そろそろ放課後だろうという時間。まだ学生の常連客の姿はない。
- かなみ
- 「とうさま、かなみ、寧ちゃんのところに遊びに行ってき
ます」
- 観楠
- 「はい、いってらっしゃい」
いったんはベーカリーに顔を出したかなみも遊びに行ってしまうと、ベーカリー店内には静かな時間が戻る。
からんころん
ドアベルが鳴り、常連客がやってくる時間になったことを告げた。入ってきたのは、スナ同の3人、プラス千影。
- 観楠
- 「いらっしゃい」
スナ同の3人はパンと飲み物、千影は紅茶だけ。
- フラナ
- 「ちかちゃん、お腹すいてないの?」
- 千影
- 「え? ううん」
大嘘。
- フラナ
- 「ふうん。でもさ、たしかちかちゃんのクラス、6限はプー
ルだったんだよね」
- 千影
- 「うん」
- SE
- きゅるるるる
軽くなったお腹の音は、幸い聞かれなかったようである。
- 千影
- (お腹すいたなあ……でも、今はパンなんかより……)
ちらっと本宮を見る千影。
- 千影
- (ううっ、おいしそうだよ〜(;_;)、でもでも、こんなとこ
ろで)
場所が違えばいいのか?(汗)
- 本宮
- (う〜ん、やっぱり無道さんの視線を感じるんだけど……)
- 千影
- (ちょっとでいいからおやつにしたいのにぃ)
からんからん
次の常連。……能義茜。もちろん茜の財布、つまり豊中(笑) もいっしょ。
- 茜
- 「こんにちはぁ」
- 観楠
- 「いらっしゃいませ」
- 茜
- 「ねえねえ店長さん、プリンパン、できた?」
- 観楠
- 「いえ、それがまだ(汗笑)」
- 千影
- 「……あ、あんな制服の高校もあるんだ」
- フラナ
- 「もとみー、どこの子か知ってる?」
- 本宮
- 「しらないな」
- 佐古田
- 「じゃじゃん(豊中さんにきけば?)」
- フラナ
- 「そうだね」
- 豊中
- 「(ギターの音で会話に気がついて)本人に聞けよ」
- 茜
- 「まーちゃん、会計お願い(はぁと)」
- 豊中
- 「……だからその呼び方は止めてくれといっとろーが(-_-;)」
- 千影
- 「(フラナに) 知り合いなんだ」
- フラナ
- 「うん。……あ、そうか、会ったことなかったんだよね。
豊中さんっていうんだよ。今は大学生」
- 豊中
- 「(会計を済ませ、財布をヒップポケットにねじ込みながら)
どうも。で、これが(茜を指差す) 俺の従妹の能義茜。フラナ君、そちらは?」
- 千影
- 「無道千影です☆」
- 茜
- 「よろしく〜☆、ちかちゃんってよんでいいのかな?」
- 千影
- 「いいよ☆」
茜のトレイに乗っているのはプリンアラモード。
- 茜
- 「(千影の紅茶を見て) あ、もしかしてダイエット中だっ
た?」
- 千影
- 「ううん、違うけど(本宮君、おやつにしたいよう(;_;))」
千影と茜の様子を見るともなく見ていた豊中、吹き出す。
- フラナ
- 「? どうしたんですか」
- 本宮
- 「??」
- 豊中
- 「いや、なんでもないよ。じゃあ俺は研究室に戻るからな、
茜」
からんからん
- 本宮
- (なんだったんだろう……?)
- 千影
- (はう〜、おやつ〜)
とりあえず、今日は千影のおやつにならずにすんだ本宮。そして店の外で。
- 豊中
- 『しかし、面白いものに食欲を感じる子だな』
- 居候
- 『若いから、美味そうに見えても不思議はないのう(大笑)』
- 豊中
- 『人食い鬼かバンパイアか、おまえは?(笑)』
知らぬが仏とは、この事だった。
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