- 爺さん
- 「のお、神羅よ」
- 神羅
- 「なんじゃい」
- 爺さん
- 「最近、巷では噂のパン屋があるんじゃが知っておるか?」
- 神羅
- 「どんな噂なんや」
- 爺さん
- 「結構そこのパンが美味しいらしいんじゃ」
- 神羅
- 「一体どこでそんな噂を聞くねん?」
- 爺さん
- 「まあ、そんなことはどうでも良いことではないか」
- 神羅
- 「そこでワシに買いに行けと言うのだな」
- 爺さん
- 「ご名答。安心せい、金は出す」
- 神羅
- 「当然やん。パンは何でもええな?」
- 爺さん
- 「出来れば珍しいパンをな」
自転車で駆け抜けること数分
- 神羅
- 「何や。結構近いやんか。しかも、ワシがいつも買いにく
る商店街にあるとは」
カラン、カラン。
- 観楠
- 「いらっしゃいませ」
- 神羅
- 「(ほう、喫茶スペースまであるんや)」
店の中を観察中、観察中……
- 神羅
- 「なんか、珍しいパンあります?」
- 観楠
- 「珍しいパンでしたら、ししゃもパンなんかありますが」
- 神羅
- 「し、ししゃもパンですか……じゃあ、それとこれとお願
いします」
- 観楠
- 「ありがとうございます。○○○円になります」
- 神羅
- 「あ、はい。ところでここでお茶もできるんですか?」
- 観楠
- 「ええ」
- 神羅
- 「じゃあ、すいませんがアイスコーヒーを」
- 観楠
- 「はい、どうぞ」
- 神羅
- 「いくらですか?」
- 観楠
- 「○○○円です」
- 神羅
- 「ここに置いときますね」
しばらく、コーヒーを食す。
- 神羅
- 「(いやぁ、こうのんびりしているとなんとなく眠たくなっ
てくるのぉ。しかし、さすがに……こういうところで……ね……る……ぐぅ)」
- 観楠
- 「(あれ、寝てしまいましたねえ)」
からからん。
寝こけている神羅が何故起きないのか不思議な勢いで、ドアが開いた。入ってきたのは、十歳くらいと十七歳くらいの二人の少女。小さい方は白いワンピース、大きい方は高校の制服を着ていた。
- 萌
- 「お魚パン、頂戴!」
元気一杯いいながら、棚のほうに走っていく。
- 茜
- 「シシャモパンの他にも、ホタテパンあるよ〜♪」
トレイをとりながら、茜。
- 観楠
- 「(ど〜してそういう変なパンばかり人気があるのだろ
う(T^T))」
- 萌
- 「お魚♪」
- 茜
- 「じゃあさ、両方買っちゃおうよ。一個づつなら食べられ
るよね」
- 萌
- 「うん!」
- 茜
- 「え〜っと、あたしはプリンアラモードにしよっと」
- 萌
- 「太るよ、あかね(悪気はない)」
- 茜
- 「それは嫌(^^;」
しかしその程度で甘いものの誘惑に勝てるようなら、悩む乙女(笑)はいなくなる。
- 茜
- 「う〜ん……あとはクリームパンとチョコデニッシュと……」
- 観楠
- 「(うん、女の子らしい組み合わせ、だな)」
- 茜
- 「これでおっけ〜。あ、萌ちゃん、あたしが払うね(にこ
にこ)」
- 萌
- 「いいの?」
- 茜
- 「うん。ま〜ちゃんにおやつ代2千円ほどもらったから、
おごったげる。てんちょ〜さん、あと紅茶二つおねがいします!」
- 観楠
- 「あ、はいはい。1650円になります」
パンのトレイと紅茶のトレイをそれぞれ手に、喫茶コーナーへ。寝ている神羅が、そこにいる。
- 萌 :「ひぇひぇふふぉ?(訳
- 寝てるよ?)」
- 茜
- 「萌ちゃん、耳出てるよ〜」
ししゃもパンをくわえている萌の頭から、白い猫耳がぱっと消えた。
- 茜
- 「でも、良く寝てるよね〜」
- 萌
- (はむはむ)
- 茜
- 「鼻先にさ、なんかおいしそうな匂いのするもの出したら
起きるのかなあ?」
- 萌
- 「(はむはむごっくん) 萌なら、ししゃもパンの匂いで起
きるけど」
などと、きゃわきゃわ話してる側から、ばたーんと荒々しい音を立ててドアが開けられる。
- 観楠
- 「ああ、直紀さん……どうしたの? ぜーはー言ってるけ
ど」
- 直紀
- 「か、か、か、観楠さーん!(ぜいぜい) あ、とりあえず
水下さい」
- 観楠
- 「はいはい(笑) 落ち着いた?」
- 直紀
- 「(ごくごく) ……ん、ごちそうさまっ。じゃなくってぇ!
観楠さん、資料ここに置いてきませんでした、あたしっ(汗)」
- 観楠
- 「え? いや、気が付かなかったなぁ」
- 直紀
- 「そーですかぁ(がっかり)」
- 萌
- 「ねえ、なおきちゃん。それってどんなの? あたし探し
てあげるよ」
- 直紀
- 「あ、萌ちゃんこんちはっ。えーっとねこーんな形の袋に
入っててぇ、結構重いの」
- 萌
- 「(こくこく) ん、わかった。みんなに聞いてみるねっ、
ちょっとまってて」
そういって、萌が外に出ようとした矢先、
- 茜
- 「ね、おねーさん。あれ、そーじゃない?」
指さした先は神羅が座ってるイスの下。神羅は……まだ起きる気配ナシ(^^;すーこすーこ、寝息を立てていた。
- 直紀
- 「あーあれあれっ! ね、おにーさんちょっと起きてっ(つ
んつん)」
- 神羅
- 「う? ううーーーん(寝返り)」
- 直紀
- 「ちょっと、こらっ! 起きなさいってば」
- 神羅
- 「すーすー」
- 直紀
- 「もうーーーこちとら急いでんのよっ! こらっ起きない
かっ!(ゆすゆす)」
- 神羅
- 「むにゅむにゅ(ごろんごろん)」
- 直紀
- 「……このぉ(怒) さっさと……起きろってのよっ!!」
- 神羅
- 「う? うわわっ(汗)」
ぐいっと襟首をひっつかむと、横に倒す
- SE
- 「どすーん」
という音を後目に、尻に敷かれた資料を奪回する。直紀これでも譲歩したようだが、流石下町育ち……気が短い(^^;
- 観楠
- 「(直紀さんって、結構(^^;)」
- 萌
- 「うわあ、痛そう」
- 直紀
- 「じゃ、お騒がせしましたっ! ああっ、会議に間に合わ
ないぃ」
かららーんとドアベルの音も高らかにその場をあとにする。
- 神羅
- 「な、何やったんや。いまのは」
わけも分からず周りを見回す神羅。ふとパンを食べている少女達が目にはいる。
- 神羅
- 「なあ、君ら一体何が起きたか知っとる?」
- 茜
- 「え〜っと、かわい〜おねーさんが慌てて飛び込んできて、
そこの座ってた椅子の下に忘れてった袋とろうとして、君のこと落っことしたんだよ」
- 神羅
- 「(ふえ? つまり、ワシの座っていたイスに何かそのお
ねーさんの重要な物があってそれでグワァで、ゴテッなわけやな)」
- 茜
- 「ねえ、痛くなかった?」
- 神羅
- 「そこらへんは丈夫やから。ところで店長さんそのお姉さ
んはよく来る人なんですか?」
- 観楠
- 「え、うん。結構来る方かな」
- 神羅
- 「そうなんですか。じゃあ、今度来たときに『あの時はす
いませんでした』と言っておいてもらえませんか?」
- 観楠
- 「分かりました」
- 神羅
- 「では、よろしくお願いします」
そう言って神羅は出ていった。何かを忘れて……
- 萌
- 「ねえ、あかね。あれ何?」
萌の指さした先にはさっき神羅が買ったパンの紙袋があった(^^;
かららん
- 直紀
- 「こんにちはーっと! 観楠さんお茶下さいー」
- 観楠
- 「いらっしゃい。いつもの?」
- 直紀
- 「んーん。今日は緑茶がいいなー」
- 観楠
- 「はいはい(笑) あ、そうだこないだ来た学生の人が謝っ
てたよ『あの時はすいませんでした』って。はい、番茶だけど」
- 直紀
- 「こないだ? あ、ありがとですー」
- 観楠
- 「ああ、ほら。直紀さんが首根っこひっつかんでどかした
人いたでしょう? あの人」
- 直紀
- 「(ずずー)……そーいや、そんなことしたような気も(汗)」
番茶をすすりつつ、話し込んでると
かららん
- 神羅
- 「(今日はなんにするかなぁ)」
- 直紀
- 「ん? あれは……(じいーーーー)」
- 神羅
- 「店長さん、今日はこれとこれお願いします。……あの?
なんか付いてますか、お姉さん」
- 直紀
- 「ねえ君、こないだあそこで寝っこけてなかった?」
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