エピソード645『一年経ちました――夏和流の恩返し』


目次


エピソード645『一年経ちました――夏和流の恩返し』

登場人物

三河夏和流(みかわ・かわる)
寒いギャグを得意とする物語創造能力者
西山みのる(にしやま・みのる)
《道具》の管理者。夏和流の相棒。
湊川観楠(みなとがわ・かなみ)
ベーカリー楠店長
一十(にのまえみつる)
可愛い男の子の半ズボンにヨワいひと。
如月尊(きさらぎ・みこと)
如月流退魔術継承者な花屋の店長。
上田涼子(うえだ・りょうこ)
西田家の居候。みのるの恋人。
山田太郎(やまだ・たろう)
先代《道具》の管理者。みのるの祖父。

ベーカリーにて

九月一日。新学期の始まりである。

夏和流
「こんっちわ、三河屋でーす」
みのる
「お早うございます」
観楠
「お早う、夏和流くんにみのるくん」
「……あ」
夏和流
「どうしたんですか、一さん?」
「いや、なんでもない(……そうか、もう九月なのか……開 襟シャツの時期は過ぎてしまったんだな……ぶつぶつ)」
夏和流
「いやーしかし、気がついたらもう一年ですねー」
観楠
「一年?」
夏和流
「僕が、東京は間海市の和泉町より越してきて、ですよ」
観楠
「ああ、そういえばそうだね……って、もう一年はとっく に過ぎているんじゃ?(^^;」
夏和流
「まあまあ、細かい誤差は気にしないで……(^^; でも、 ホントに、この一年は色々あって……まさかこの僕が夏休みの宿題を九月一日に終える日が来るなんて……」
観楠
「今まで九月一日に終えたことがないの?」
夏和流
「ええ、生まれてこの方、夏休みの宿題を終えたことは、 ありませんでした(きっぱり)
それが、こんな事になって……しみじみしちゃいますね」
「それはいいけれど、遅刻しないの?」
夏和流
「あ、しまった! んじゃ、これとこれとこれ!」
観楠
「はいはい……よっと。三百五十円ちょうどだね」
夏和流
「ども。そんじゃ、また明日!」

学校にて

そして、始業式である。何処でも、何時でも校長の話は長くてつまらない。

夏和流
「ふあぁ。あ、そうだ、みのる、忘れない内に言っておく けれど、今日みのるの家に行くね」
みのる
「……なぜだ?」
夏和流
「へっへっへ。内緒だよ。ちなみに「そんなのないっしょー」 なんて言っちゃダメだよ」

ぱぎっ。

夏和流
(白目でばたーん)
先生
「どうした、三河」
みのる
「ただの貧血でしょう」
先生
「座っていたのにか?」
みのる
「一昨日献血にいったそうですから」
先生
「……そうか」

帰り道にて

そして、放課後。とは言っても、まだ十二時だが。

夏和流
「うー……ただでさえ血が足りないときに、強烈な一撃…… ……痛いよぅ」
みのる
「自業自得だ。それで、家に来るのか?」
夏和流
「あ、うん、後でいくよ。まっててね。……ふふふふふ(笑)」
みのる
「……ろくな事じゃなさそうだな」
夏和流
「さあ、どうでしょう?  あ、猫だ」
(ぷいっと視線を逸らす)
夏和流
「しってる? 散歩中の猫って、他の猫にあったりしたら 視線を逸らすんだよ。『僕は敵対意志がありませんよー』っていうことの表示にね」
みのる
「知っている」
夏和流
「ちぇ。自慢しがいがないなぁ(笑) それじゃ、すぐ来る」

何やら楽しそうに去っていく夏和流をみつつ、家の門を開けるみのるであった。

そして、みのるの家で

ぴんぽーん。

夏和流
「おーっい、みのるー!」

がちゃり。

みのる
「遅かったな」
夏和流
「ちょっと、準備に手間取っちゃってね。入っていい?」
みのる
「ああ、上がれ。それにしても、大荷物だな」
夏和流
「へへへっ」
涼子
「いらっしゃい、夏和流くん」
夏和流
「こんちわ、涼子さん」
太郎
「よくきたのぉ、ふぉっふぉっふぉ」
夏和流
「こんちわ、お爺ちゃん」
涼子
「今、お茶を入れますね」
みのる
「ああ」
夏和流
「あ、ちょっと待った。みのる、ちょっとこの部屋の前で 待ってて」
みのる
「なんだ、一体?」
夏和流
「内緒(笑) 涼子さんにお爺ちゃん、手伝って下さいな」
みのる
「……別にいいがな」
三人
「ごそごそごそ……」
夏和流
「(ドア越しに)もういいよー」

がちゃ。

SE
「ぱーん」
みのる
「……?」
夏和流
「じゃんじゃじゃーん! なんと夏和流くんお手製の特製 ケーキだっ!」
みのる
「……よく訳が分からないぞ」
夏和流
「へへ(笑) 僕からのお礼だよ」
みのる
「礼?」
夏和流
「……今まで、一年間ありがとう(ぺこり)」
夏和流
「……なんちゃって(照)」
みのる
「……それで、礼か」
夏和流
「ん!」
みのる
「……ふん」
涼子
「はい、今日は取って置きの紅茶を入れました」
太郎
「飾り付けはわしじゃぞ(威張り)」
夏和流
「でも道具を使った、幻覚でしょ?(笑)」
太郎
「わしがやった、といったらやったんじゃ」
みのる
「……やれやれ……全く……」
夏和流
「では主役のみのる君、ご感想をどうぞ」
みのる
「……どあほう(微笑)」
夏和流
「……へへっ(笑)」
涼子
「さあ、それじゃあいただきましょう」
太郎
「みのる、こういう時は師匠をたてるものじゃろう」
夏和流
「だーめ。今日だけは我慢だよ」
太郎
「……老い先短い年寄りのささやかな楽しみが……」
夏和流
「また作りますって(笑) それじゃ……」
全員
「いただきます(パク)」
夏和流
「……う」
太郎
「……ぐ」
涼子
「……あ」
みのる
「……」
全員
「……まずい」

解説

ひさしぶりの、夏和流とみのるの漫才……ですか。話全体としてはしんみりしても良いはずなのですが、夏和流君がいるだけでこーゆー話になる、という気も……。



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