夕方五時。Flower Shop Mikoの前。
- SE
- ぽん!
空気が弾けるような音とともに、能義茜の姿が路上に現れた。
- 尊
- 「(え?)」
茜はそのまま道路を渡り、ベーカリーに入ろうとして足を止めた。植え込みのところで涼んでいる白猫一匹。
- 茜
- 「萌ちゃん、おっひさ〜」
しゃがみ込んで、萌の喉を指で掻く。うっとりしていた萌の耳が、ふいにぴくっと立つ。
- 茜
- 「あ、気がついた?」
茜の背負っていたデイパックから、じたばたと何かが暴れる音がした。ほんの少しだけデイパックのジッパーを下げる。
……猫の鼻先が覗いた。
むりむりと首をつき出した猫。猫が逃げないようにジッパーを締め直す茜。
- 茜
- 「ほらミャー介、萌ちゃんに挨拶!」
一歳を越したばかりの若いオス猫。茜のデイパックから首だけ出した格好は可愛いかも知れないが……情けなさそうな顔である。
- 萌
- 「(なんか可哀想かも(^^;;)」
萌は首をかしげ、のびをして立つ。
- 萌
- 「(メイ、ちょっとあけてよ)」
- メイ
- 「(人間の形になるの?)」
- 萌
- 「(うん)」
萌はメイが作った空間の中で変身し、外に出る。茜が猫入りデイパックを抱え、待っていた。
- 萌
- 「今日もここで何か食べるの?」
- 茜
- 「う〜ん、でも、さすがにミャー介は連れて入れないよ。
萌ちゃんと違って、ミャー介は変身できないし」
- 萌
- 「萌は人間の形をとれるもんね。じゃ、どうするの?」
- 茜
- 「ホントはま〜ちゃんのこと連れに来たんだけど、見当た
んないなあ。あ、萌ちゃん、うちで焼いたケーキ、食べに来る?」
- 萌
- 「ほんと?(嬉) もちろん食べる〜(笑顔)。
でも、茜のお家ってどこにあるの?」
- 茜
- 「東京だよ」
- 萌
- 「……それって、すごく遠くない?」
- 茜
- 「五秒もあれば着くよ(にっこり)。萌ちゃん、手、貸して」
小首をかしげながら、茜の手を握る萌。
- 茜
- 「んじゃ、行こ」
- SE
- ぽん!
- 尊
- 「(え!?)」
吹利の路上から、二人の少女の姿が消えた。そして同時刻、東京・郊外の住宅地。
- SE
- ぽん!
- 萌
- 「きゃっ!?」
- 茜
- 「萌ちゃん、耳、耳(^^;;)」
猫の額ほどの玄関先に、二人は実体化していた。郵便受けには「能義」、そして並べて少し小さく「豊中」。
茜が玄関を開けようとすると、内側からドアが開いた。
- 母
- 「あら、おかえんなさい。お友達?」
- 茜
- 「うん」
慌てて耳を片付ける萌。……が、それを目撃したはずの茜の母は何も言わなかった。
- 母
- 「いらっしゃい(にこにこ)。
お母さんは今から出かけるけど、あんまり遅くならないように送って上げるのよ、茜。吹利の人なんでしょう?」
- 茜
- 「うん。萌ちゃんだよ」
- 母
- 「あらまあ。いつも茜がお世話になってます(にっこり)。
ゆっくりして行って頂戴ね。ケーキもできてるし」
- 萌
- 「お邪魔しまぁす。(なぁんだ気にしない人なのか) あか
ねのお母さんってあかねそっくりだね」
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