エピソード587『月に煌めく剣舞の誓い』


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エピソード587『月に煌めく剣舞の誓い』

街から闇は消えたのか? そんなことは知らない。だが、周りは明るい。満月、その輝きも、もう目立たない。
 ひゅうっ……。
 空気を切り裂く、鋭い音。その振動と共に、光を弾き、輝く剣。舞うように、踊るように。跳ねるように、飛ぶように。剣は、ふるわれる。
 その光景は、まるで芸術家によって創られたかのように美しい。

涼子
「もう、十二時ですよ」

横から、声がかけられる。声の方を振り向く。

みのる
「……起きていたのか」
涼子
「はい」

すっ、と剣をしまう。瞬く間に剣は消え去り、そこにはキーホルダーが残る。

涼子
「どうしたんです、この夜中に」
みのる
「……」
涼子
「もう、寝ましょう?」
みのる
「……そうだな」

だが返事と裏腹に、一歩も動かない。

涼子
「……」
みのる
「弱くなった」
涼子
「え?」
みのる
「俺は、弱くなった」
涼子
「……?(驚)」
みのる
「認めたくはないが、事実だ」
涼子
「……どうして、突然に?」
みのる
「突然……か。いや、そうじゃない。始まりは一年前だ」
涼子
「私が、ここに来る前ですか……?」
みのる
「いや、ここに来てからでもある」
涼子
「……?」
みのる
「一年前。俺は、恨んでいた」
涼子
「……!」
みのる
「もちろん、今は恨んでいない。だが……。俺は、その恨 みゆえに強かった」
涼子
「みのるさん……」
みのる
「……夏和流や、君にあって、俺は変わったのだろう…… だが、同時に弱くなってしまった」
涼子
「……」
みのる
「だから、また強くなる」
涼子
「え?」
みのる
「今度は、護るため、優しさで強くなる。それを決めた」
涼子
(ぱあっと明るくなる)
みのる
「恨みより、優しさの方が強い、などということはない。 恨みだろうと優しさだろうと、強いものは強く、弱いものは弱い。否定したくとも、それが現実。
だから、まずは強くなる」
涼子
「みのるさん……」
みのる
「……寝よう」
涼子
「はい」

闇は、どんなに打ち消そうとそこにある。だが、そして月の明かりもまた、消え去ったわけではないのだ。



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