エピソード633『どうして?』


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エピソード633『どうして?』

夏の吹利にて

観楠
「ふぅ……今日も暑いなぁ」
あまりの暑さにアタマがだれてくる。

観楠
「お客もいないし……ちょっと一休みするか。ふぁ〜〜 ぁ……」

客来たるが……

からんころん

観楠
「いらっしゃいませ……あっ!」
琢磨呂
「よぉ、店長! 元気だったか?(笑)」
三彦
「ご無沙汰しております」
観楠
「岩沙君に酒井君……2人ともその格好……は?」
琢磨呂
「格好って、これか?」
三彦
「別におかしくもありませんが」
観楠
「だ、だって、それって軍服じゃないの?(汗)」
琢磨呂
「……はぁ?」
三彦
「店長殿は暑さにやられたようであるな」
琢磨呂
「店長。俺達、海軍に入ったんだぜ」
観楠
「海軍? どこの?」
三彦
「海軍といえば皇国には唯一つ。大日本帝国海軍でありま す」
観楠
「……ちょっと、2人ともなに言ってるのか、わからない」
琢磨呂
「あのなぁ、店長。今どういう時期だかわかってるか?」
観楠
「今って、なんだよ(汗)」
三彦
「皇国の興廃がかかっておる重要な時にそのような事では 困りますな」
琢磨呂
「馬鹿野郎、『廃』なんてねぇんだ! 俺達は必ず勝つ!」
観楠
「……ちょっと待った。今、何年何月だっけ?」
三彦
「1944年8月であります」
観楠
「19……44年?」
琢磨呂
「ほんとに大丈夫か? 今年の夏風邪はしつこいらしいか らな。養生してくれよ(笑)」
観楠
「あ、うん……そか、1944年か……って、えぇ!?(汗)」
琢磨呂
「えぇ!? ってなんだよ」
観楠
「じゃ、じゃぁひょっとして、今、戦争中?」

盛大にこける琢磨呂と三彦

琢磨呂
「てんちょぉ〜〜(汗)」
三彦
「ほんとうに大丈夫でありますか?(汗)」
観楠
「……ど、どうなんだろう(汗)」
琢磨呂
「相変わらずボケ方が徹底的というかなんというか…… 緊張感が無くなっちまった(苦笑)」
観楠
「そ、そぉ?(汗)なんか状況が飲み込めてないんだけど」
三彦
「我々はこの春士官学校を卒業しまして、今は海軍に席を 置いております」
琢磨呂
「で、俺達にもようやく戦える時が来たってわけだ」
観楠
「戦い?」
三彦
「我々は2日後、比島方面へ出撃いたします。なにやら敵 軍がのさばっておるようですが……鬼畜共め、蹴散らしてくれるわ」
観楠
「で、でもそんな……いきなりじゃ。それに、なんで君達 がいかなきゃならないの?」
琢磨呂
「……何言ってんだよ?」
三彦
「我々は軍人ですぞ?」
観楠
「だ、だってさぁ! 変だよ、そんなの!」
三彦
「店長殿」
観楠
「なんだよ!」
三彦
「我々の国を守るのは我々しかおりません」
観楠
「それ、はそうかもしれないけど、だけどっ!」
琢磨呂
「……行かなきゃならないんだよ」
観楠
「岩沙君?」
琢磨呂
「俺達が行かなきゃ……行って戦わなきゃ、俺達の大事な 物は守れねぇ」
観楠
「そんな……麗衣子ちゃんはどうするんだよっ!」
琢磨呂
「あいつとは、別れた」
観楠
「別れたって、そんな簡単なもんだったの? 戦争で死ん じゃったら彼女どうするんだよ、無責任じゃないか!!」
琢磨呂
「……だからいくんだろうがっ!!」

琢磨呂、観楠に詰め寄る

琢磨呂
「いいかぁ!? 俺達は出撃する。そして、行ったら帰って これないかも知れねぇ。だけど俺達が何もしないままならここも、店長も、花屋のあねさん達も、アイツも! みんな、みんなやられちまうんだ!」
観楠
「だ、だからって……そんな、そんなこと……(半泣)」
琢磨呂
「こんな時だ。いつかは行かなきゃならない。それがちこっ と早かった。それだけじゃねぇか(笑)」
観楠
「岩沙君……」
琢磨呂
「そんな顔すんなって!(笑) 大丈夫、ちゃんと帰ってき てやるから(笑)」
三彦
「犬死にだけはしたくありませんからな(笑)」
観楠
「死ぬ、なんて言うなよぉ……(泣)」
三彦
「む、これはその、つまりですな……(汗)」
琢磨呂
「まぁいいじゃないか(笑)気の持ち方はそれぞれって」
かなみ
「父様、おきゃくさん?」
琢磨呂
「お、かなみちゃん。久しぶりだな(笑)」
かなみ
「たくまろちゃんと、さぶちゃん!(にこっ)」
三彦
「うむ」
かなみ
「2人とも、おでかけするの?」
琢磨呂
「おで?」
三彦
「かけ?」
観楠
「(苦笑)」
琢磨呂
「ん、そうだな(苦笑) おでかけ、か(笑)」
かなみ
「どこいくの?」
三彦
「うむ。船で遠い南の島まで行って来る」
かなみ
「かなみも行っていい?」
琢磨呂
「そりゃ……ちょっと無理だ(笑) そうだ、かなみちゃん がもう少し大きくなったらお父さんに連れてってもらうといい。なぁ、店長?(笑)」
観楠
「え、あ、うん。そうだね(笑)」
かなみ
「んと、じゃぁ、おみやげほしいのっ」
琢磨呂
「よし、まかせとけ(笑)」
三彦
「……岩沙、そろそろ時間だ」
琢磨呂
「ん、そうか……店長、邪魔したな(笑)」
観楠
「岩沙君、三彦君……」
かなみ
「もういっちゃうの?」
琢磨呂
「あぁ、すぐ帰って来るから。御土産楽しみにしてな(笑)」
かなみ
「うん!」
観楠
「2人とも、気をつけて……必ず、帰って来るんだよ!」
三彦
「わかりました」
観楠
「2人の持ってきたお茶、まだ残ってるんだからね!」
琢磨呂
「わかったって(苦笑) んじゃ行って来る!」

琢磨呂と三彦、並んで敬礼する

かなみ
「いってらっしゃい!(にこっ)」

敬礼のまねをするかなみと共に2人を見送る観楠。

観楠
「(絶対、生きて、帰って来るんだよ……みんなで、待っ てるから……)」

客来たる


「てんちょう、てんちょー!」

観楠
「ん……ぁあ?」
琢磨呂
「誰も来ないからって、寝るのは不用心だぜ?」
三彦
「全く」
観楠
「い、岩沙君に……三彦君! そっか、無事だったんだ お帰りっ!」

観楠、いきなり2人に抱き着く。

琢磨呂
「どど、どーしたよいきなりっ!?(汗)」
三彦
「……あ、暑いであります(汗)」
観楠
「よかった……ほんっとによかった!」
琢磨呂
「なぁサブ。俺達、抱き着かれるようなことしたか?」
三彦
「それは貴様の管轄だろう」
琢磨呂
「とにかく、放してくれ! 俺は男に抱き着かれるのは ごめんだ!」

解説

登場人物紹介はあえてつけませんでした。
 ……んー、どう言ったら良いのでしょうかね。内容・テーマ自体は読めばわかるとおもうんですが……。どういう意図で書かれたものだったかは覚えてないのです。実際の夢をもとにした作品だったのかな?



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