エピソード594『猫!?』


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エピソード594『猫!?』

夕方五時。Flower Shop Mikoの前。

SE
ぽん! 

空気が弾けるような音とともに、能義茜の姿が路上に現れた。

「(え?)」

茜はそのまま道路を渡り、ベーカリーに入ろうとして足を止めた。植え込みのところで涼んでいる白猫一匹。

「萌ちゃん、おっひさ〜」

しゃがみ込んで、萌の喉を指で掻く。うっとりしていた萌の耳が、ふいにぴくっと立つ。

「あ、気がついた?」

茜の背負っていたデイパックから、じたばたと何かが暴れる音がした。ほんの少しだけデイパックのジッパーを下げる。
 ……猫の鼻先が覗いた。
 むりむりと首をつき出した猫。猫が逃げないようにジッパーを締め直す茜。

「ほらミャー介、萌ちゃんに挨拶!」

一歳を越したばかりの若いオス猫。茜のデイパックから首だけ出した格好は可愛いかも知れないが……情けなさそうな顔である。

「(なんか可哀想かも(^^;;)」

萌は首をかしげ、のびをして立つ。

「(メイ、ちょっとあけてよ)」
メイ
「(人間の形になるの?)」
「(うん)」

萌はメイが作った空間の中で変身し、外に出る。茜が猫入りデイパックを抱え、待っていた。

「今日もここで何か食べるの?」
「う〜ん、でも、さすがにミャー介は連れて入れないよ。 萌ちゃんと違って、ミャー介は変身できないし」
「萌は人間の形をとれるもんね。じゃ、どうするの?」
「ホントはま〜ちゃんのこと連れに来たんだけど、見当た んないなあ。あ、萌ちゃん、うちで焼いたケーキ、食べに来る?」
「ほんと?(嬉) もちろん食べる〜(笑顔)。
でも、茜のお家ってどこにあるの?」
「東京だよ」
「……それって、すごく遠くない?」
「五秒もあれば着くよ(にっこり)。萌ちゃん、手、貸して」

小首をかしげながら、茜の手を握る萌。

「んじゃ、行こ」
SE
ぽん! 
「(え!?)」

吹利の路上から、二人の少女の姿が消えた。そして同時刻、東京・郊外の住宅地。

SE
ぽん! 
「きゃっ!?」
「萌ちゃん、耳、耳(^^;;)」

猫の額ほどの玄関先に、二人は実体化していた。郵便受けには「能義」、そして並べて少し小さく「豊中」。
 茜が玄関を開けようとすると、内側からドアが開いた。

「あら、おかえんなさい。お友達?」
「うん」

慌てて耳を片付ける萌。……が、それを目撃したはずの茜の母は何も言わなかった。

「いらっしゃい(にこにこ)。
お母さんは今から出かけるけど、あんまり遅くならないように送って上げるのよ、茜。吹利の人なんでしょう?」
「うん。萌ちゃんだよ」
「あらまあ。いつも茜がお世話になってます(にっこり)。 ゆっくりして行って頂戴ね。ケーキもできてるし」
「お邪魔しまぁす。(なぁんだ気にしない人なのか) あか ねのお母さんってあかねそっくりだね」



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