エピソード592『ぴかちゅう』


目次


エピソード592『ぴかちゅう』

登場人物

柳直紀
 無堂千影
 スナ同
 豊中雅孝

本編

吹利市内、とあるゲーセン。

千影
「あ、ぴかちゅう!!」

たったった、と走って駆け込んでくる銀髪の少女。駆け込んできて貼り付いた先は……クレーン。

フラナ
「あ、ぴかちゅうだ」
千影
「欲しい♪……よおおぉっし」

両替機に千円札を入れる千影。その背後にあるレーシングゲーム機では、今まさに熱い戰いが終ったところだった。

豊中
「ちっ、また一着になり損ねた。次はコンバット・シュー ティングでもやるか……あれ? 本宮君じゃないか」
本宮
「こんにちは。豊中さん、ぴかちゅうってご存知ですか」
豊中
「ああポケモンのあれ。名前と形なら知っているよ……っ て、そこにある黄色いのがそうだよ」

コインを握りしめ、千影がじいぃっと視線を注いでいるそれ。
 他のぬいぐるみとは一線を画し、しっかりと作られた黄色いぬいぐるみ。
 千影の前にいた青年も、それを狙っているがなかなか掴めない。コインが尽き、青年が両替機にむかうと、千影がさっと操作部に付いてコインを落し込んだ。
 クレーンはかなりトルクが低く、ピカチュウは掴んでも掴んでもぽろりと落ちる。
 一回め、失敗。
 二回目、失敗。
 三回目、失敗。
 四回目、失敗。
 ……

豊中
「……良くやるな、あの子(呆)」
本宮
「……良くやりますね(疲)」

ピカチュウはなかなか掴めない。
 見ているのに飽きた豊中がジュースを買って戻って来た時も、千影はまだクレーンに貼り付いていた。
 そして、クレーンがぴかちゅうを捕捉した。

千影
「やったぁ♪」
フラナ
「よかったね、チカちゃん」

ぴょこぴょこ跳ね回り、フラナの手を掴んでぶんぶん振り回しで喜びを表現する千影。
 千影の後に並び直した青年が、悔しそうな顔をしていた。

千影
「ぴかちゅう〜」

鞄には入れず、ベストの胸元にぴかちゅうを入れ、顔だけを外に覗かせるようにする千影。

千影
「ベーカリー行こ。お茶お茶」
フラナ
「うん」
佐古田
「……(同意はしているようである)」
本宮
「行きましょうか」
豊中
「そうだな」

ぞろぞろ連れだって、ベーカリー楠へ。ベーカリーでは、直紀がウバ茶を飲んでいるところだった。

観楠
「いらっしゃい。あれ、それは」
千影
「ぴかちゅう(はぁと)」
直紀
「ぷりちー(はぁと)」
豊中
「(ぷりちー、ねぇ……)」

千影が胸元から取り出したぬいぐるみ。やや上目使いになる位置になったそれをみて。

直紀
「あううううう、可愛い〜」



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