エピソード609『銀色の月』


目次


エピソード609『銀色の月』

登場人物

無道千影
バンパイアハーフの女子高生、パフェ大好き。
本宮和久
千影と同じ高校に通う男子高生、不幸をしょってたつ男。
富良名裕也
本宮のクラスメイト、お気楽極楽能天気少年。
佐古田真一
本宮のクラスメイト、無愛想なギター少年。

本編

誰もいない夜の教室。窓から差し込む淡い月明かりが教室を照らす。
 虚ろな目で机に腰掛けている、黒髪に右目の青い少年……本宮。その目の前に流れるような銀髪に碧の瞳の少女が立っている……千影。その美しい顔に、魅惑の笑みを浮かべながら、本宮を見据えている。
 向き合う二人。冷たい月明かりが二人の姿を浮かび上がらせる。
 ひとつ……おぼつかない手つきで、本宮がワイシャツのボタンをはずす。そして、心持ち首をかしげながら、ぐいと襟を引っ張る。鍛え上げた首筋から胸にかけてがあらわになる。そのまま首筋を千影に差し出すように前にかがむ。
 千影が唇を開く、鋭く伸びた真っ白な糸切り歯がのぞく。そして、本宮の引き締まった首筋に鋭い歯がずぶずぶと食い込んでいく。

本宮
「っ……」

かすかに本宮がうめき声をあげる。
 ごくん……ごくん……
 二度ほど千影の喉が動き、そっと首筋から唇を離す……とがった歯の先が赤くを染まっている。唇から真っ赤な血がしたたる……ぺろりと唇を舐め、微笑む千影。

本宮
「あ……」

それと同時にずるり……と本宮の体が崩れ落ちる……首筋の二つの傷痕からそれぞれ一筋、赤い血がつたう。
 崩れ落ちた本宮を抱き留め、小さく笑みを浮かべながら耳元にささやく千影。

千影
「ごちそうさま……本宮君」

その顔は恐ろしい程美しかった……
 ……

先生
「……道」
千影
「(ごっくん) おいし〜」
先生
「無道」
千影
「ふふふ……(むにゃむにゃ) おいしい……くす」
先生
「無道千影!」
千影
「(がば) はいっ! あっとと」

先生の怒鳴り声に飛び起き、慌てて口元を拭く千影、あやうくよだれが出そうになってしまう。

先生
「……いい夢見たかぁ、無道」
千影
「え、はは、ごめんなさぁい〜(夢だったのかぁ残念〜(;_;))」

この後、キッチリ一人で掃除当番をするはめになった千影だった(涙)
 そして、夢を見た後日……

本宮
「なんか……さ、最近変じゃないか。無道さん」
フラナ
「チカちゃん、どうかしたの?」
本宮
「なんて言うか、こう、見られてるっていうか……最近、 無道さんの視線、気になるんだけど」
フラナ
「実はさぁ、チカちゃん。もとみーに気があったりして」
佐古田
「じゃんじゃぁぁん(あったりして〜)」
本宮
「なっ(赤面) なっ何言ってんだよ! お前らっ!」
フラナ
「じょおだんだよぉ、もとみー真っ赤!」
佐古田
「びろろろん(真っ赤〜)」
本宮
「お前らなぁっ!」

真っ赤になってしまう本宮、調子に乗ってからかうフラナ・佐古田の二人。そんなやり取りを知ってか知らずか……一方の千影。

千影
「……(思い出してる)おいしい夢だったなぁ(はぁ)」

知らない事は幸せだ……



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