」
- 涼子
- 「……?(驚)」
- みのる
- 「認めたくはないが、事実だ」
- 涼子
- 「……どうして、突然に?」
- みのる
- 「突然……か。いや、そうじゃない。始まりは一年前だ」
- 涼子
- 「私が、ここに来る前ですか……?」
- みのる
- 「いや、ここに来てからでもある」
- 涼子
- 「……?」
- みのる
- 「一年前。俺は、恨んでいた」
- 涼子
- 「……!」
- みのる
- 「もちろん、今は恨んでいない。だが……。俺は、その恨
みゆえに強かった」
- 涼子
- 「みのるさん……」
- みのる
- 「……夏和流や、君にあって、俺は変わったのだろう……
だが、同時に弱くなってしまった」
- 涼子
- 「……」
- みのる
- 「だから、また強くなる」
- 涼子
- 「え?」
- みのる
- 「今度は、護るため、優しさで強くなる。それを決めた」
- 涼子
- (ぱあっと明るくなる)
- みのる
- 「恨みより、優しさの方が強い、などということはない。
恨みだろうと優しさだろうと、強いものは強く、弱いものは弱い。否定したくとも、それが現実。
だから、まずは強くなる」
- 涼子
- 「みのるさん……」
- みのる
- 「……寝よう」
- 涼子
- 「はい」
闇は、どんなに打ち消そうとそこにある。だが、そして月の明かりもまた、消え去ったわけではないのだ。
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