エピソード591『すぐ寝ます』


目次


エピソード591『すぐ寝ます』

ある日の出来事

爺さん
「のお、神羅よ」
神羅
「なんじゃい」
爺さん
「最近、巷では噂のパン屋があるんじゃが知っておるか?」
神羅
「どんな噂なんや」
爺さん
「結構そこのパンが美味しいらしいんじゃ」
神羅
「一体どこでそんな噂を聞くねん?」
爺さん
「まあ、そんなことはどうでも良いことではないか」
神羅
「そこでワシに買いに行けと言うのだな」
爺さん
「ご名答。安心せい、金は出す」
神羅
「当然やん。パンは何でもええな?」
爺さん
「出来れば珍しいパンをな」

自転車で駆け抜けること数分

神羅
「何や。結構近いやんか。しかも、ワシがいつも買いにく る商店街にあるとは」

カラン、カラン。

観楠
「いらっしゃいませ」
神羅
「(ほう、喫茶スペースまであるんや)」

店の中を観察中、観察中……

神羅
「なんか、珍しいパンあります?」
観楠
「珍しいパンでしたら、ししゃもパンなんかありますが」
神羅
「し、ししゃもパンですか……じゃあ、それとこれとお願 いします」
観楠
「ありがとうございます。○○○円になります」
神羅
「あ、はい。ところでここでお茶もできるんですか?」
観楠
「ええ」
神羅
「じゃあ、すいませんがアイスコーヒーを」
観楠
「はい、どうぞ」
神羅
「いくらですか?」
観楠
「○○○円です」
神羅
「ここに置いときますね」

しばらく、コーヒーを食す。

神羅
「(いやぁ、こうのんびりしているとなんとなく眠たくなっ てくるのぉ。しかし、さすがに……こういうところで……ね……る……ぐぅ)」
観楠
「(あれ、寝てしまいましたねえ)」

からからん。
 寝こけている神羅が何故起きないのか不思議な勢いで、ドアが開いた。入ってきたのは、十歳くらいと十七歳くらいの二人の少女。小さい方は白いワンピース、大きい方は高校の制服を着ていた。

「お魚パン、頂戴!」

元気一杯いいながら、棚のほうに走っていく。

「シシャモパンの他にも、ホタテパンあるよ〜♪」

トレイをとりながら、茜。

観楠
「(ど〜してそういう変なパンばかり人気があるのだろ う(T^T))」
「お魚♪」
「じゃあさ、両方買っちゃおうよ。一個づつなら食べられ るよね」
「うん!」
「え〜っと、あたしはプリンアラモードにしよっと」
「太るよ、あかね(悪気はない)」
「それは嫌(^^;」

しかしその程度で甘いものの誘惑に勝てるようなら、悩む乙女(笑)はいなくなる。

「う〜ん……あとはクリームパンとチョコデニッシュと……」
観楠
「(うん、女の子らしい組み合わせ、だな)」
「これでおっけ〜。あ、萌ちゃん、あたしが払うね(にこ にこ)」
「いいの?」
「うん。ま〜ちゃんにおやつ代2千円ほどもらったから、 おごったげる。てんちょ〜さん、あと紅茶二つおねがいします!」
観楠
「あ、はいはい。1650円になります」

パンのトレイと紅茶のトレイをそれぞれ手に、喫茶コーナーへ。寝ている神羅が、そこにいる。

萌 :「ひぇひぇふふぉ?(訳
寝てるよ?)」
「萌ちゃん、耳出てるよ〜」

ししゃもパンをくわえている萌の頭から、白い猫耳がぱっと消えた。

「でも、良く寝てるよね〜」
(はむはむ)
「鼻先にさ、なんかおいしそうな匂いのするもの出したら 起きるのかなあ?」
「(はむはむごっくん) 萌なら、ししゃもパンの匂いで起 きるけど」

などと、きゃわきゃわ話してる側から、ばたーんと荒々しい音を立ててドアが開けられる。

観楠
「ああ、直紀さん……どうしたの? ぜーはー言ってるけ ど」
直紀
「か、か、か、観楠さーん!(ぜいぜい) あ、とりあえず 水下さい」
観楠
「はいはい(笑) 落ち着いた?」
直紀
「(ごくごく) ……ん、ごちそうさまっ。じゃなくってぇ! 観楠さん、資料ここに置いてきませんでした、あたしっ(汗)」
観楠
「え? いや、気が付かなかったなぁ」
直紀
「そーですかぁ(がっかり)」
「ねえ、なおきちゃん。それってどんなの? あたし探し てあげるよ」
直紀
「あ、萌ちゃんこんちはっ。えーっとねこーんな形の袋に 入っててぇ、結構重いの」
「(こくこく) ん、わかった。みんなに聞いてみるねっ、 ちょっとまってて」

そういって、萌が外に出ようとした矢先、

「ね、おねーさん。あれ、そーじゃない?」

指さした先は神羅が座ってるイスの下。神羅は……まだ起きる気配ナシ(^^;すーこすーこ、寝息を立てていた。

直紀
「あーあれあれっ! ね、おにーさんちょっと起きてっ(つ んつん)」
神羅
「う? ううーーーん(寝返り)」
直紀
「ちょっと、こらっ! 起きなさいってば」
神羅
「すーすー」
直紀
「もうーーーこちとら急いでんのよっ! こらっ起きない かっ!(ゆすゆす)」
神羅
「むにゅむにゅ(ごろんごろん)」
直紀
「……このぉ(怒) さっさと……起きろってのよっ!!」
神羅
「う? うわわっ(汗)」

ぐいっと襟首をひっつかむと、横に倒す

SE
「どすーん」

という音を後目に、尻に敷かれた資料を奪回する。直紀これでも譲歩したようだが、流石下町育ち……気が短い(^^;

観楠
「(直紀さんって、結構(^^;)」
「うわあ、痛そう」
直紀
「じゃ、お騒がせしましたっ! ああっ、会議に間に合わ ないぃ」

かららーんとドアベルの音も高らかにその場をあとにする。

神羅
「な、何やったんや。いまのは」

わけも分からず周りを見回す神羅。ふとパンを食べている少女達が目にはいる。

神羅
「なあ、君ら一体何が起きたか知っとる?」
「え〜っと、かわい〜おねーさんが慌てて飛び込んできて、 そこの座ってた椅子の下に忘れてった袋とろうとして、君のこと落っことしたんだよ」
神羅
「(ふえ? つまり、ワシの座っていたイスに何かそのお ねーさんの重要な物があってそれでグワァで、ゴテッなわけやな)」
「ねえ、痛くなかった?」
神羅
「そこらへんは丈夫やから。ところで店長さんそのお姉さ んはよく来る人なんですか?」
観楠
「え、うん。結構来る方かな」
神羅
「そうなんですか。じゃあ、今度来たときに『あの時はす いませんでした』と言っておいてもらえませんか?」
観楠
「分かりました」
神羅
「では、よろしくお願いします」

そう言って神羅は出ていった。何かを忘れて……

「ねえ、あかね。あれ何?」

萌の指さした先にはさっき神羅が買ったパンの紙袋があった(^^;

後日

かららん

直紀
「こんにちはーっと! 観楠さんお茶下さいー」
観楠
「いらっしゃい。いつもの?」
直紀
「んーん。今日は緑茶がいいなー」
観楠
「はいはい(笑) あ、そうだこないだ来た学生の人が謝っ てたよ『あの時はすいませんでした』って。はい、番茶だけど」
直紀
「こないだ? あ、ありがとですー」
観楠
「ああ、ほら。直紀さんが首根っこひっつかんでどかした 人いたでしょう? あの人」
直紀
「(ずずー)……そーいや、そんなことしたような気も(汗)」

番茶をすすりつつ、話し込んでると
 かららん

神羅
「(今日はなんにするかなぁ)」
直紀
「ん? あれは……(じいーーーー)」
神羅
「店長さん、今日はこれとこれお願いします。……あの?  なんか付いてますか、お姉さん」
直紀
「ねえ君、こないだあそこで寝っこけてなかった?」



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