エピソード625『制服が、好きなんですか?』


目次


エピソード625『制服が、好きなんですか?』

登場人物

一十(にのまえ・みつる)
美少年も好き……らしい風水師。
本宮和久(もとみや・かずひさ)
スナフキン愛好会のひとり。苦労人。
富良名裕也(ふらな・ゆうや)
通称フラナ。スナフキン愛好会のひとり。
佐古田真一(さこた・しんいち)
スナフキン愛好会の会長。ギターで語る。

承前

ジーワジーワジーワジーワ。甲高い蝉の鳴き声が響く。

「はぁ……暑い」

大通りを歩く一、大学は午前中で終り、ぶらぶらとあたりを歩いていた。

フラナ
「あー、にのまえさんだ」

元気な声が聞こえて来る。いつもの三人組。三人とも夏服に開襟シャツを着込んでいる。
 いつもの三人……のはずだか、なぜか、なんだかわからない違和感が漂う。

「(なんだかいつもと何かが違う……何かが?)」
本宮
「こんにちは一さん」
「おう、お前ら。休みじゃないのか」
本宮
「ほんとはテスト休みなんですけど、ちょっと……」
「追試か(笑)」
フラナ
「佐古田だけだよ」
本宮
「サボってばかりだから」
「まぁ佐古田だからな。って……まさか佐古田……か?」
佐古田
「……」

いつもの三人組……のはずなのだが。ちょっと違う、いつもスナフキンのコスプレにギターをしょった佐古田がめずらしく夏服に開襟シャツを着込んでいる。いつもの格好が印象的なだけに制服姿がやけに新鮮にみえる。

「……はじめて見たぞ、スナフキンのコスプレしてない佐 古田」

ぷいとそっぽを向いてしまう佐古田、制服は気に入ってないらしい。しかし、流れる裾長の金髪、澄んだ緑の瞳、白い肌……確かに美形ではあったが、こうして普通の格好をしていると、本当に絵に描いたような美少年に見える。

本宮
「普通科の講習に混ぜてもらうんで、制服でないとまずい んです」
「(呆然) なるほど……な、しかし印象が変るな……」
フラナ
「着せるの大変だったんだよ、ねぇ」
本宮
「散々暴れたもんな……まったく」
佐古田
「……(憮然)」
「なに! 着替え! 着替えだと! 言ってくれよ、俺も 手伝いたかったっ(握り拳)」

思わずマジで叫んでしまう一(笑)

一同
「!(ずざざざざざ)」

この爆弾発言にいっせいにひく三人。頬をひきつらせ冷や汗をたらす本宮、その後ろにこそこそ隠れる二人。

「……冗談だぞ」
フラナ
「(本宮に隠れて) ほんとかなぁ」
本宮
「一瞬、目がマジだったような」
佐古田
「(本宮に隠れて) ……(汗一筋)」
「おまえら本気で怯えるな……それより補講は間に合うの か?」
フラナ
「あ、はじまっちゃうよ」
本宮
「早く行かないと」
佐古田
「……」

ばたばたと慌てて学校にに走っていく三人。

「さ……て、ベーカリーで昼飯買ってかえるか」

三人を見送り、ベーカリーに向かって歩き出す一。

「……着替え、手伝いたかったな……」

ぽつりとつぶやく一。ほんとにアブナイぞ……

解説

基本的には内心ではともかく、外にこれだけ出すのがに疑問が残るので、これを本編採用して良いのかどうかがいまいち不安なところがありますが、ミツルの性格というか、暴走ぶりを示す一シーンではあります。$$========================================

直紀
「う、うーん(悩)」
フローリングの上に畳を引いた寝床。エアコンが壊れたわけでもあるまいに、部屋の主は寝苦しげだ。(直紀の夢の中)

本宮
「普通科の講習に混ぜてもらうんで、制服でないとまずいんです」
「(呆然)なるほど…な、しかし印象が変るな…」
フラナ
「着せるの大変だったんだよ、ねぇ」
本宮
「散々暴れたもんな…まったく」
佐古田
「…(憮然)」
「なに!着替え!着替えだと!言ってくれよ、俺も手伝いたかったっ(握り拳)」
がーん!

直紀
「そんなぁぁあああああ!!!」
がばりっと身を起こす直紀。そして翌朝

紘一郎
「おーい、姉ちゃん!起きてるかー」
すー
「なおちゃーん」
扉を叩くが、返事は返ってこない。合い鍵で扉を開けると、そこには呆然とタオルケットを抱えたまま座り込んだ直紀の姿。

紘一郎
「姉ちゃん、昨日俺んとこ来たとき鞄忘れただろ。今度は、忘れるなよ」
すー
「紘ちゃん、今日はそこそこキレイだね。今週そんなに大変じゃ無いかも(ほっ)」
紘一郎
「今のうちに、少し掃除しとくか。あとがだいぶ楽だし。ほら、姉ちゃん。掃除するから、どいたどいた」
先ほどから、微動だにしない直紀。

直紀
「……なんで、なのよぉ(冷汗)」
すー
「どうしたの?なおちゃん」
直紀
「……夢、みた」
深く追求せずに、片づけはじめる紘一郎。

すー
「どんなゆめ?」
かくかくしかじか。

すー
「しかしさ、直ちゃん。大変だね(ぽむ)」
直紀
「?何が??」
すー
「このままいくと、直ちゃん。仮に一さんが浮気でもしよう物なら、相手は女の子じゃなくて美少年である可能性の方が高いのよ。美少年だぞ『美少年』!!美少年相手にあんた……勝てる?」
直紀
「(がぁんっ)そ、そぉか。……か、勝てないかも(^^;」
すー
「勝てる要素、ないもんねぇ(^^;」
紘一郎
「どれ、今日はまずこのぐらいで何とかなったか。昼御飯ぐらいはそっちもち」
直紀
「……うん」
ベーカリーにて。からんからん。

観楠
「いらっしゃいませ、あれ、どうしたんです。直紀さん。昨日眠れなかったんですか?」
紘一郎
「何でも夢見が悪かったとか」
観楠
「どんな夢です?」
直紀&すー
「(ひきっっっっっ)い、言えない(冷汗)」
紘一郎
「何でも……」
直紀
「わー!言うな紘一郎!」
からからん。

「こんにちはぁ、カレーパンとサンドイッチとパンの耳下さい。ども、直紀さん」
軽く会釈して座る十。

「顔に、なんかついてます?」
直紀
「ああう、いや別になんでもないんですけど……」
なぜか沈黙。同じく沈黙。結構沈黙。…………。おかしいと思いつつも、思い当たるところのない十。観楠に話しかける。

「そういや、店長。高校生組の佐古田君見ました?」
観楠
「ああ。制服姿?」
「いやぁ、最初見て何か違和感あってさ、本宮君に言われて気がついたんだよ」
観楠
「僕も、初めてじゃないかな」
「よかったよねー。制服姿も似合ってて。ああしてると本当に美少年だし。かわいいし」
観楠
「……一さんが言うと、なんかなぁ……(^^;;」
直紀
「……一さんって、美少年好きですか?」
「(思いっきり)うん!目の得だし、特にこの季節は開襟シャツがいいよね(笑)」
直紀
「(まさか、まさかっ!)」
「着替えの時大変だったって、本宮君が言ってたけどなんだったら手伝ってやっても良かったな」
ひきぃぃぃぃぃぃいいいっっ!!

「……じょ、冗談ですよ!ははは(^^;;;」
豊中
「おまえのは冗談に聞こえンのだ(どげしっ)」
いつの間にか現れていた豊中のかかとがさっくりと脳天に突き刺さる。

観楠
「ああ、いらっしゃい」
豊中
「紅茶もらえますか、店長。それとこれのお会計もお願いします」
片手にしていたトレイをレジにおき、紅茶を受け取りながら金を払う。片手にトレイ、片手にカップで喫茶コーナーに戻り、

豊中
「しかし、少しは社会風紀というのを考えた発言をせいと言うにこいつは(溜息)」
直紀
「あ、あのぉ。一さん起きてこないんですけど……(^^;;」
豊中
「俺は昼飯はゆっくりと静かに食べる主義なんです」
直紀
「はぁ……」
もくもくとクリームパンを食す、豊中。側で倒れている十をじーっと見つつ、考え込む直紀。

直紀
「(さっきの…ホントに冗談だったのかな?その割には目が真剣だったような気がするんだけど(汗))」
すー
「(小声)ねえ、なおちゃん。二の舞さん起こさなくていいの?」
直紀
「あ、ああ!そだね。にのまえさんっ、大丈夫??(ゆさゆさ)」
「きゅう」
鮮やかなかかと落としが決められた脳天は、なかなか意識を覚まさない。

直紀
「うわ、たんこぶ出来てる(^^;」
すー
「…なおちゃん。あたし、良い起こし方思いついたっ(くす)」
くすくすと笑いをかみ殺しながら、十の側にしゃがみ込み

すー
「一さーん。「白の半袖開襟シャツ」で和風な美少年がベーカリーの側通りかかったよー。今起きれば、拝めるかもね(笑)」
直紀
「…ちょっと、すーちゃん。いくらなんでもそれは(^^;」
がばっっ!!

「ど、どこですか!(きょろきょろ)……あ(汗)」
視界に入る諦めたような、冷めた視線。

観楠
「一さん……(^^;」
直紀
「………」
すー
「なおちゃん、ごめん。ホントに起きちゃった(^^;」
直紀
「………」
豊中
「どこまで無節操な奴なんだ、お前は(呆)」
直紀
「………」
紘一郎
「………(ぽむ、と直紀の肩を叩く)」
「え、えーとですね、今のはつい条件反射で(汗)」
紘一郎
「……墓穴掘ってますね、一さん」
直紀
「一さん、ほんっっとーに『美少年』が、好きなんですね?!」
「え、いやその…………うん」
直紀
「………そうですか」
かららんと、ドアベルを押して出てゆく。

直紀
「(うーん、どうしよ。どうしよう(汗)こんなこと、誰に相談すればいいのよぅ(悩))」

悄然と通りを歩く直紀。
 FLOWER SHOP Mikoの前では尊が鉢植えに水をやっている。

「あら?直ちゃん、こんにちは(にこ)」
直紀
「……(とぼとぼ)」
「直ちゃんてば!」
直紀
「にゃっ!(驚)あ、尊おねーさんさんか……(悄然)」
「どうしたの?……元気……無いたいだけど」
直紀
「え?あ、あは、あは、あはは(汗)そんな事ない、
そんな事……」
「(なんか様子が変ね……)ほんとーに?(ずいっ)」

屈み込んで、ちょっと動けばくっついてしまう位顔を寄せて迫る尊。

直紀
「う(汗)……そんな事……ある」
「やっぱり……差し支えなければ聞かせてくれる?」
直紀
「うん(ぐしっ)」
「あ、泣かないの、ね、立ち話も何だから、上へどうぞ。
     
ユラちゃんブレンドのジャスミンティーもあるから、ね
(にこっ)」
直紀
「うん……」

手早く『配達中なのごめんねっ(はぁと)』の看板をかけ、二階の尊の部屋へ上がる二人。

FLOWER SHOP Miko二階、尊自室

SE
こぽこぽ……
「はい、お茶どうぞ。落ち着くわよ(笑顔)」
直紀
「うん、ありがと」
「で?何があったの?」
直紀
「実は……」

昨夜の夢の内容と、先ほどの出来事を話す。
 最初の内はにこやかに聞いていた尊だが、だんだん表情が引きつってくる。
 先ほどのベーカリーの一件を聞くに至っては、こめかみに『#』マークさえ浮かびかけている。

直紀
「……なの、でも話し聞いてもらったら楽になっちゃった(笑顔)
お店あけなきゃなんでしょ?もう行くね」
「……ちょっと待った!(がしっ)」

立ち上がりかけた直紀の手をがしっ!っとつかむ。

「そんな話し聞いちゃって、黙ってかえせる訳無いでしょ!」
直紀
「え(汗)」
「ちょっと待っててね(ぴっ)」

ポケットから携帯電話を取り出し、何処かへ電話する尊。

SE
TEL..TEL..TEL..がちゃっ
「こんにちは、私、如月と申しますが、あ、瑞希さん?そうです尊です、
……ええ、実は直ちゃんの事で緊急事態が発生しまして、もし来られる
なら大至急あたしの部屋まで来ていただきたいんですけど……はい、はい
……じゃぁお待ちしてます。」
直紀
「あ、あの……尊おねーさん?……(汗)『きんきゅーじたい』って(汗)」
「緊急事態です!(きっぱり)大体!直ちゃんみたいな可愛い娘が側に
いるのに、他の女の子に目を向けるだけでも許し難いのに!よりにもよって
『男の子』ですって!?(だんっ!)」
直紀
「ひゃっ(汗)」

ばべん!っと、テーブルをひっぱたく尊、衝撃で茶碗が踊る。

「あ、御免なさい、あたしったら興奮しちゃって(照)……でも!これは
由々しき事態よ!緊急事態なの!」
直紀
「み、尊おねーさん、落ち着いて、れーせーに、れーせーに(汗)」

段々声のトーンが上がりつつある尊を押さえる直紀。
 どっちが相談してんだか(笑)

「……見てらっしゃい……十さん……瑞希さんとあたしでその歪んだ嗜好を
粛正してあげるわ……見てらっしゃい!」

違うぞ、尊。
 『粛正』では無い、『矯正』だ。
 読み方は似てるが、意味が『全然』違う。
 拳を握り締め、燃える尊。

直紀
「あはははは(相談する人……間違えたかもしんない)(大汗)」

からからん。

「うーっす、暑いですねぇ、アイスティーとこれ下さい」
観楠
「相変わらずパンの耳かい?……おや、珍しい。サンドイ
ッチに、ソーセージパンとは」
「まぁ、いつまでも貧乏だけやってるわけには行きません
からね。で、これは夜食用と」
観楠
「やっぱり買うのか、パンの耳(笑)」
「いや、今まであちこちのベーカリーのパンの耳食べてき
たけど、ここのが一番美味しいですから」
観楠
「ほめられてんだか、なんだかなぁ(苦笑)」
「しかし、夏休み中なんですね」
観楠
「何を今更」
「高校生組がいないと特にそう思いますよ」

ちりーん。
 ないはずの風鈴の音が聞こえそうな沈黙。

観楠
「……こりゃもー、一さんの「致命的な欠点」として諦め
るしかないんじゃないかなぁ。直紀さん」
「なんか言いました?」
観楠
「この間の事、覚えてます?ほら、かかと落としの……」
「ああ……」
観楠
「直紀さん、割合悩んでましたよ。僕の方としても、この
件に関しては……相談に乗れないって言ったんですけどね」
 
 ことりと汗をかいたグラスが置かれる。からりと氷が鳴った。
「……美少年とかって騒いでる内は洒落になるじゃないで
すか」
観楠
「……?」
「でも、女性相手には洒落になんないし……。何より、」
観楠
「なにより?」
「そりゃ、直紀さんはかわいい人ですけど……。言えませ
んよ。かわいいなんて……。はずかしくって」
からんころん。

花澄
「こんにちは。アイスティー頂けますか?」
観楠
「こんにちは。あれ、ゆずちゃんは?」
花澄
「瑞鶴でお留守番。今、折り鶴作ってて動かないんです(笑)」
 
  そこまで言ったところで、花澄は一の持っているパンの耳に目を留める。
花澄
「パンの耳、ですか」
「え、あ、はい」
花澄
「……直紀さんに心配かけますよ、そんな食生活じゃ」

天使往来。
  一瞬、具合の悪そうな顔になった二人を見やって、花澄は首を傾げた。
 

花澄
「あの、何か?」
「いえ」
花澄
「直紀さんと、喧嘩でもした……わけでもなさそうですね。
誤解、されたとか?」

人情の機微という奴全般にわたって鈍感な筈の花澄なのだが、
  こと、女の子が絡むと、的を見事に射る場合がある。

「いえ……誤解というか……」

語尾が消える。
 

花澄
「(苦笑)人がいいな、一さんは」
「は?」
花澄
「うるさい、関係ない、で、済む話でしょ?」

言われてみればそうなのだが、相手に先手を打たれると、改めては言いにくい。

花澄
「でも、もしそうならば気を付けてあげてくださいな。
女の子って、時々妙なところで思いっきり深読みして、
悩み出すことがありますから…ね(苦笑)」
「男の子と、女の子なんて、最初から比べようがないですよね」
花澄
「え?」
「深読みするほど、僕が美少年云々って騒いでるように見えまし
た?」

珍しく、一は悩んでいるらしい。最も普段と比べてのことで、相変わらずどこか茫洋とした感じは拭えない。

花澄
「美少年が好き、ってことですか?」
「(照れたように)……はい、そのことです」
花澄
「誤解って……?」
観楠
「まぁ、一さんの普段の言動じゃ深読みされたって、ねぇ?」
「半分は本気、半分は洒落のつもりだったんですけどね」
観楠
「半分は本気って……(^^;;」
「自分のこと振り返ると、十七、十八って何でも出来て、何もし
なくても良くて、デタラメでも楽しかった時代だったんですよね。
 けど、僕は途中から道を決めちまったんです。結局、高校の半
分は勉強なり、修行なりに明け暮れて。その結果今の自分がいる
し、今の自分がとても好きだから、高校時代の事を悔いてはいな
い、そのはずなんですけど……。
 みのる君や夏和流君、本宮君達見てるとうらやましいのが半分、
妬ましいのが半分なんです。僕が切り捨てた生活をしてること。
自分たちが今どれだけ贅沢な時を過ごしてるか知らないこと。気
がついていてもそれにしらんふりが出来る傲慢なところ……。
 結局少し嫉妬しながら、気になって仕方なくって(苦笑)」
観楠
「……でも、それは違いますよ。一さんの言い様を聞いてるとみ
のる君達が何も悩んでないみたいに聞こえるけど、あの子達だっ
て悩んでます」
「……わかってるつもりです。けど、やっぱり気になって」
観楠
「……好きな子に悪戯する小学生じゃないんですから……(^^;;
で、それが半袖の開襟シャツとか詰め襟とかになるんですか?」
「うちの地方みんな制服でしたから」
観楠
「(声を潜めて)本当にそれだけですか?」
「(同じく声を潜めて)確かにそれとは別に好きだという話はあ
りますが」
観楠
「……もしかして、一さん、風魔の小次郎とか炎の転校生とか、
好きだったでしょ」
「……高校にはいる前に『ここはグリーンウッド』読んではまっ
た口です」
 
 しばらく、知らない人には全くどーでもいい話がされたと思ってほしい(笑)
 パンを食べ終えた豊中が一言。
豊中
「花澄さん、この話聞いてても時間を無駄にするだけですよ」
花澄
「そ、そうですか?」

そしてしばらくして。

花澄
「お取り込みの最中、すみませんけど……」
「それで、『X』って漫画が良くってですね。少年少女が制服オン
パレードでわぁ、すみません。花澄さん」
花澄
「こんなに生き生きと喋られたら、誤解するかもしれませんね」

にっこりと笑う。けど、当人は笑えはしない。

観楠
「全く、こんな風に男の子について話せるなら、直紀さんとかにも
何か言ってあげたら良いんじゃないですか?」
「繰り返して言うけど……。女の子に騒ぐのと、男の子に騒ぐの
とは意味違うじゃないですか」
花澄
「どういう風に?」
「……(赤面)」

花澄と観楠は顔を見合わせる。さっきあれだけ人目もはばからず馬鹿をやってた男が心底恥ずかしがっているらしい。

観楠
「……(ぽむ)」

と、観楠が納得したように手をたたく。花澄は首を傾げる。

「だって、女の子に可愛いなんて言ったら、その、」
花澄
「誰も気にしないですよ、可愛いくらいなら」
「ぼ、僕は気にします!少なくとも人が見てる前で口にすること
じゃないでしょう」
花澄
「見てなかったらかまわないですか?」
観楠
「一さん、もしかして……?」
「(店長お願い助けてと言う懇願の視線)」
観楠
「本宮君やみのる君のこと気にしてます?なら心配ないですよ。
あの二人も、一さんの行動がまともになれば安心するはずですか
ら」
「ちっがーう!」
花澄
「一さん」

声の調子が、少し落ちた。

花澄
「もし、誤解なら。そして、誤解だってことが分かってるなら……。
早く直紀さんを安心させてあげてくれませんか?」
 
 うつむいたまま、十がぽつりと呟く。
「そんなに、気にしてましたか?直紀さん」

と、からからんと真鍮のドアベルが鳴り、入り口に仁王立ちする二人の女性の影が浮かび上がった。

「遠い夜空で輝く星に」
瑞希
「彼女の泣き声こだまする」
「街から街へ泣くペアの」
瑞希
「涙数えてトラブルシュート」
尊&瑞希
「吹利旋風びゅーてぃぺあ、お呼びとあれば即参上!」
 
「な、なんです?一体」

うろたえる一(当然である)
 と、尊がびしぃっと一を指さして叫んだ。



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