柳直紀
無堂千影
スナ同
豊中雅孝
吹利市内、とあるゲーセン。
たったった、と走って駆け込んでくる銀髪の少女。駆け込んできて貼り付いた先は……クレーン。
両替機に千円札を入れる千影。その背後にあるレーシングゲーム機では、今まさに熱い戰いが終ったところだった。
コインを握りしめ、千影がじいぃっと視線を注いでいるそれ。
他のぬいぐるみとは一線を画し、しっかりと作られた黄色いぬいぐるみ。
千影の前にいた青年も、それを狙っているがなかなか掴めない。コインが尽き、青年が両替機にむかうと、千影がさっと操作部に付いてコインを落し込んだ。
クレーンはかなりトルクが低く、ピカチュウは掴んでも掴んでもぽろりと落ちる。
一回め、失敗。
二回目、失敗。
三回目、失敗。
四回目、失敗。
……
ピカチュウはなかなか掴めない。
見ているのに飽きた豊中がジュースを買って戻って来た時も、千影はまだクレーンに貼り付いていた。
そして、クレーンがぴかちゅうを捕捉した。
ぴょこぴょこ跳ね回り、フラナの手を掴んでぶんぶん振り回しで喜びを表現する千影。
千影の後に並び直した青年が、悔しそうな顔をしていた。
鞄には入れず、ベストの胸元にぴかちゅうを入れ、顔だけを外に覗かせるようにする千影。
ぞろぞろ連れだって、ベーカリー楠へ。ベーカリーでは、直紀がウバ茶を飲んでいるところだった。
千影が胸元から取り出したぬいぐるみ。やや上目使いになる位置になったそれをみて。